天文学部。

それは果てしなく文系に近い響きを持つが蒼紫の所属する大学（大学院）のこのサークルはオリンピック強化選手も音を上げるほどの肉体トレーニングをやらされるが故に部員（兼部長）は蒼紫のみだった。



だが今年は蒼紫の男気にほれ込んだ（？）四人の押しかけ入部により賑やかな夏の合宿となった。


瀬戸内海の無人島を改造したプライベートビーチにコテージ。


どこをどう見てもリゾート仕様な施設だが蒼紫達の合宿はここで行われている。


とは言え現実はリゾートどころか鬼のようなしごきのメニュー。


午前中のしごきにすっかり疲れた四人の部員はお昼ご飯の後の僅かな休息に眠りの中にいた。



蒼紫はそんな四人の様子を覗きに四人専用の部屋を訪れるが、ふとサイドテーブルの上の一冊の雑誌が視界に入った。


こげ茶色に焼けた肌、ムキムキの筋肉、テカテカにの皮膚でポーズをとる男が表紙の雑誌。


間違いなく式尉のものであろうと推測する蒼紫であったがその表紙の文字に思わず目が留まる。



『モテる男の条件！女のハートは鷲掴み！』



（何っ！）



思わず心で突っ込みを入れパラりと雑誌をめくる蒼紫。


そしてその条件とやらを目に焼き付ける。



『モテル男の肌は黒いほど良い。男の野生を女に見せつけろ！』


そのキャッチコピーと同じページには編集部お勧めのサンオイルが何種類か写真で掲載してある。


その中の一つと同じものが雑誌の横に置いてある。


（これか・・いつも式尉がトレーニングの前に塗りまくってるのは・・）



蒼紫は爆睡している式尉を横目に己の腕を見た。


もともと日に焼けにくい白い肌の蒼紫だが今の今まで肌の色の事なんか気にしたことなど一度もなかった。


だがキャッチコピーが頭の中で甦ると思わず最愛の妹武尊の笑顔が浮かぶ。


（武尊もムキムキのテカテカが好きなんだろうか・・）


蒼紫の心にそんな不安が一度よぎるとその不安を消すことが出来ない。



「・・・。」



蒼紫は『午後は自主トレ』という紙を四人部屋の内側に張り付けるとキッチンへ向かった。