ガチャ。



ドアノブが周り、吊り下げている鳴子・・ではなくドアベルのシャラララと良い音が鳴ると奥の方から武尊の声がした。



「お帰りー！蒼紫にい！」



明るく元気な声に蒼紫は吸い寄せられるように声のする台所に向かった。


そしてテーブルの上に置いてあるある材料に目が留まった。


それは紛れもなくチョコレートとその他諸々の材料。


蒼紫は悪い予感が当たったと衝撃を受けた。



（一体どこのどいつだ・・よくも俺の可愛いい武尊をたぶらかした野郎は・・）



とつい怒りに顔を引きつらせていると、



「あれ？蒼紫にいチョコ嫌いだったっけ？」



と武尊の声。



「ほら、中学生の時蒼紫にいがチョコレートケーキを誕生日に作ってくれたでしょ。チョコレートの扱いは難しいから次に自分で作りたいなら『俺に聞け』って言ってくれたでしょ。だからケーキじゃないけど教えてもらおうと思って。」



くったくない明るい声で武尊は蒼紫に言った。



「だ・・誰に渡すんだ。」



我ながら声が震えているのではないかと思うぐらいに蒼紫の心の中は冷たい風が吹き荒れていた。



「ナ・イ・ショ！」



はにかみながらもサラリと武尊は可愛く答えると、さあ準備しなくっちゃと言いながらキッチン台へ向かった。



「・・・。」



蒼紫はテーブルの上のチョコレート群を見ながら、確かに昔そう言った記憶がある、兄として、男として約束に二言はないと心ここに在らず状態ではあったが何とか武尊の要望に応えたのだった。