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蕎麦の思い出・二十六夜待ち(明治・東京)
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そういえば蕎麦といえば前に・・
と、武尊はふと京都での出来事を思い出した。
私が新撰組で屋台蕎麦の手伝いをしてた時・・・・・
武尊が回想する。
あれは蕎麦屋に扮した山崎さんを手伝っている時のことだった。
「今日は二十六夜待ちだねぇ、蘭丸。」
「にじゅうろくやまち?」
「なんや、そんなことも知らへんのか。」
と、言われたことがある。
「『二十六夜待ち』ちゅうのはな、二十六日目に上る月をめでる日なんや。本来は月待講(つきまちこう)の一つで、この夜の月光のなかに阿弥陀様、観音様、勢至(せいし)様の三尊の姿が見えはるっちゅう有難い月が見れるちゅうことや。」
「ふ~ん。」
無知丸出しの蘭丸に山崎が憐れみの視線で見る。
「ホンマに知らへんのか。なんか、アホ通り越して気の毒になってきたわ。」
「すみません。」
「せやけどな、ここは京都やさかい。江戸と違ごうてそんな習慣があまりあらしまへんわ。ま、そうやないにしても最近は物騒やからな。夜は客が少ないね。」
「そうなんですか。・・あ、斎藤さん。」
「あ、斎藤の旦那、いらっしゃい。」
「いつもの頼む。」
「へい、まいど。」
「今日も巡察お疲れ様です。」
斎藤は蘭丸の緊張感のない顔を確認し、
「お前も異常なし、今夜も十六夜丸は出没しない・・と。」
斎藤にそう言われて蘭丸は少しふくれた。
「なんか含みのある言い方だな-。」
斎藤はフッと笑い
「月の出は遅いからまだまだだな。屋台はもうじき店じまいだろ。」
と言って蕎麦をすすった。
だんだん新月に近くなってくると月の出が遅くなる。
星灯りがすごいからあんまり気にしなかったけど今日はまだお月様は出てないな、と蘭丸は空を見上げた。
斎藤は食べ終わるとすぐ巡察に戻っていった。
蘭丸も手伝いが終わりこの日も屯所に帰る。
すでに就寝している隊士もいるため、そーっと歩く。
平隊士部屋の方からは、すごいイビキとかが聞こえて
(毎度のことながら賑やかそう・・・。)
と思いつつも、幹部・組長の部屋の方に来るとものすごく、なんかこう静かすぎてピリピリした空気で足音がたつのにものすごく気をつかう。
たまには副長のとことか、灯りがついているのだけれども、今日は全室消灯だ。
抜き足、差し足で帰ってくるけれども、部屋の障子を開ける音さえもものすごく響く気がする。
部屋に入る前に武尊は振り返る空を見上げる。
でもまだ月はない。
そーっと布団に入る。隣は沖田さんだけど、
(・・・・・寝てるよね。起こしてないよね。)
一応組長だから気を使う。
そしてそのまま意識を落とした。
いつもは爆睡で朝もなかなか起きれない武尊だがこの日は斎藤が夜の巡察から帰ってきた気配で目が覚めた。
目はつむったまま耳だけが感覚器として機能する。
刀をおろす音。
羽織を脱ぐ音。
寝間着に着替えている布の擦れる音。
同じ姿勢でいるのがつらくて少し動いた。
たったそれだけの布団の音で斎藤が気が付く。
「起きているのか?」
「いえ、斎藤さんが帰って来た気配で起きただけです。」
っと、小声で言う。
斎藤は床に入りながら
「今日は雲が出てきて月は見えなかった。いつか見に行くか?」
と言った。
「うん・・・。行きたい・・・。」
っと返事をしたら、額に軽い口づけを落とされた。
「!!」
斎藤は
「寝るぞ。」
と一言いうと床についた。