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年越そばと煩悩(明治・東京)
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「斎藤さん、早く早く!」
「そんなに急くな、武尊。」
「そんなことないよ、だって今日は大晦日だよ-!」
藤田・・いや、斎藤密偵チームは年内の仕事を早々に終わらせ、おまけに警視庁舎の大掃除まで他部署を手伝ったというのに、日が沈むころ今度はパンチの署長さんの管轄で強盗事件が発生し、犯人捜索の手伝いに駆り出されたのであった。
斎藤は、やれやれ、と思ったのだが人の命に係わるとあっては行かない訳にいかない。
武尊と張を引き連れて出向き、早々と犯人を捕まえた。
という訳だが、除夜の鐘が鳴るまで後半刻あまりといったところ。
張は仕事が切りあがった段階ですぐに姿を消したので武尊は斎藤の手を引いて急いで走っているところだ。
目的の場所が見えた途端、武尊が
「あ~あ、やっぱりもう、閉まってる・・・・。」
と、落胆の息を漏らす。
そこはいつも斎藤と行っている蕎麦屋台。
灯りもなく静まり返っていた。
安くてうまくて主人の人もいい、武尊も斎藤もひいきにしている屋台だ。
斎藤はそんな武尊の肩をポンと叩き、ふっ、と笑う。
「心配するな武尊。」
と言うと、屋台の方へ歩み寄る。
「斎藤さん、年の瀬ですし、御主人帰ったみたいですよ。」
と、武尊が斎藤の後ろから声をかけながら斎藤について行く。
それにはお構いなく、斎藤は屋台の前に来ると
「おい、いるんだろう。」
と、声をかけると、
「へへっ、間に合いましたな、旦那。あっしはもうだめかと思いましたけど。」
と、言って寒さの中、半てんにくるまっていた屋台の主人が、おお寒いと言いながら提灯に火をつけた。
周りがポォっと明るくなる。
武尊が驚いて立ち止まっていると、斎藤が
「何を突っ立っているんだ、早く来い。」
と言って、椅子替わりの長板をポンっとたたく。
「あ、はい!」
と、言って武尊も斎藤の横に腰かける。
「御主人、待っててくれたんですか?」
と、武尊が聞くと、
「そりゃぁ、御ひいきにしてくれている御二方の顔を見ないで今年は終われませんよ、ねぇ、旦那。」
と、斎藤の方を向いてにやりとする。
斎藤はふっ、と笑い
「そうだな、俺もここで今年最後の蕎麦を食べなきゃ〆にならないしな。」
と、言うと屋台の主人が、
「そりゃ、どうも、来年もごひいきに・・・。」
と言って、ぐい呑みを出し、どこに準備してあったのか、熱燗を出し、斎藤になみなみ酒を注ぎ差し出した。
「おい、・・。」
と斎藤がまだ制服を脱いでいない・・・と言おうとすると、それを先読みするように、主人が
「いいじゃ、ありませんか、仕事は終わったんでしょ。ま、ささやかですが、今年いっぱい、無事過ごせたと言う事を皆で祝いましょうや。」
と言うと、
「仕方がないな、今夜だけだからな。」
と、相変わらず高飛車な物言いの斎藤。
だが、武尊が見る限り決して斎藤は不機嫌ではないのがうかがえる。
斎藤の横顔に見入っていると、蕎麦やの主人から
「ささ、武尊さんも。」
と、言われ、ええっ-!私も?!
と思って、焦っていると斎藤が、
「少しは大丈夫だろう?折角の御主人の気持ちだ、もらえ。」
と言うので、
「じゃぁ、少しだけ・・・・。」
と、出されたぐい呑みを手で持ち屋台の主人に差し出した。
「そうこなくっちゃ!」
と、トクトク・・、と注がれる。
「あ、ストップ!じゃなくて、もういいです!」
と言うが、時すでに遅し・・・。
なみなみと注がれた。
「ううっ・・・・。」
唸っている武尊を横目に蕎麦やの主人が、
「では、今年一年、皆様が御無事でいられたことと、この屋台をごひいきにしていただいた事に感謝いたしまして、乾杯!」
と、ぐい呑みを高く上げた。
武尊も、
「御主人のおいしい蕎麦と、今日待っててくれたことに感謝してかんぱーい!」
と、年越しの蕎麦を待っててくれたことに感謝をした。
斎藤は静かにぐい呑みを持ち上げて二人のぐい呑みと、カチッ、カチッと合わす。
「おいし・・・・。」
と、舐める程度にしか飲んでないものの、湯気を立てるぐい呑みを両手で囲うように持ちながら武尊は言った。
斎藤はそんな武尊を目を細めて見ていた。
「お待たせ、はいどうぞ。」
と、主人がかけ蕎麦二つを出した。
湯気がもうもうと立ち上がる中、箸で蕎麦をすする。
「暖まる~!」
武尊は顔をほころばせながら、ちらっと斎藤を見る。
(ふふふ・・・。)
斎藤さんと一緒に蕎麦。
今年最後の時間を一緒に過ごせる幸せ。
満面の笑みで蕎麦を食べていると屋台の主人が
「そんなに喜んでもらえるなんて待ったかいがありましたよ。」
と言った。
武尊は、ちょっと意味が違うかも、と思ったがこうやって幸せを感じられるのも、御主人が待っててくれたから。
だから、武尊も、主人に、うん、と微笑みを返した。
「そんなに急くな、武尊。」
「そんなことないよ、だって今日は大晦日だよ-!」
藤田・・いや、斎藤密偵チームは年内の仕事を早々に終わらせ、おまけに警視庁舎の大掃除まで他部署を手伝ったというのに、日が沈むころ今度はパンチの署長さんの管轄で強盗事件が発生し、犯人捜索の手伝いに駆り出されたのであった。
斎藤は、やれやれ、と思ったのだが人の命に係わるとあっては行かない訳にいかない。
武尊と張を引き連れて出向き、早々と犯人を捕まえた。
という訳だが、除夜の鐘が鳴るまで後半刻あまりといったところ。
張は仕事が切りあがった段階ですぐに姿を消したので武尊は斎藤の手を引いて急いで走っているところだ。
目的の場所が見えた途端、武尊が
「あ~あ、やっぱりもう、閉まってる・・・・。」
と、落胆の息を漏らす。
そこはいつも斎藤と行っている蕎麦屋台。
灯りもなく静まり返っていた。
安くてうまくて主人の人もいい、武尊も斎藤もひいきにしている屋台だ。
斎藤はそんな武尊の肩をポンと叩き、ふっ、と笑う。
「心配するな武尊。」
と言うと、屋台の方へ歩み寄る。
「斎藤さん、年の瀬ですし、御主人帰ったみたいですよ。」
と、武尊が斎藤の後ろから声をかけながら斎藤について行く。
それにはお構いなく、斎藤は屋台の前に来ると
「おい、いるんだろう。」
と、声をかけると、
「へへっ、間に合いましたな、旦那。あっしはもうだめかと思いましたけど。」
と、言って寒さの中、半てんにくるまっていた屋台の主人が、おお寒いと言いながら提灯に火をつけた。
周りがポォっと明るくなる。
武尊が驚いて立ち止まっていると、斎藤が
「何を突っ立っているんだ、早く来い。」
と言って、椅子替わりの長板をポンっとたたく。
「あ、はい!」
と、言って武尊も斎藤の横に腰かける。
「御主人、待っててくれたんですか?」
と、武尊が聞くと、
「そりゃぁ、御ひいきにしてくれている御二方の顔を見ないで今年は終われませんよ、ねぇ、旦那。」
と、斎藤の方を向いてにやりとする。
斎藤はふっ、と笑い
「そうだな、俺もここで今年最後の蕎麦を食べなきゃ〆にならないしな。」
と、言うと屋台の主人が、
「そりゃ、どうも、来年もごひいきに・・・。」
と言って、ぐい呑みを出し、どこに準備してあったのか、熱燗を出し、斎藤になみなみ酒を注ぎ差し出した。
「おい、・・。」
と斎藤がまだ制服を脱いでいない・・・と言おうとすると、それを先読みするように、主人が
「いいじゃ、ありませんか、仕事は終わったんでしょ。ま、ささやかですが、今年いっぱい、無事過ごせたと言う事を皆で祝いましょうや。」
と言うと、
「仕方がないな、今夜だけだからな。」
と、相変わらず高飛車な物言いの斎藤。
だが、武尊が見る限り決して斎藤は不機嫌ではないのがうかがえる。
斎藤の横顔に見入っていると、蕎麦やの主人から
「ささ、武尊さんも。」
と、言われ、ええっ-!私も?!
と思って、焦っていると斎藤が、
「少しは大丈夫だろう?折角の御主人の気持ちだ、もらえ。」
と言うので、
「じゃぁ、少しだけ・・・・。」
と、出されたぐい呑みを手で持ち屋台の主人に差し出した。
「そうこなくっちゃ!」
と、トクトク・・、と注がれる。
「あ、ストップ!じゃなくて、もういいです!」
と言うが、時すでに遅し・・・。
なみなみと注がれた。
「ううっ・・・・。」
唸っている武尊を横目に蕎麦やの主人が、
「では、今年一年、皆様が御無事でいられたことと、この屋台をごひいきにしていただいた事に感謝いたしまして、乾杯!」
と、ぐい呑みを高く上げた。
武尊も、
「御主人のおいしい蕎麦と、今日待っててくれたことに感謝してかんぱーい!」
と、年越しの蕎麦を待っててくれたことに感謝をした。
斎藤は静かにぐい呑みを持ち上げて二人のぐい呑みと、カチッ、カチッと合わす。
「おいし・・・・。」
と、舐める程度にしか飲んでないものの、湯気を立てるぐい呑みを両手で囲うように持ちながら武尊は言った。
斎藤はそんな武尊を目を細めて見ていた。
「お待たせ、はいどうぞ。」
と、主人がかけ蕎麦二つを出した。
湯気がもうもうと立ち上がる中、箸で蕎麦をすする。
「暖まる~!」
武尊は顔をほころばせながら、ちらっと斎藤を見る。
(ふふふ・・・。)
斎藤さんと一緒に蕎麦。
今年最後の時間を一緒に過ごせる幸せ。
満面の笑みで蕎麦を食べていると屋台の主人が
「そんなに喜んでもらえるなんて待ったかいがありましたよ。」
と言った。
武尊は、ちょっと意味が違うかも、と思ったがこうやって幸せを感じられるのも、御主人が待っててくれたから。
だから、武尊も、主人に、うん、と微笑みを返した。