武尊は食べ始めてまた考え事を始めた。


武尊の考え事はそれだけ真剣だった。



（願い事は叶う・・あの神社のおみくじは当たる・・お父ちゃんの仇討ちは叶う・・絶対成就させる。こうやって警視庁に出入りしてるうちに叶える！）



具体的な策など何もない。

武術もやったことなどない。

けれども刺し違えても復讐を成就させると武尊の決意だけは勝手にメラメラと燃え上がった。



蕎麦屋のおやじは気づかなかったが斎藤は時々一瞬だけ無表情になる武尊の表情を見逃さなかった。





蕎麦を食べ終わり歩き出した二人、斎藤は武尊に、



「今日は俺も家に帰るぞ。」



と言った。



「え？あ・・そうですよね。今までやる事があるからって警視庁の方へお泊りでしたもんね、すみません・・。」



武尊こそ斎藤から寝泊まりは自分の家でしろと言われ斎藤の家で一人お世話になっていたのだった。


もともと斎藤の家であるのに斎藤が帰って来るというのを聞くと武尊はどきっとした。


斎藤は斎藤でもちろんやるべき仕事は山積なのは事実だったが、いきなり上司の自分と二人一つ屋根の下で暮らすのはどんなものかと武尊に気を使ったつもりだったが流石に正月ぐらいは自宅でゆっくりしたかった。






小さな借家だが一軒家で小さな庭もある斎藤の家。


中に入って少し驚いた。


きちんと掃除されていたからだった。



「お前がやったのか。」


「すみません、余計な事でしたでしょうか。でも、お世話になっているのにこれくらいのことしか思いつかなくて・・。」


「いや、助かる。俺も忙しくてなかなかそのほうまで手が回らないからな。」



そう言って感心しながら斎藤は家に上がった。



「私、お茶入れてきます！」



武尊は毎日帰って来てる家なのに何だか今日は全然他人の家のような気がして慌てて勝手場へ走って行った。