武尊からの電話のとおり、指定された場所へ行ってみると武尊は手足をガムテープで拘束されて大男（式尉）に担がれていた。

リーダーの般若の前十メートル手前まで歩いてそこで蒼紫は止まった。



「この間の奴等か・・武尊は無事なんだろうな？。」

「五万円は持って来たか？」

「まず武尊を解放しろ。ここに先月のバイト代の十万がある。どうしても金が欲しいというのであれば力づくで奪ってみろ。ただし・・・妹に手を出しせば・・・・・殺す。」

「いいだろう、お前の度胸に免じてこいつは返してやる。だが良いのか？強がりも相手を見て言った方がいいんじゃないのか。」


武尊は般若の合図で式尉から下ろされて火男や癋見にガムテープをはがされていた。


「俺は武尊を・・妹を・・守ると決めているんだ。兄さんがいない今、俺が家族を守らなければならないんだ。」

「蒼紫にい！」


拘束を解かれた武尊が蒼紫の元へと走っていく。


「大丈夫か？何か変な事はされなかったか？」

「大丈夫だったよ。ねぇ、蒼紫にい、もう帰ろう。」

「だめだ武尊。まだこいつらと決着がついていない。ここで武尊を連れてこいつらをまいてもいいんだがそれはフェアじゃない。」

「蒼紫にい・・。」

「いいか、もう少し離れて待ってろ。・・・そして俺が来るまで俺を見るな・・俺の修羅の姿はお前に見せたくない・・。」


わかったと武尊は少し離れた所で彼らから顔をそむけて待った。


少しの間にたくさんの不協和音が武尊の耳に入ったかと思えばすぐに静かになった。



「帰るぞ、武尊。」

「うん。」


武尊が振り向かないように蒼紫は武尊の肩に優しく手を置いて帰り道へ誘導した。









その場にあっという間にのされた四人。

火男と癋見は白目をむいて気絶していたが式尉と般若はかろうじて意識があった。


「何なんだあいつ・・。」

高校生のころ実は空手部だった般若はまさか四人もいる自分達が負けるとは思ってもいなかった。


「あいつは不良どころのワルじゃないな・・・あの眼・・裏の住人かもしれないぜ。」

「嗚呼・・俺もまさかあんな眼をする奴だとは思いもしなかった。久々に冷や汗をかいたぜ。それに・・・・。」


そう言って般若は腕で目をこすった。

家族を守るといった蒼紫の言葉が般若の心の隅に触れた所為だろうか、じわりと般若の目が熱くなった。自分の家族を思えばどこか蒼紫が羨ましく思えたのかもしれなかった。

式尉もそうだった。

オリンピック選手候補まで噂されながら結局その道から外れた途端に家族から疎遠になっていたのだった。

何年留年しようが金だけ積まれて家に戻って来るなと言わんばかりの家族に式尉も心が乾ききっていた。


「なあ般若・・。」

「嗚呼分かってるさ。」

「そうだな、それが俺達のいいところか？」

「火男も癋見もたぶんついてくるぜ。」

「いいじゃねぇか、俺達は【御庭番衆】だ。」

「違いない。」


くくく、、ははは、、と痛みで起き上がれないなりにも般若と式尉はこみ上げる笑いを止めることができなかった。