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Web拍手、斎藤編
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「で?」
乾いた空気のような短い返事が返ってくる。
『で』とたった一語で何を悟れと言うのだろう。
振り返った彼の表情は射す夕日に照らされて読み辛い。
『久しぶりだな。』、とか『よく来たな。』、とか、会えて嬉しかったみたいな意味の言葉だったらもう少しは再会の感激もあっただろうに。
武尊は胸がチクチク痛む感じがして【来なければよかった】と後悔の念にかられた。
「時尾さんに『今年は帰って来れない』って手紙書いたんでしょ?だから私呼び出されて手紙とこれを預かったの、はい。」
武尊は平常心を装って預かった手紙と風呂敷包みを斎藤に差し出した。
斎藤は煙草を口に咥え片手で手紙を受け取ると同時にもう片方の手で風呂敷包みを机の上に置くように手で指示した。
「もう。」
武尊は少しぶっきらぼうに答えて風呂敷包みを置き、机にもたれ腕組みをしながら斎藤を見つめた。
斎藤は愛妻時尾の手紙から目を離さずに、
「正月だからといって警官全部が休むわけにいかないのは武尊も重々承知だろうが。日頃から厳しい任務にに就いてるんだ、正月ぐらい休ませてやろうと思っただけだ。俺が残ればそれで済む。」
と言った。
「まあ・・誰かが残らないといけないっていうのは分かるけど。」
斎藤の言ってることも分からないではないと武尊はしぶしぶそう言った。
「じゃあ・・ちゃんと渡すものは渡したから・・私帰るね。」
京都から開拓使、北海道まではるばる遠い道のりを一体何だと思っているのか。
ねぎらいの言葉一つでもかけてくれるだろうかと少しは期待した自分が馬鹿だったとため息吐いて帰ろうとした時だった。
「誰が帰っていいと言った。武尊にはまだ役目が残っているだろうが。」
「役目?」
一体何の役目だろうと皆目見当もつかないまま振り返ると斎藤が文面が見える様にひらひらと手紙を見せた。
「何?」
「フ・・時尾からの三行半(みくだりはん)だ。」
「なっ・・三行半のわけないじゃない!そもそもそんなにギッシリ書いてあるのに!」
武尊は一メートルほどの紙にギッシり詰まった文字を見て斎藤のふざけた言葉に立腹した。
そもそも【三行半】とはつまり離縁状。
そしてそれは男から女に出すものと決まっている。
なのにそれを女の、しかも出来過ぎた完璧妻の時尾が出すはずがないと素っ頓狂な裏声が出るほど武尊は声を荒げたのだ。
「時尾さんがそんなもの書くわけがない!」
時尾という女が職務優先で全く家に帰ってこない夫でも愚痴一つ言わない本当によく出来たスーパーワイフなのを武尊はよく知っている。
「嘘でも冗談でもないぞ、よく見ろ。ここにな・・『守るべき人を守ろうともしないような不甲斐ない夫を持った覚えはありません、武尊さんは既に山口家の家族です。まさかこの手紙をお読み頂いた後そのままお帰しするわけではありませんよね。万が一にでもそのような事であれば・・』」
「見せて!」
武尊は手紙の内容が信じられなくて音読中の手紙を斎藤から奪い取るようにひったくり何度も文字を目でなぞる。
斎藤が言ったのが嘘ではないことが分かり開いた口が塞がらないのが自分でも分かった。
「・・つまり私が帰ると離婚するってこと!?」
「そういう事に成るかな。」
何という手紙!
武尊は驚きの顔のまま固まった。
だが斎藤当人の顔は武尊の意に反して余裕しゃくしゃくだった。
「フッ。」
斎藤は笑みを漏らすと短くなった煙草を灰皿に押し付け、武尊の横の風呂敷包を取ると同時に空いた方の手で武尊の髪をぐしゃぐしゃとかきわけた。
「わ!何するんですか!」
「いつまでも呆けた顔をしているからだ。行くぞ。」
「行くぞって・・どこに!」
わしゃわしゃと頭上で髪をもて遊ぶ斎藤の手を腕で押さえながら武尊は叫んだ。
「俺の家だが・・と言っても借家だがな。お前が今日から泊まる所だ。」
「・・っ!私まだ行くって・・」
武尊は『行くといっていない』と言おうとしたがそれよりも早く髪をいじっていた斎藤の手が武尊の手の抑えを何ともせずに武尊の顎を鷲掴みにして上へ向けさせた。
「任務御苦労。」
斎藤はそう短く言うと武尊の口を己の唇で塞いだ。
乾いた空気のような短い返事が返ってくる。
『で』とたった一語で何を悟れと言うのだろう。
振り返った彼の表情は射す夕日に照らされて読み辛い。
『久しぶりだな。』、とか『よく来たな。』、とか、会えて嬉しかったみたいな意味の言葉だったらもう少しは再会の感激もあっただろうに。
武尊は胸がチクチク痛む感じがして【来なければよかった】と後悔の念にかられた。
「時尾さんに『今年は帰って来れない』って手紙書いたんでしょ?だから私呼び出されて手紙とこれを預かったの、はい。」
武尊は平常心を装って預かった手紙と風呂敷包みを斎藤に差し出した。
斎藤は煙草を口に咥え片手で手紙を受け取ると同時にもう片方の手で風呂敷包みを机の上に置くように手で指示した。
「もう。」
武尊は少しぶっきらぼうに答えて風呂敷包みを置き、机にもたれ腕組みをしながら斎藤を見つめた。
斎藤は愛妻時尾の手紙から目を離さずに、
「正月だからといって警官全部が休むわけにいかないのは武尊も重々承知だろうが。日頃から厳しい任務にに就いてるんだ、正月ぐらい休ませてやろうと思っただけだ。俺が残ればそれで済む。」
と言った。
「まあ・・誰かが残らないといけないっていうのは分かるけど。」
斎藤の言ってることも分からないではないと武尊はしぶしぶそう言った。
「じゃあ・・ちゃんと渡すものは渡したから・・私帰るね。」
京都から開拓使、北海道まではるばる遠い道のりを一体何だと思っているのか。
ねぎらいの言葉一つでもかけてくれるだろうかと少しは期待した自分が馬鹿だったとため息吐いて帰ろうとした時だった。
「誰が帰っていいと言った。武尊にはまだ役目が残っているだろうが。」
「役目?」
一体何の役目だろうと皆目見当もつかないまま振り返ると斎藤が文面が見える様にひらひらと手紙を見せた。
「何?」
「フ・・時尾からの三行半(みくだりはん)だ。」
「なっ・・三行半のわけないじゃない!そもそもそんなにギッシリ書いてあるのに!」
武尊は一メートルほどの紙にギッシり詰まった文字を見て斎藤のふざけた言葉に立腹した。
そもそも【三行半】とはつまり離縁状。
そしてそれは男から女に出すものと決まっている。
なのにそれを女の、しかも出来過ぎた完璧妻の時尾が出すはずがないと素っ頓狂な裏声が出るほど武尊は声を荒げたのだ。
「時尾さんがそんなもの書くわけがない!」
時尾という女が職務優先で全く家に帰ってこない夫でも愚痴一つ言わない本当によく出来たスーパーワイフなのを武尊はよく知っている。
「嘘でも冗談でもないぞ、よく見ろ。ここにな・・『守るべき人を守ろうともしないような不甲斐ない夫を持った覚えはありません、武尊さんは既に山口家の家族です。まさかこの手紙をお読み頂いた後そのままお帰しするわけではありませんよね。万が一にでもそのような事であれば・・』」
「見せて!」
武尊は手紙の内容が信じられなくて音読中の手紙を斎藤から奪い取るようにひったくり何度も文字を目でなぞる。
斎藤が言ったのが嘘ではないことが分かり開いた口が塞がらないのが自分でも分かった。
「・・つまり私が帰ると離婚するってこと!?」
「そういう事に成るかな。」
何という手紙!
武尊は驚きの顔のまま固まった。
だが斎藤当人の顔は武尊の意に反して余裕しゃくしゃくだった。
「フッ。」
斎藤は笑みを漏らすと短くなった煙草を灰皿に押し付け、武尊の横の風呂敷包を取ると同時に空いた方の手で武尊の髪をぐしゃぐしゃとかきわけた。
「わ!何するんですか!」
「いつまでも呆けた顔をしているからだ。行くぞ。」
「行くぞって・・どこに!」
わしゃわしゃと頭上で髪をもて遊ぶ斎藤の手を腕で押さえながら武尊は叫んだ。
「俺の家だが・・と言っても借家だがな。お前が今日から泊まる所だ。」
「・・っ!私まだ行くって・・」
武尊は『行くといっていない』と言おうとしたがそれよりも早く髪をいじっていた斎藤の手が武尊の手の抑えを何ともせずに武尊の顎を鷲掴みにして上へ向けさせた。
「任務御苦労。」
斎藤はそう短く言うと武尊の口を己の唇で塞いだ。