はっと蒼紫が目を開けた時、見えたものはいつもを変わらぬ己の自室。


夜が明けようと白み始めた頃だった。


蒼紫は深いため息を吐くと、悲しいまでに立ち上がった息子に対しガクッと首を垂れた。







（新年早々このような夢を見るとは・・。）






蒼紫は欲望そのままの夢に落胆しながら井戸へ行き、己の未熟さに叱咤しながら水をかぶった。



その後身なりを整えた後、足が自動的に向かったのは勝手場だった。



武尊は昨年葵屋が新しく雇った初めての御庭番衆でない従業員だ。



奉公に出るには歳を取り過ぎていたが二十歳前後の彼女はハキハキとした素直な女性で初めて武尊を見た時から蒼紫は気になっていたのである。



その理由は分からない、けれども初めて覚える胸の内の引っかかりに気がつけば蒼紫はいつも武尊の事が脳裏に浮かぶのだった。





勝手場からは湯気が上がっている。



年末の宿泊客の為に未明から勝手場では白や黒、お増やお近が忙しくしていた。



蒼紫がその中で視線を一周させるた。



（居た・・武尊だ。）




蒼紫は武尊の背後に立って武尊の仕事ぶりを間近で見ていた。



すると武尊が後ろを急に振り返った。



「わっ！」



武尊は驚いて蒼紫を見上げた。



「すみません、蒼紫様。私全然気がつきませんでした！」


「いや・・かまわん。俺の方こそ悪かったな。何をしている。」


「はい、これはまかないの御御御付けです。」



と武尊は握っていた茄子を蒼紫に差し出して見せた。



「・・・。（武尊のアソコへ埋めて辱めるには丁度よい大きさだ・・）」



誇大な妄想を見出し茄子を見つめる蒼紫に武尊は、



「蒼紫様は茄子の御御御付けがお好きなのですか？朝餉が出来ましたらすぐにお部屋にお持ちいたします。しばしお待ち下さいね。」



と蒼紫に対し少しはにかんだ笑顔を見せた。




ズキューン！！




そう音がしたかどうかは分からないが蒼紫は確かに胸を撃ち抜かれたような衝撃を受け、




「嗚呼・・。」



と言うと平静を装って部屋へ戻っていった。