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恵方巻の巻(明治・葵屋)
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(あれが蒼紫様・・か・・。)
あの後、翁と蒼紫は勝手場を去り武尊は白や黒の手伝いで忙しくしていた。
けれども今はこうして酢飯用の御飯を炊いている間、錦絵のごとく美しい蒼紫の事を思い出してしまう。
新参者の武尊が蒼紫に会ったのは今日を含めてたったの三回。
奉公が決まった日に葵屋に来て翁と一緒に葵屋を案内してもらった時。
後日お茶を出しに行った時。
そして今日だ。
見目麗しい反面無口感情のない物言い。
聞けば日課は寺へ行って座禅をすることだとか。
(お店の雰囲気からすれば御頭というよりも若頭っていう感じなんだけど、もしかしてもうじき出家される・・とか?)
あんなに綺麗な人なのに、と武尊は不思議に思ったが、
(人は見かけで判断しちゃいけないってオトンが口癖のように言ってたっけ。)
と思い直して竹筒をフーフー吹いた。
「武尊ちゃん!ちょっとこっち手伝って!」
「はーい!」
そんなかんだで忙しくした後、ようやく酢飯と具材が用意できた。
どれも美味しそうな(いや、間違いなく美味しい)具材だ。
白はくるりんと巻きずしを作り見事な切り口で切り分けると黒と武尊に試食させた。
「どうだい、これで完璧だろ!」
白は自慢そうに言った。
「さすが白だな!」
「美味しいです!・・・あっ!」
武尊が小さく叫んだのはいつのまにか現れた翁がまな板の上の太巻きの一つをひょいと摘まんでぱくりと口に入れたからだった。
「翁さん、いつのまに!」
と驚く武尊の横で翁はもぐもぐと口を動かしゴクンとのみ込んだ。
「うむ、美味い!」
と一瞬ニコリとしたものの、
「これでは普通の太巻きと変わらんのぅ。」
と漏らした。
「そ、そうですよね。」
「確かに・・変わりませんね。」
と皆がうーむと腕を組んで考え込んだ。
しかし時刻はもう夕餉の仕度をする時間。
恵方巻研究は今日の所はこれで打ち切りになった。
夜、一人、最後の最後まで勝手場の後かたずけをしていた武尊がようやく部屋へ戻ろうと出入り口を振り返った時・・
武尊はドキッとした。
気配も物音もなく、自分一人だと思っていたこの勝手場に蒼紫が立っていたからだ。
「あのぅ・・蒼紫様?お茶でもお入り用ですか?」
蒼紫は武尊の問いかけに答えず、
「・・もし恵方巻についてもっと知りたければ海苔を持って・・・こっそり俺の部屋へ来い。」
と告げ勝手場から出て行った。
意外な事過ぎて数秒経って、
「はい・・・。」
と武尊は答えてから首を傾げたのだった。
あの後、翁と蒼紫は勝手場を去り武尊は白や黒の手伝いで忙しくしていた。
けれども今はこうして酢飯用の御飯を炊いている間、錦絵のごとく美しい蒼紫の事を思い出してしまう。
新参者の武尊が蒼紫に会ったのは今日を含めてたったの三回。
奉公が決まった日に葵屋に来て翁と一緒に葵屋を案内してもらった時。
後日お茶を出しに行った時。
そして今日だ。
見目麗しい反面無口感情のない物言い。
聞けば日課は寺へ行って座禅をすることだとか。
(お店の雰囲気からすれば御頭というよりも若頭っていう感じなんだけど、もしかしてもうじき出家される・・とか?)
あんなに綺麗な人なのに、と武尊は不思議に思ったが、
(人は見かけで判断しちゃいけないってオトンが口癖のように言ってたっけ。)
と思い直して竹筒をフーフー吹いた。
「武尊ちゃん!ちょっとこっち手伝って!」
「はーい!」
そんなかんだで忙しくした後、ようやく酢飯と具材が用意できた。
どれも美味しそうな(いや、間違いなく美味しい)具材だ。
白はくるりんと巻きずしを作り見事な切り口で切り分けると黒と武尊に試食させた。
「どうだい、これで完璧だろ!」
白は自慢そうに言った。
「さすが白だな!」
「美味しいです!・・・あっ!」
武尊が小さく叫んだのはいつのまにか現れた翁がまな板の上の太巻きの一つをひょいと摘まんでぱくりと口に入れたからだった。
「翁さん、いつのまに!」
と驚く武尊の横で翁はもぐもぐと口を動かしゴクンとのみ込んだ。
「うむ、美味い!」
と一瞬ニコリとしたものの、
「これでは普通の太巻きと変わらんのぅ。」
と漏らした。
「そ、そうですよね。」
「確かに・・変わりませんね。」
と皆がうーむと腕を組んで考え込んだ。
しかし時刻はもう夕餉の仕度をする時間。
恵方巻研究は今日の所はこれで打ち切りになった。
夜、一人、最後の最後まで勝手場の後かたずけをしていた武尊がようやく部屋へ戻ろうと出入り口を振り返った時・・
武尊はドキッとした。
気配も物音もなく、自分一人だと思っていたこの勝手場に蒼紫が立っていたからだ。
「あのぅ・・蒼紫様?お茶でもお入り用ですか?」
蒼紫は武尊の問いかけに答えず、
「・・もし恵方巻についてもっと知りたければ海苔を持って・・・こっそり俺の部屋へ来い。」
と告げ勝手場から出て行った。
意外な事過ぎて数秒経って、
「はい・・・。」
と武尊は答えてから首を傾げたのだった。