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涼をもとめて (明治・京都山の中)
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比古は武尊が蒼紫と二人きりになっても心配しない。
”万が一手を出したらどうなるか分かっているんだろうな。”という事は言わずもがな、目で伝えてある。
蒼紫もその辺は了承済みだ。
今の自分は武尊を見守るだけでいい。
と思っている。
以前も東京でそう思ったこともあったが、その時は武尊が幸せなら、と自分に無理に言い聞かせていたが今は自分でも納得しているのだ。
武尊がどれだけ幸せなのか見るだけで分かる。
武尊との夫婦関係に自ら幕を下ろした蒼紫だったが今はそれでよかったのだと自分出した答えを信じることが出来る・・
と思っていると”下”に着いた。
広い河原。
湧き水の出る場所が河原を降りたすぐ、少し崖になっている木の根元の近くにある。
その近くに簡易かまどみたいなものがあり、河原から水面に移る流れのあるいい場所には木で櫓が・・というか、川床が設置されていた。
これには蒼紫も驚いた。
「そこ、川の支流が流れ込んでて小さな川になってるから丁度いいって、先月比古さんが作ってくれたの。貴船みたいでしょ?」
と川床を見ている蒼紫に武尊が言った。
貴船を知っているのか?と思ったがそれは追及しないことにして、蒼紫は近くまで行ってみた。
広さは畳三畳分。だが小上がりには申し分ない。
丁度青紅葉が上にかかり、日も遮られる上に川の涼しさが風とともに感じられる。
「いい場所だ。」
「ね。」
武尊が嬉しそうに答えた。
そして、
「じゃぁ、梅素麺にしよう!蒼紫は焼きナスお願い!」
と、武尊は背負子の籠から小さい七輪を出して蒼紫に渡した。
中には炭もちゃんと入っている。
武尊はかまどに火をつけお釜でお湯を沸かす作業担当だ。
蒼紫はひとつ、武尊にアドバイスをした。
「折角だ。素麺をゆでる時に梅干しを一つ入れてみろ。」
「え?梅干しは最後に乗っけるんじゃないの?」
「黒尉が言っていた。麺にコシがでる。」
「へぇー、やってみる。」
半信半疑の武尊だったが言われた通りやってみる。
お湯が沸いたら梅干しをそのままひとつドボンとお湯にいれ、素麺をパラパラと入れる。茹で上がったら湧き水で洗って締める。
使った梅干しは他の梅干しと叩いておく。
比古が作った深さのある平皿に素麺を盛り、その上に皮を剥いて切った焼きナスと鱧と叩いた梅干しを乗せてつゆをかける・・・・
というところで比古がやって来た。
「丁度いい所に!」
「だろ?」
とニヤリの比古。
「じゃあ比古さん一つお皿持って。はいお箸。蒼紫も自分の持ってね、はいお箸。」
武尊が蒼紫に箸を渡すと比古は武尊の素麺皿も持った。
「武尊のも持っていくからな。茶を頼む。」
「わかった。二人で先座ってて。すぐ行くから。」
と、武尊はお湯を沸かした時に作っておいたクマザサ茶を用意した。
「では、頂きます!ん~、三輪そうめんってもともとコシがあるけど今日のコシはすごい!」
比古も鱧・焼きナス入りの梅干し素麺を『上手いな』とご満悦。
比古にとっても武尊にとっても蒼紫にとっても、今日という日はそれぞれに人生の中で良い一日の一つとして心に刻まれた。
それはある暑い夏の日の出来事。
2024.08.04
”万が一手を出したらどうなるか分かっているんだろうな。”という事は言わずもがな、目で伝えてある。
蒼紫もその辺は了承済みだ。
今の自分は武尊を見守るだけでいい。
と思っている。
以前も東京でそう思ったこともあったが、その時は武尊が幸せなら、と自分に無理に言い聞かせていたが今は自分でも納得しているのだ。
武尊がどれだけ幸せなのか見るだけで分かる。
武尊との夫婦関係に自ら幕を下ろした蒼紫だったが今はそれでよかったのだと自分出した答えを信じることが出来る・・
と思っていると”下”に着いた。
広い河原。
湧き水の出る場所が河原を降りたすぐ、少し崖になっている木の根元の近くにある。
その近くに簡易かまどみたいなものがあり、河原から水面に移る流れのあるいい場所には木で櫓が・・というか、川床が設置されていた。
これには蒼紫も驚いた。
「そこ、川の支流が流れ込んでて小さな川になってるから丁度いいって、先月比古さんが作ってくれたの。貴船みたいでしょ?」
と川床を見ている蒼紫に武尊が言った。
貴船を知っているのか?と思ったがそれは追及しないことにして、蒼紫は近くまで行ってみた。
広さは畳三畳分。だが小上がりには申し分ない。
丁度青紅葉が上にかかり、日も遮られる上に川の涼しさが風とともに感じられる。
「いい場所だ。」
「ね。」
武尊が嬉しそうに答えた。
そして、
「じゃぁ、梅素麺にしよう!蒼紫は焼きナスお願い!」
と、武尊は背負子の籠から小さい七輪を出して蒼紫に渡した。
中には炭もちゃんと入っている。
武尊はかまどに火をつけお釜でお湯を沸かす作業担当だ。
蒼紫はひとつ、武尊にアドバイスをした。
「折角だ。素麺をゆでる時に梅干しを一つ入れてみろ。」
「え?梅干しは最後に乗っけるんじゃないの?」
「黒尉が言っていた。麺にコシがでる。」
「へぇー、やってみる。」
半信半疑の武尊だったが言われた通りやってみる。
お湯が沸いたら梅干しをそのままひとつドボンとお湯にいれ、素麺をパラパラと入れる。茹で上がったら湧き水で洗って締める。
使った梅干しは他の梅干しと叩いておく。
比古が作った深さのある平皿に素麺を盛り、その上に皮を剥いて切った焼きナスと鱧と叩いた梅干しを乗せてつゆをかける・・・・
というところで比古がやって来た。
「丁度いい所に!」
「だろ?」
とニヤリの比古。
「じゃあ比古さん一つお皿持って。はいお箸。蒼紫も自分の持ってね、はいお箸。」
武尊が蒼紫に箸を渡すと比古は武尊の素麺皿も持った。
「武尊のも持っていくからな。茶を頼む。」
「わかった。二人で先座ってて。すぐ行くから。」
と、武尊はお湯を沸かした時に作っておいたクマザサ茶を用意した。
「では、頂きます!ん~、三輪そうめんってもともとコシがあるけど今日のコシはすごい!」
比古も鱧・焼きナス入りの梅干し素麺を『上手いな』とご満悦。
比古にとっても武尊にとっても蒼紫にとっても、今日という日はそれぞれに人生の中で良い一日の一つとして心に刻まれた。
それはある暑い夏の日の出来事。
2024.08.04
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