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陶芸家の副業(前編) NEW!
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翌日、昼も過ぎて武尊はクツクツとお湯が沸騰する音と何とも言えない葉の臭いで目が覚めた。
「よう、起きたか。」
比古は小屋の囲炉裏の傍で薬研をゴリゴリと動かしていた。
武尊は比古の向こうの窓の外が相当日が照っていることからまた寝過ごしたと思った。
「比古さん・・・私また寝ちゃってた?」
少し掠れた声で武尊は聞いた。
「気にするな、朝までやってたんだから起きられなくて当たり前だ。」
「つっぅ。」
武尊はそれでも起きようと、布団から上半身を起こしたが身体のあちこちが筋肉痛や鈍痛で悲鳴を上げた。
「おい、無理すんな。」
それほど武尊を激しく抱いた比古の方が慌てた。
「大丈夫・・それに少し体を動かした方が早く痛くなくなるもの。」
「いいから寝てろ、ほらこんなに身体が熱っぽいのが分からねぇのか?」
と、比古は武尊のところに来て首と額に手を当て言った。
「いつもの事だから・・比古さんが激しかった日は・・。」
と、武尊は更に頬を赤らめて俯きながら言った。
「それでも寝てろ、眠くなくても横になってろ。この薬ができるまではな。」
と、比古は武尊をまた布団に寝かしつけた。
「えー、やっぱりこの臭い薬だったんだ・・。そう言えば比古さんの作る薬って適当だから信用しない方がいいって緋村さんが言ってたけど・・。」
武尊がそうボソボソ言うと、
「あの馬鹿弟子・・そんなことまで言いやがったのか。」
比古は眉毛をピクピクさせながら言った。
「これは馬鹿弟子に使った適当なもんじゃなく、そういう熱感に効く本物の漢方薬だ。」
比古は武尊に説明したあと、ある男の顔が思い出された。
「比古さん?」
急に鋭い目つきになった比古に武尊は首を傾げた。
先回蒼紫が恒例の漬物を届けに山の小屋へやって来た時、
『今時期なら良い生葉が手に入る。あんたに武尊を壊されたくないからな。』
と、比古に薬の作り方を書いた紙を手渡した。
余計なお世話だと、比古は蒼紫を睨んでそう言ったもののその処方箋は捨てずに持っていた。
「御庭番衆直伝の漢方薬だそうだ・・と、葵屋の若いのが言ってた薬だから効くらしいぞ。」
比古は不本意ながらも武尊の為には仕方がないと薬湯を作ったのだった。
「蒼紫が?」
武尊は自分が比古にこんなになるまで抱かれると予測していたんだろうかと思うと顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。
そんな武尊を横目で見ながら比古は、
「よし、後はこれを入れて少し煎じれば完成だ。」
と、薬研で細かく砕いた木の皮を土瓶に入れた。
クツクツと音がすること十分。
「もういいだろう。」
と、比古が早速湯呑に入れて武尊のもとへ持って来た。
「起きてるか?」
「うん・・・。」
武尊は目を開けて比古を見あげた。
比古が武尊を起そうとすると武尊は、
「ねぇ比古さん・・まだあの焼物、乾燥棚に置いたまま?」
と聞いてきた。
「あ、嗚呼。午前中は薬草を取りに山に入っていたからな。それがどうかしたのか?あれは武尊が嫌だというから後から壊そうと思っていたんだが。」
比古がそう言うと武尊は、
「ううん、私考えたんだけど・・やっぱりあれ作っちゃおうよ。」
と言った。
昨晩と言っていることが逆の武尊の発言に比古は、
「あ゛?」
と、片方の眉毛をあげ武尊を見下ろした。
よっこらしょ、と、武尊は体を起こしながら
「折角あそこまで作ったんだしさ、どんな形であっても師匠の作品が見てみたいし・・・・それに・・・。」
と武尊は口ごもり、比古の耳元に口を寄せて恥ずかしそうに小さな声で言った。
「比古さんに・・・私にも使って欲しいの。」
比古が改めて武尊を見ると武尊の耳は赤く染まっていた。
だが比古はあからさまに不機嫌な顔をした。
「俺のよりあんな作り物がいいっていうのか?武尊には必要ない。」
何よりも己自身(息子も含む)と技能に絶対的自信、そして武尊に対する底知れぬ愛を持つ比古は何故あのような玩具に頼らなければならないのかと武尊の発言に不満を持った。
だが次の瞬間、にやっと口角をあげた。
「いいだろう・・・折角あそこまで作ったんだしな。武尊がそこまで言うなら陶芸家新津覚之進唯一の弟子としてその用途まで見届けろ。」
比古は昨晩の武尊の様子では預かっている白銀の鈴も店の主人にそのまま返すことになりそうだと思っていたのだが、今の武尊の言葉を聞いてこれも試してやると思った。
(好奇心旺盛だというのは分かるがな、だが武尊、本物に勝るものはないという事をしっかり教育してやるからな。)
《張型のお話でした。次回につづく》
「よう、起きたか。」
比古は小屋の囲炉裏の傍で薬研をゴリゴリと動かしていた。
武尊は比古の向こうの窓の外が相当日が照っていることからまた寝過ごしたと思った。
「比古さん・・・私また寝ちゃってた?」
少し掠れた声で武尊は聞いた。
「気にするな、朝までやってたんだから起きられなくて当たり前だ。」
「つっぅ。」
武尊はそれでも起きようと、布団から上半身を起こしたが身体のあちこちが筋肉痛や鈍痛で悲鳴を上げた。
「おい、無理すんな。」
それほど武尊を激しく抱いた比古の方が慌てた。
「大丈夫・・それに少し体を動かした方が早く痛くなくなるもの。」
「いいから寝てろ、ほらこんなに身体が熱っぽいのが分からねぇのか?」
と、比古は武尊のところに来て首と額に手を当て言った。
「いつもの事だから・・比古さんが激しかった日は・・。」
と、武尊は更に頬を赤らめて俯きながら言った。
「それでも寝てろ、眠くなくても横になってろ。この薬ができるまではな。」
と、比古は武尊をまた布団に寝かしつけた。
「えー、やっぱりこの臭い薬だったんだ・・。そう言えば比古さんの作る薬って適当だから信用しない方がいいって緋村さんが言ってたけど・・。」
武尊がそうボソボソ言うと、
「あの馬鹿弟子・・そんなことまで言いやがったのか。」
比古は眉毛をピクピクさせながら言った。
「これは馬鹿弟子に使った適当なもんじゃなく、そういう熱感に効く本物の漢方薬だ。」
比古は武尊に説明したあと、ある男の顔が思い出された。
「比古さん?」
急に鋭い目つきになった比古に武尊は首を傾げた。
先回蒼紫が恒例の漬物を届けに山の小屋へやって来た時、
『今時期なら良い生葉が手に入る。あんたに武尊を壊されたくないからな。』
と、比古に薬の作り方を書いた紙を手渡した。
余計なお世話だと、比古は蒼紫を睨んでそう言ったもののその処方箋は捨てずに持っていた。
「御庭番衆直伝の漢方薬だそうだ・・と、葵屋の若いのが言ってた薬だから効くらしいぞ。」
比古は不本意ながらも武尊の為には仕方がないと薬湯を作ったのだった。
「蒼紫が?」
武尊は自分が比古にこんなになるまで抱かれると予測していたんだろうかと思うと顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。
そんな武尊を横目で見ながら比古は、
「よし、後はこれを入れて少し煎じれば完成だ。」
と、薬研で細かく砕いた木の皮を土瓶に入れた。
クツクツと音がすること十分。
「もういいだろう。」
と、比古が早速湯呑に入れて武尊のもとへ持って来た。
「起きてるか?」
「うん・・・。」
武尊は目を開けて比古を見あげた。
比古が武尊を起そうとすると武尊は、
「ねぇ比古さん・・まだあの焼物、乾燥棚に置いたまま?」
と聞いてきた。
「あ、嗚呼。午前中は薬草を取りに山に入っていたからな。それがどうかしたのか?あれは武尊が嫌だというから後から壊そうと思っていたんだが。」
比古がそう言うと武尊は、
「ううん、私考えたんだけど・・やっぱりあれ作っちゃおうよ。」
と言った。
昨晩と言っていることが逆の武尊の発言に比古は、
「あ゛?」
と、片方の眉毛をあげ武尊を見下ろした。
よっこらしょ、と、武尊は体を起こしながら
「折角あそこまで作ったんだしさ、どんな形であっても師匠の作品が見てみたいし・・・・それに・・・。」
と武尊は口ごもり、比古の耳元に口を寄せて恥ずかしそうに小さな声で言った。
「比古さんに・・・私にも使って欲しいの。」
比古が改めて武尊を見ると武尊の耳は赤く染まっていた。
だが比古はあからさまに不機嫌な顔をした。
「俺のよりあんな作り物がいいっていうのか?武尊には必要ない。」
何よりも己自身(息子も含む)と技能に絶対的自信、そして武尊に対する底知れぬ愛を持つ比古は何故あのような玩具に頼らなければならないのかと武尊の発言に不満を持った。
だが次の瞬間、にやっと口角をあげた。
「いいだろう・・・折角あそこまで作ったんだしな。武尊がそこまで言うなら陶芸家新津覚之進唯一の弟子としてその用途まで見届けろ。」
比古は昨晩の武尊の様子では預かっている白銀の鈴も店の主人にそのまま返すことになりそうだと思っていたのだが、今の武尊の言葉を聞いてこれも試してやると思った。
(好奇心旺盛だというのは分かるがな、だが武尊、本物に勝るものはないという事をしっかり教育してやるからな。)
《張型のお話でした。次回につづく》