崩れるようにソファーへ倒れ込んだ斎藤を見て慌てたのは武尊の方だ。



とりあえず、斎藤の口からぽろりと床へ落ちた煙草を急いで拾い灰皿へ押し付けた。



そして斎藤が心配になり、



「斎藤さん！斎藤さん！」



と呼びかけるが職場とは思えないほど気の抜けた顔でスースー息をしている斎藤を見て



「寝ちゃった？こんなに劇的に？！」



信じられないとばかりの顔で斎藤を見て、ポケットから小瓶を取り出し



「疲労回復薬？強力睡眠薬の間違いじゃないの？」



と、中身の液体がチャプンチャプンするのを見入る。



（どうしよう・・・こんなに即効で寝ちゃうなんて・・・・体に合わなかったんだろうか？）



と、とても心配になる。



心配で斎藤の顔をじっと観察していたが、どうやら本当にすっかり寝てしまっただけとわかると少しほっとした。



「まったく・・・人騒がせな薬だ。起きたら絶対問い詰められて怒られそうだ。」



あ～あ、と言ってため息をつく武尊。



それにしても、なんでこの小瓶、ハートマークなんてついてるんだよ。



恵さんの趣味かな？



疲労回復薬なのにまったく意味わからん。



と思ってたら矢先、恵の『気持ちのいいことしてあげたら疲労回復の度合いが更によくなる｡』という言葉を思い出した。



（本当かなぁ。）



半信半疑ではあったが斎藤が少しでも元気になるならと、



武尊は斎藤を振り返って



「起きないよね・・・。大丈夫だよね・・。」



と言うと、斎藤の頭をなでなでした。



３、４回なでて、武尊は手を止めた。



「ちがう・・・、何かがちがう。斎藤さんはこんな事されても気持ちいいと思ってくれるとは思えない。」


と｡