冷たい海水の中で蒼紫は生き返ったと思った。


波の動きに身をまかせながら約一分、海面を見上げるように水中をゆっくりと泳ぐ。


その後、海から上がると降りて来た崖を華麗に登ると、脱いだ服を掴み無言でコテージへと戻った。




蒼紫は部屋で海パンに着替えると静かすぎる周囲にある推測をし、四人の部屋を訪れた。


すると蒼紫の予想通り、四人はすっかり夢のなかだった。


蒼紫は大きくため息をつき張り紙をはがすと、


「起床！」


と、気合を入れると四人が瞬時に目を覚ました。


四人が声のする方をみれば赤鬼が仁王立ちで睨んでいた。


「いつまで寝ている！さっさと表へ出ろ！」



と、午後訓練と夜間トレーニング、そして翌日の午前を更に気合の入った合宿が行われたのであった。







翌日夜、蒼紫は家に帰って来た。

ただ無心で家まで帰って来たのに玄関を開けて男物の大きな靴を見たとたんにムッとした気持ちになった。

と、同時に蒼紫の大好きな明るい声がした。


「蒼紫にい、おかえりなさい！」


声と同時に武尊がひょっこり玄関へ顔を出す。

武尊の顔を見ただけでちょっとムッとした気持ちがスッと楽になる。


「嗚呼、ただいま・・。兄さん帰って来てるの？」

「うん、丁度さっき電話がかかってきて部屋へ戻ったけどまたすぐ降りてくると思うよ。だって今、今年の休みは何処に行こうかって話をしてたところだったから・・って、」


と、言ったところで武尊は蒼紫を見たまま目を丸くした。


「どうした？」


思わず固まった武尊の様子に蒼紫が聞くと、


「ううん、合宿が海だって事は知ってたけど蒼紫にいがこんなに焼けて帰って来るなんて思ってなかったからびっくりした。」

「ま・・まあな。」


蒼紫は少し端切れ悪く答えた。


「元からそんなに焼ける方ではないからな。数時間前までは真っ赤だったぐらいだ。」

「そうなの！？それって日焼けじゃなくて火傷ってことじゃん！ちゃんと日焼け止め塗らないからだよ！」


武尊は大変だ！と言いながら居間へバタバタと走って行った。


「おい！」


っと言いつついつもの武尊を見て蒼紫はほっこりしたのだった。




2018/7/29