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おみくじ(明治・東京)
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風呂が沸き、斎藤が先に入った後に武尊も入らせてもらった。
斎藤に先程言われた事が頭の中で何度も繰り返されたと同時に何も出来ない自分の無力さが悔しかった。
それでも武尊の興奮した神経はすぐに温くなる冬のお風呂と共に入っているうちに緩んできた。
「今日は疲れた・・だってあんなに歩いた事なかったもの。また後で考えよう。だって斎藤さんはまだ私を釈放しないみたいだし機会はきっとあるはず・・。」
そう思うと武尊は少しだけ気持ちが穏やかになった。
眠くなっただけかもしれなかったが先程よりはましだった。
武尊が戻ると斎藤は浴衣に半纏を羽織って相も変わらず煙草を部屋で煙草をふかしていた。
「・・お休みにならないんですか。」
武尊は確か斎藤も自分と同じ分だけ徹夜で歩いたはずだと半分驚き半分呆れの気持ちで斎藤に聞いた。
斎藤はその問いに答えず、
「武尊、あの神社のおみくじ、当たるんだったよな。」
と、全然別の事を聞いてきた。
武尊は思わず、
「え、ええ・・そう父は言ってました。それにお参りしている間にも周りの人はそう言ってましたし・・当たるんじゃないですか?」
と目をぱちくりさせて答えた。
斎藤が自分の名前を呼ぶのは一日一回あるかないかで大抵はお前と言われるからだ。
「何と書いてあった、もう一回言ってみろ。」
上司にそう言われてもう眠いのに・・と思いつつも仕方なく制服のポケットをごそごそやっておみくじを取り出し武尊は斎藤の横に立った。
座れと言われ、武尊は正座をして斎藤におみくじを差し出した。
「ほら、願い事は叶う、金運よし、病気せずって書いてあります。」
と武尊が言うと、
「待ち人来る、縁談は良縁ありでお産もよしだな。」
と斎藤は下の所まで読んで口に出した。
「だからそんな人いませんし、だからお産も関係ありません!」
「好きな男はいないのか。」
「いませんっ!」
いきなり何の話を言い出すのかと武尊はこのにわか上司に血圧を上げた。
(そりゃお父ちゃんからもお前はいい歳してるから早く嫁に行けって言われてたけど・・。)
と懐かしい父親の顔を思い浮かべながら武尊は思って見たけれど実際はそんな縁談なんか貧乏な団子屋の娘にはなかった。
「では俺にしておけ。」
と武尊はそんな空耳が聞こえたような気がした。
武尊は斎藤の顔を見て二、三秒固まり我に返った。
「ななななな・・何言ってるんですか!」
いきなり上司に訳が分からない事を言われたと武尊はシドロモドロになった。
「俺では何か不服なのか。」
「いえ、不服とかそんな問題じゃなくて!」
「では決まりだな。」
「なんでそうなるんですか!」
不服以前にその思考回路が意味不明だと武尊は混乱した。
いつも冷たい目で見るし、人使いは荒いし、何よりお前呼ばわりのこんな男に突然そんな事を言われても受け入れられる訳がないじゃないと武尊は目を大きくして斎藤を凝視した。
すると斎藤は、
「ま、無理もないか。だが神社で見たお前の笑顔・・・俺はそれを守りたいと思っただけだ。」
と言った。
「え・・?」
思いもよらぬ斎藤の言葉が武尊の心の隙間にふっと入り込んだ。
「もっともこんな気持ちになったのは今朝の事だがな。俺は目つきも悪いし女の扱いに慣れているわけではない。お前が思っているように優しくは出来んかもしれん。だが惚れた相手をみすみす返り討ちにさせたくはない。」
「斎藤さん・・。」
武尊は思わず背筋を正して斎藤を見た。
相変わらず鋭い目。
でもよくよく見て見たら瞳には優しさがあった。
(私は斎藤さんの何を見て来たのだろう。)
厳しく叱られたこともあったが思い返せば彼の言う事はいつも正論だった。
武尊の斎藤に対する気持ちの変化が武尊の目を見ていた斎藤には分かった。
「・・惚れてしまったんだから仕方がないだろう。」
斎藤は隣にいる武尊の肩を抱いて引き寄せた。
「!」
やめてください!と言おうとして武尊は両手で斎藤を押し返そうとした武尊だったが斎藤は引き寄せただけでそれ以上動きはない。
それを不審に思った武尊が斎藤をそっと見上げてみると斎藤は余所を向き煙草を静かにふかしていた。
じっとしていると浴衣越しに斎藤の手の暖かさがじんと伝わってくる。
父親ではない人の人肌をこんなに近くで感じたことのない武尊の心の臓がトクンと鳴った。
と同時にクシュンと武尊はくしゃみをした。
斎藤は一瞬目を大きくし、武尊をそっと自分から離した。
「今日は疲れただろう、風邪を引く前に早く寝ろ。」
「あ・・はい。」
湯冷めしたのか急に寒気を感じてぶるっと身体を震わせた武尊は展開の速さに戸惑いながら立ち上がった。
そして斎藤に一礼すると逃げるようにその部屋を出た。
斎藤に先程言われた事が頭の中で何度も繰り返されたと同時に何も出来ない自分の無力さが悔しかった。
それでも武尊の興奮した神経はすぐに温くなる冬のお風呂と共に入っているうちに緩んできた。
「今日は疲れた・・だってあんなに歩いた事なかったもの。また後で考えよう。だって斎藤さんはまだ私を釈放しないみたいだし機会はきっとあるはず・・。」
そう思うと武尊は少しだけ気持ちが穏やかになった。
眠くなっただけかもしれなかったが先程よりはましだった。
武尊が戻ると斎藤は浴衣に半纏を羽織って相も変わらず煙草を部屋で煙草をふかしていた。
「・・お休みにならないんですか。」
武尊は確か斎藤も自分と同じ分だけ徹夜で歩いたはずだと半分驚き半分呆れの気持ちで斎藤に聞いた。
斎藤はその問いに答えず、
「武尊、あの神社のおみくじ、当たるんだったよな。」
と、全然別の事を聞いてきた。
武尊は思わず、
「え、ええ・・そう父は言ってました。それにお参りしている間にも周りの人はそう言ってましたし・・当たるんじゃないですか?」
と目をぱちくりさせて答えた。
斎藤が自分の名前を呼ぶのは一日一回あるかないかで大抵はお前と言われるからだ。
「何と書いてあった、もう一回言ってみろ。」
上司にそう言われてもう眠いのに・・と思いつつも仕方なく制服のポケットをごそごそやっておみくじを取り出し武尊は斎藤の横に立った。
座れと言われ、武尊は正座をして斎藤におみくじを差し出した。
「ほら、願い事は叶う、金運よし、病気せずって書いてあります。」
と武尊が言うと、
「待ち人来る、縁談は良縁ありでお産もよしだな。」
と斎藤は下の所まで読んで口に出した。
「だからそんな人いませんし、だからお産も関係ありません!」
「好きな男はいないのか。」
「いませんっ!」
いきなり何の話を言い出すのかと武尊はこのにわか上司に血圧を上げた。
(そりゃお父ちゃんからもお前はいい歳してるから早く嫁に行けって言われてたけど・・。)
と懐かしい父親の顔を思い浮かべながら武尊は思って見たけれど実際はそんな縁談なんか貧乏な団子屋の娘にはなかった。
「では俺にしておけ。」
と武尊はそんな空耳が聞こえたような気がした。
武尊は斎藤の顔を見て二、三秒固まり我に返った。
「ななななな・・何言ってるんですか!」
いきなり上司に訳が分からない事を言われたと武尊はシドロモドロになった。
「俺では何か不服なのか。」
「いえ、不服とかそんな問題じゃなくて!」
「では決まりだな。」
「なんでそうなるんですか!」
不服以前にその思考回路が意味不明だと武尊は混乱した。
いつも冷たい目で見るし、人使いは荒いし、何よりお前呼ばわりのこんな男に突然そんな事を言われても受け入れられる訳がないじゃないと武尊は目を大きくして斎藤を凝視した。
すると斎藤は、
「ま、無理もないか。だが神社で見たお前の笑顔・・・俺はそれを守りたいと思っただけだ。」
と言った。
「え・・?」
思いもよらぬ斎藤の言葉が武尊の心の隙間にふっと入り込んだ。
「もっともこんな気持ちになったのは今朝の事だがな。俺は目つきも悪いし女の扱いに慣れているわけではない。お前が思っているように優しくは出来んかもしれん。だが惚れた相手をみすみす返り討ちにさせたくはない。」
「斎藤さん・・。」
武尊は思わず背筋を正して斎藤を見た。
相変わらず鋭い目。
でもよくよく見て見たら瞳には優しさがあった。
(私は斎藤さんの何を見て来たのだろう。)
厳しく叱られたこともあったが思い返せば彼の言う事はいつも正論だった。
武尊の斎藤に対する気持ちの変化が武尊の目を見ていた斎藤には分かった。
「・・惚れてしまったんだから仕方がないだろう。」
斎藤は隣にいる武尊の肩を抱いて引き寄せた。
「!」
やめてください!と言おうとして武尊は両手で斎藤を押し返そうとした武尊だったが斎藤は引き寄せただけでそれ以上動きはない。
それを不審に思った武尊が斎藤をそっと見上げてみると斎藤は余所を向き煙草を静かにふかしていた。
じっとしていると浴衣越しに斎藤の手の暖かさがじんと伝わってくる。
父親ではない人の人肌をこんなに近くで感じたことのない武尊の心の臓がトクンと鳴った。
と同時にクシュンと武尊はくしゃみをした。
斎藤は一瞬目を大きくし、武尊をそっと自分から離した。
「今日は疲れただろう、風邪を引く前に早く寝ろ。」
「あ・・はい。」
湯冷めしたのか急に寒気を感じてぶるっと身体を震わせた武尊は展開の速さに戸惑いながら立ち上がった。
そして斎藤に一礼すると逃げるようにその部屋を出た。