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ずっと一緒に(明治・京都)
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京都の山間部に一軒の小さな山小屋あり。
そこには一人の陶芸家の男といつのころからか女が一緒に住んでいた。
ある夜の事、夜も更け、そろそろ布団に入る頃合いになった時その日降ったりやんだりしていた雨が急に土砂降りになった。
ものすごい音だ。
まるで滝の下に建てた家のように水をかぶっていると武尊は天井を見上げた。
ポツ、ポツッっと天井の梁から雨漏りし、伝った水が囲炉裏のすぐそばに落ちる。
「うわ~、比古さん、今夜はひどいね。雨漏りあんまりしてほしくないなぁ。」
「大した事ねぇよ。明日は山を下りて買い物行くんだろ、早く寝ろ。」
比古は武尊が一緒の時はいつも歩く速さを武尊に合わせてくれる。
それはとても武尊とって嬉しいことなのだが比古一人で山を下りて用事を済ますのと違ってずいぶん時間がかかるのだ。
そのため早起きは必然である。
「うん、すぐ寝る。」
比古の言葉も雨の音でよく聞こえないぐらい雨の音は大きい。
武尊は小屋の入り口のカメに入った水を柄杓にすくい喉を潤すと小屋に一枚しかない布団にもぐりこんだ。
もちろん先客はいる。
比古は武尊がもぐりこんでくるとすぐにその腕で迎えに行き自分の方へ引き寄せるのだ。
湿気は多いが気温はもう夏ほど暑くはない。
比古の温もりに包まれて武尊は今日も幸せだと目を閉じた。
だが、今夜の雨は本当にうるさいほど。
目を瞑れば余計にその音は耳元で大きくなって聞こえるような気がするのだ。
しばらくはじっと目を閉じていた武尊だったがあまりにもの雨音に目を開いてもぞっと動いた。
「どうした。」
頭のすぐ上から比古の声がする。
普段よもすれば三つ数える間に寝息が聞こえるほど寝つきの良い武尊が布団に入ってもぞもぞするのはあまりないことだったからだ。
「ううん、なんでもない。ただ雨の音があまりにも凄いから耳について・・。ねぇ比古さん、こんな雨って結構降るの?」
「いいや、俺が知る限りでは今日が初めてだな。まあ、人間が知ることができるのはこの長い歴史の中でほんの一握りにもみたねぇ時間なんだろうから今まで知らないことが起きても不思議じゃねぇ。」
「そうだけど・・怖くない?比古さんってやっぱり肝っ玉座ってるんだ。」
何事にも大きすぎるほどのスケールで武尊を包む男はこのくらいの雨が降ろうが槍が降ろうが動じないのだった。
しかし武尊はふと不安が胸をよぎった。
「雨漏りぐらいならいいけど、裏山が崩れてこの小屋もろとも飲み込んだらどうしよう。」
武尊は比古の胸元をぎゅっと握って顔をうずめた。
逃げるにもこの辺りには他に家など一軒もない、まさに山に囲まれた僻地なのだ。
仮に外へ出たとしてもこの雨の中、道のぬかるみも半端ではないだろう。
足を滑らせれば谷底に落ちていく箇所だっていくつもある。
「心配するこたぁねぇ、俺がついている、だろ?」
そう言って比古は武尊の頭をやさしくなでた。
「何かあってもずっと一緒だ。」
比古はそうも囁いて武尊をぎゅっと抱きしめた。
「比古さん・・。」
武尊は比古の気持ちが分かり胸が熱くなった。
「なにがあっても離さないで・・。」
武尊も比古の逞しい身体に無理矢理腕を突っ込んで比古を抱きしめた。
「馬鹿野郎・・可愛いことを言いやがる。」
比古は少し照れくさい声でそう言うと、更に武尊を抱きしめその匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「どれ、雨音が気になって不安になるくらいなら俺が気にならないように手伝ってやるか。」
比古はそう言うと武尊を抱えたままくるりとひっくり返り自分の腹の上に武尊を抱えた。
「比古さん?」
いきなり比古の硬い腹の上に寝そべった格好にされ武尊は比古の顔を覗き込んだ。
真っ暗な部屋に囲炉裏の炭の灯りが微かに周囲を明るくしているが、暗さに目が慣れた武尊は比古の表情が見てとれた。
いつもの頼れる得意気な顔は変わらないが、口元がニッと笑っているのを見て武尊はハッとした。
(もしかして・・やる気?!)
そう直感した武尊は比古の胸を両手で押して立ち上がろうとしたが比古の方が動きが早かった。
武尊の腕をパシッと掴むと逃がさねぇとばかりに引き戻す。
「比古さん、明日は街へ下りて葵屋に頼んでおいた漬物を取りに行くんでしたよ・・ね?」
武尊は引きつりながら比古に明日の予定を念押しした。
「こんなに降りゃ途中の川は溢れちまってるだろうな。俺なら何とかなるが武尊は無理だ。」
「ええー!おんぶしてくれれば・・。」
武尊は何度か比古におぶってもらったことがあるので明日もそうしてくれればいいのにと思ったのだが甘かった。
「大事な売りもん背負ってるから無理だな。」
と、比古に簡単に断られた。
確かに明日は葵屋へ行く際に頼まれていた大皿を納める事になっていたのだ。
それが割れてしまったら、と思うと真剣に大皿を焼いていた比古の努力を知っている武尊はぐうの音も出なかった。
うーっと唸っている武尊の耳に一瞬耳を疑うような比古の言葉が聞こえた。
「久しぶりに気合入れてヤルか。」
「入れなくていいーーっ!!」
ただでさえ腰痛必死なのに気合いなんか入れられたら立ち上がれなくなることぐらい武尊も比古も承知だ。
「諦めろ、明日はどうせ出かけられねぇさ。」
「出かける事とヤルことは別!!しばらく自重するって言ったじゃない~~!」
「言ったか?そんな事。」
バレバレにしらばっくれる比古だったが、比古に首すじを吸われ秘部に指を這わされてはとたんに抵抗できなくなる武尊だった。
その後雨の音など気にしてられない状態にされた武尊は比古の腕の中で動かなくなった。
翌朝武尊が気がついた時は外は眩しすぎるほど光に包まれていた。
(うわっ・・ものすごくいい天気になった。)
昨晩の嵐はどこへやら。
空は抜けるように青いのが小屋の窓から見てとれた。
鉛のように重い身体を両肘で支えて顔を上げ小屋を見回しても比古の姿はない。
囲炉裏は吊り下げられた鍋がコトコトと小さな音をたてていた。
いつもの小屋の朝の光景だ。
(比古さん、御飯作っていってくれたんだ・・・で、私は置いてけぼりっと。)
武尊はハァっとため息をつくと布団に突っ伏した。
久しぶりの街を楽しみにしていたのに・・と武尊はおねだりして買ってもらう予定だったわらび餅を思い浮かべ消沈した。
「わらび餅ぃ~~。」
武尊が恨みがましい声で唸るように言うと、
「何だって。」
と比古の声がした。
武尊はあれ?っと思い声のした方へ顔を向けた。
小屋の入口のスダレを手でよける黒い大きなシルエットがそこにあった。
「比古さん街へ行ったんじゃなかったの!?」
てっきり置いてけぼりにされたとばかり思っていた武尊は驚いてそう言った。
「あ?ちょっと川の様子を見に行っていただけだぜ。何早とちりしてやがる。」
「え?」
武尊が比古の言葉に目をぱちくりさせていると、比古は武尊の傍へやって来て、
「ずっと一緒にいると言っただろう。」
と武尊の頭を撫でた。
「比古さん・・。」
決して置いていかれたわけではなく、昨晩の事もちゃんと覚えておいてくれていたんだと武尊は嬉しくなって比古の手を取りそっと頬を寄せた。
比古は満足そうに頷くと、
「今手ぬぐいとお湯を持ってきてやるからちょっと待ってろ。」
と言って、優しい眼で武尊を見つめて頭をもう一度撫でた。
おしまい。
そこには一人の陶芸家の男といつのころからか女が一緒に住んでいた。
ある夜の事、夜も更け、そろそろ布団に入る頃合いになった時その日降ったりやんだりしていた雨が急に土砂降りになった。
ものすごい音だ。
まるで滝の下に建てた家のように水をかぶっていると武尊は天井を見上げた。
ポツ、ポツッっと天井の梁から雨漏りし、伝った水が囲炉裏のすぐそばに落ちる。
「うわ~、比古さん、今夜はひどいね。雨漏りあんまりしてほしくないなぁ。」
「大した事ねぇよ。明日は山を下りて買い物行くんだろ、早く寝ろ。」
比古は武尊が一緒の時はいつも歩く速さを武尊に合わせてくれる。
それはとても武尊とって嬉しいことなのだが比古一人で山を下りて用事を済ますのと違ってずいぶん時間がかかるのだ。
そのため早起きは必然である。
「うん、すぐ寝る。」
比古の言葉も雨の音でよく聞こえないぐらい雨の音は大きい。
武尊は小屋の入り口のカメに入った水を柄杓にすくい喉を潤すと小屋に一枚しかない布団にもぐりこんだ。
もちろん先客はいる。
比古は武尊がもぐりこんでくるとすぐにその腕で迎えに行き自分の方へ引き寄せるのだ。
湿気は多いが気温はもう夏ほど暑くはない。
比古の温もりに包まれて武尊は今日も幸せだと目を閉じた。
だが、今夜の雨は本当にうるさいほど。
目を瞑れば余計にその音は耳元で大きくなって聞こえるような気がするのだ。
しばらくはじっと目を閉じていた武尊だったがあまりにもの雨音に目を開いてもぞっと動いた。
「どうした。」
頭のすぐ上から比古の声がする。
普段よもすれば三つ数える間に寝息が聞こえるほど寝つきの良い武尊が布団に入ってもぞもぞするのはあまりないことだったからだ。
「ううん、なんでもない。ただ雨の音があまりにも凄いから耳について・・。ねぇ比古さん、こんな雨って結構降るの?」
「いいや、俺が知る限りでは今日が初めてだな。まあ、人間が知ることができるのはこの長い歴史の中でほんの一握りにもみたねぇ時間なんだろうから今まで知らないことが起きても不思議じゃねぇ。」
「そうだけど・・怖くない?比古さんってやっぱり肝っ玉座ってるんだ。」
何事にも大きすぎるほどのスケールで武尊を包む男はこのくらいの雨が降ろうが槍が降ろうが動じないのだった。
しかし武尊はふと不安が胸をよぎった。
「雨漏りぐらいならいいけど、裏山が崩れてこの小屋もろとも飲み込んだらどうしよう。」
武尊は比古の胸元をぎゅっと握って顔をうずめた。
逃げるにもこの辺りには他に家など一軒もない、まさに山に囲まれた僻地なのだ。
仮に外へ出たとしてもこの雨の中、道のぬかるみも半端ではないだろう。
足を滑らせれば谷底に落ちていく箇所だっていくつもある。
「心配するこたぁねぇ、俺がついている、だろ?」
そう言って比古は武尊の頭をやさしくなでた。
「何かあってもずっと一緒だ。」
比古はそうも囁いて武尊をぎゅっと抱きしめた。
「比古さん・・。」
武尊は比古の気持ちが分かり胸が熱くなった。
「なにがあっても離さないで・・。」
武尊も比古の逞しい身体に無理矢理腕を突っ込んで比古を抱きしめた。
「馬鹿野郎・・可愛いことを言いやがる。」
比古は少し照れくさい声でそう言うと、更に武尊を抱きしめその匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「どれ、雨音が気になって不安になるくらいなら俺が気にならないように手伝ってやるか。」
比古はそう言うと武尊を抱えたままくるりとひっくり返り自分の腹の上に武尊を抱えた。
「比古さん?」
いきなり比古の硬い腹の上に寝そべった格好にされ武尊は比古の顔を覗き込んだ。
真っ暗な部屋に囲炉裏の炭の灯りが微かに周囲を明るくしているが、暗さに目が慣れた武尊は比古の表情が見てとれた。
いつもの頼れる得意気な顔は変わらないが、口元がニッと笑っているのを見て武尊はハッとした。
(もしかして・・やる気?!)
そう直感した武尊は比古の胸を両手で押して立ち上がろうとしたが比古の方が動きが早かった。
武尊の腕をパシッと掴むと逃がさねぇとばかりに引き戻す。
「比古さん、明日は街へ下りて葵屋に頼んでおいた漬物を取りに行くんでしたよ・・ね?」
武尊は引きつりながら比古に明日の予定を念押しした。
「こんなに降りゃ途中の川は溢れちまってるだろうな。俺なら何とかなるが武尊は無理だ。」
「ええー!おんぶしてくれれば・・。」
武尊は何度か比古におぶってもらったことがあるので明日もそうしてくれればいいのにと思ったのだが甘かった。
「大事な売りもん背負ってるから無理だな。」
と、比古に簡単に断られた。
確かに明日は葵屋へ行く際に頼まれていた大皿を納める事になっていたのだ。
それが割れてしまったら、と思うと真剣に大皿を焼いていた比古の努力を知っている武尊はぐうの音も出なかった。
うーっと唸っている武尊の耳に一瞬耳を疑うような比古の言葉が聞こえた。
「久しぶりに気合入れてヤルか。」
「入れなくていいーーっ!!」
ただでさえ腰痛必死なのに気合いなんか入れられたら立ち上がれなくなることぐらい武尊も比古も承知だ。
「諦めろ、明日はどうせ出かけられねぇさ。」
「出かける事とヤルことは別!!しばらく自重するって言ったじゃない~~!」
「言ったか?そんな事。」
バレバレにしらばっくれる比古だったが、比古に首すじを吸われ秘部に指を這わされてはとたんに抵抗できなくなる武尊だった。
その後雨の音など気にしてられない状態にされた武尊は比古の腕の中で動かなくなった。
翌朝武尊が気がついた時は外は眩しすぎるほど光に包まれていた。
(うわっ・・ものすごくいい天気になった。)
昨晩の嵐はどこへやら。
空は抜けるように青いのが小屋の窓から見てとれた。
鉛のように重い身体を両肘で支えて顔を上げ小屋を見回しても比古の姿はない。
囲炉裏は吊り下げられた鍋がコトコトと小さな音をたてていた。
いつもの小屋の朝の光景だ。
(比古さん、御飯作っていってくれたんだ・・・で、私は置いてけぼりっと。)
武尊はハァっとため息をつくと布団に突っ伏した。
久しぶりの街を楽しみにしていたのに・・と武尊はおねだりして買ってもらう予定だったわらび餅を思い浮かべ消沈した。
「わらび餅ぃ~~。」
武尊が恨みがましい声で唸るように言うと、
「何だって。」
と比古の声がした。
武尊はあれ?っと思い声のした方へ顔を向けた。
小屋の入口のスダレを手でよける黒い大きなシルエットがそこにあった。
「比古さん街へ行ったんじゃなかったの!?」
てっきり置いてけぼりにされたとばかり思っていた武尊は驚いてそう言った。
「あ?ちょっと川の様子を見に行っていただけだぜ。何早とちりしてやがる。」
「え?」
武尊が比古の言葉に目をぱちくりさせていると、比古は武尊の傍へやって来て、
「ずっと一緒にいると言っただろう。」
と武尊の頭を撫でた。
「比古さん・・。」
決して置いていかれたわけではなく、昨晩の事もちゃんと覚えておいてくれていたんだと武尊は嬉しくなって比古の手を取りそっと頬を寄せた。
比古は満足そうに頷くと、
「今手ぬぐいとお湯を持ってきてやるからちょっと待ってろ。」
と言って、優しい眼で武尊を見つめて頭をもう一度撫でた。
おしまい。