「そうなの、私もそれを聞いた時びっくりしたけど蒼紫にいにとって良い事なのかなって。」





武尊は週末斎ノ森家の長男、一と電話をするのを楽しみにしている。



一も最愛の妹、武尊と週一回話すのを楽しみにしている。



普段は何か変わった事とかがあればメールを出している武尊。



今回は次男、蒼紫のたった独りの天文部に四人も入部したとメールで知らせていたのだ。



「そうか、で、今回は誘いはなかったのか？」



「うん・・・誘ってくれたら絶対真っ黒になるまで泳ぐのになぁ・・。」



一は電話口で大きな武尊のため息を聞いた。



今まで蒼紫は部長の権限で天文学部の行事に事あるごとに武尊を誘っていた。



先回の天体観測もしかり。



そして今年は新入部員が入ったということで顧問が思いつきで瀬戸内海の小島にある顧問のプライベートビーチ付別荘へ夏季合宿２泊３日へ行くことになったのだ。



武尊はその話を聞いた時若しかして自分も誘ってくれないかな～と、目で訴えたが残念ながらその期待は外れた。



「やっぱり部外者は無理だよね～。」



という武尊に一は急に、



「武尊、今生理か？」



と聞いた。



「うん、昨日から・・・ってなっ！・・何聞くの一にい！」



恥ずかしさのあまり慌てた武尊は携帯を握り直した時に電源オフを押したらしく、電話を切ってしまった。





「なるほどな。」



一は切れたスマホを手に呟いた。



最近温暖化で危険な鮫が瀬戸内海にも入り込んでくることもある。



武尊のことだ、生理だからといって多い日ではない限り、ビーチで大人しくしているような玉ではないという事は一も蒼紫も分かっていた。



「まっ・・そんなところだろうな。」



鮫の嗅覚は恐ろしく鋭い。



生理中の女子が襲われ死亡した例もあるという。



「まっ、俺としては武尊の水着姿を蒼紫に独り占めされずに済んだということだ。」



一は少し満足気な笑みで煙草を大きく吸った。