「目隠しをしたままで俺が見ていたということが分かるのか。」

「フフフフ・・この【心眼】という文字は伊達じゃあないんでね。お前が俺を見ていることは先刻より承知だ。それより占う気がないのだったらそこをどいてくれないか、お前の後ろに客が待っているんだが。」


一がそう言われて後ろを振り向くと、いつの間にかキャプキャピした高校生が二人ほど一の背中から占い師を覗くように見ていた。


「それは邪魔をしたな。」

と立ち去る寸前に一はじろりと占い師を睨んだ。

占い師は一度だけ、やけに並びの良い歯をのぞかせてニヤリと笑った。


そして、高校生に向かって恐ろしく似つかわしくない猫なで声で声をかけた。


「はい、御嬢さん方お待たせしました。好きな男との相性でも聞きに来たのかな。」

「ヤダー！どうして分かるの～ぉ！さすが噂通りやわー。」



黄色い声が立ち去る一の耳に入って来た。

（五月蠅い・・。）

一はイラっとしながらパン屋へ向かおうとした時、目の前の店のディスプレイされている洋服がふと目に入った。

（武尊に似合うな、この服は。）

一瞬だが一はそう思った｡



小さな店舗が所狭しと並んでいる商店街において数歩も歩けば次の店に変わる。

一はすぐにパン屋を目指した。