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張と左之助(明治・東京)
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「親父さん、冷や二つつけてぇや。」
と、張は酒を頼んだ。
ガタンと椅子に座った張は左之助の顔をじっと見た。
「何だよ・・酔っぱらってのかホウキ頭、そんなに飲んだのかよ。」
半開きの目、赤みがかった顔で見られるもんだから左之助は武尊の事はちょっと置いといて張に話しかけた。
すると張はため息まじりに、
「・・わいはな、抜刀斎やお前と違って仕事で超忙しい日々を送ってんねん、たまの休みぐらい好きに飲んでもええやろ。」
と、答えた。
「そうだよな、お前斎藤付きの密偵って言ってたもんな。あれが上司じゃかなわねぇよな。」
と、左之助は高飛車な態度の斎藤を思い描いた。
酒が二人の机に置かれた早々張は自分のぐい呑みに自分で注いでぐっと呑んだ。
「じゃ、俺も遠慮なくいただくぜ。」
と左之助も酒を自分に注いでぐいっと飲んだ。
少しは同情するぜ、と左之助は思いつつ本題の武尊のことを聞こうと思ったら今度は逆に張から質問が来た。
「トリ頭・・、お前・・女はおらんのか。」
いったい何を言いだすかと予想外過ぎる質問に左之助はポカンと口を開けたが、
「へっ、そんなもんいるかよ。」
と、恰好つけて言ってみた。
張はそんな左之助の返事に、
「・・・なんや、もてんだけか。」
とぼそっと呟いた。
「あ?誰がもてねぇだと!」
と、反射的に反論した左之助だったがそう言えば生まれてこの方十九年、自分に女なんていなかったと思った。
相楽隊長を殺されてから左之助は明治政府を恨み、社会へ不満をつのらせ、いつも心中はドス黒い感情しかなく、喧嘩だけがうさをはらせると喧嘩に明け暮れたた。
どうにもこうにもならなかったあの頃は女を持とうなんてことすら考えもしなかった、いや、別に今も女なんかいてもいなくても関係ないし欲しいとも思わない、と、左之助が思っていると、張がぼそぼそと、
「あの抜刀斎でさえ神谷の娘と出来とるやろ、しかも一回りも歳がちゃうちゅうらしいやないか・・・・抜刀斎がそないな趣味だとは思わへんやったわ・・・・ほんであのガキもちゃっかり彼女がおんねんやろ、われ、そないなまんまやあのガキに筆おろし先こされるで。」
ガーーン!
女の有無はどうでもよかったが、左之助にとって弥彦にそれを先に越されることは男のこけんに関わることだった。
しかもそれを張に言われるのは、まったくもって大きなお世話。
だが張の言った事はかなり左之助に動揺を与えた。
(剣心はともかく(そもそも十六で結婚していたとは思っていなかったが)、弥彦の奴に先に筆おろし(童貞喪失)されちまうのだけは、そりゃ有り得ねぇ!)
と、心の中で左之助は叫んだ。
だがこの目の前の関西弁のホウキ野郎に女なんざいるわけねぇと信じたいあまりどもりながら左之助は言った。
「て、て、てめぇはいるんだろうな、そんな余裕ぶっこいて言うからにはよ!」
「おるで。」
「!」
張は左之助の期待を裏切りサラリと答え、またグイッとさけをあおった。
「わいはな、お前と違ごうてちゃんと相手の話は聞くさかい、つまり聞き上手や。ほんでおなごへの気配りもばっちりや。お前みとうなワカランチンとはちゃうねん。」
「わからんちん・・。」
ブチ・・、ボロクソに言われたうえ、弥彦に対する焦りが左之助の只でさえ短い堪忍袋の緒を切った。
ガタッ、左之助は椅子から立ち上がった。
「こら、ホウキ頭!いつかの勝負ここでつけてやってもいいんだぜ!」
だが張は全然動じず立ち上がった左之助を上目使いで見上げて、
「それとな・・お前の悪い所は年上を敬わないことや。」
と言った。
初めて会った時から互いに何かとむかつくと思っていた張と左之助。
だが左之助がブチ切れていく中、今日は張は左之助の挑発には乗らなかった。
「まあ、飲めやトリ頭・・。」
と、スッとお銚子を左之助に差し出した。
「なっ・・・・・・おう、悪いな・・。」
単純な左之助は火付きも早いが火消も早い、張のそんな態度にまたガタっと椅子を引いて座り直した。
左之助はぐい呑みを自動的に差し出すと張はそこへお酒を注いだ。
「で、トリ頭、三本傷って言うのはどんな奴なんだ。わいも縁の件であっちこっち行っとったさかい、同じ斎藤の密偵でも顔を合わしたぐらいしかないさかいに、そいつの事ようしらんのや。・・せやけどわいとお前の仲や、どこに居るかぐらい調べてやってもええで。」
知らないなんて嘘。
成行きとはいえ自分の胸の中に武尊を収めてその息づかいを間近で聞いたこともある仲。
だけどそんな事は知らない左之助。
張の言葉を真に受けた。
「何だよ、知らねェのかよ。役にたたねぇな。」
いつも一言多い左之助。
だが張はそんな一言にも今日は乗ってやらないでいた。
今は左之助から武尊の事を聞き出す網を張っている最中なのだ。
左之助はちょっといい気分になって、言いたいことを言う。
「あいつはな、俺が赤報隊準隊士だった頃の仇だ。」
「へぇ・・・あ?チョイ待ちぃや、お前赤報隊やったんか!」
「そうよ、まだガキだったがよ、俺は正々堂々の準隊士だったんだ。」
赤報隊はなくなってもその誇りは今もあると左之助はそう言った。
意外な左之助の過去に驚きながらも張は武尊と左之助の繋がりが気になった。
「で、なんで武尊が仇なんや、十年前やで?あいつの歳二十五って・・・(やべ、)・・二十五やって斎藤がわいに言うとったんやけど、ほんなら十年前ちゅうたら十五やそこらやで。なわけあらへんやろ!」
「お前だって十五の時にはすでに殺しとかやってたんだろ?剣心だって昔は十五で抜刀斎として人斬りだったんだぜ、それに俺は見たんだ・・あの夜屋根の上にあいつが居たのを・・あの赤い眼・・・ガキの俺を凍りつかせるには十分な眼だったぜ・・。」
「で、お前は生き残ったんだな。」
「いや、俺は奴が殺ったとこは見てねぇ。」
「は?それが何で三本傷が殺ったちゅう事になんねん!」
「だから言ったじゃねーか、あんな眼をする奴は下手人じゃねぇわけないだろ!」
「アホか、トリ頭。見てもおらんのに何勝手に決めとんねん!ほなら若しあそこにわいがおったらわいが仇になるんか!」
(喧嘩屋斬左だったのは伊達じゃねぇ、俺には分かるんだ・・。)
左之助はそう思ったが張の言い分を覆す証拠がない。
「てめぇだって見た事ないくせに適当な事言うんじゃねぇよ・・・あいつも剣心みたいに今は変わっちまったかも知れねェけどあいつなんだよ・・殺ったのは絶対・・。」
「・・・。」
張だって抜刀斎と神社で対峙したときに抜刀斎の人斬りの顔を見た手前、今度は張が何も言えなくなってしまった。
「て、訳だ。ちょいとぶん殴らなけちゃ気がすまねぇ、だからあいつの居場所頼むぜ。」
張は黙って手の中のぐい呑みの酒がゆらゆらと揺れるのを見ていた。
と、張は酒を頼んだ。
ガタンと椅子に座った張は左之助の顔をじっと見た。
「何だよ・・酔っぱらってのかホウキ頭、そんなに飲んだのかよ。」
半開きの目、赤みがかった顔で見られるもんだから左之助は武尊の事はちょっと置いといて張に話しかけた。
すると張はため息まじりに、
「・・わいはな、抜刀斎やお前と違って仕事で超忙しい日々を送ってんねん、たまの休みぐらい好きに飲んでもええやろ。」
と、答えた。
「そうだよな、お前斎藤付きの密偵って言ってたもんな。あれが上司じゃかなわねぇよな。」
と、左之助は高飛車な態度の斎藤を思い描いた。
酒が二人の机に置かれた早々張は自分のぐい呑みに自分で注いでぐっと呑んだ。
「じゃ、俺も遠慮なくいただくぜ。」
と左之助も酒を自分に注いでぐいっと飲んだ。
少しは同情するぜ、と左之助は思いつつ本題の武尊のことを聞こうと思ったら今度は逆に張から質問が来た。
「トリ頭・・、お前・・女はおらんのか。」
いったい何を言いだすかと予想外過ぎる質問に左之助はポカンと口を開けたが、
「へっ、そんなもんいるかよ。」
と、恰好つけて言ってみた。
張はそんな左之助の返事に、
「・・・なんや、もてんだけか。」
とぼそっと呟いた。
「あ?誰がもてねぇだと!」
と、反射的に反論した左之助だったがそう言えば生まれてこの方十九年、自分に女なんていなかったと思った。
相楽隊長を殺されてから左之助は明治政府を恨み、社会へ不満をつのらせ、いつも心中はドス黒い感情しかなく、喧嘩だけがうさをはらせると喧嘩に明け暮れたた。
どうにもこうにもならなかったあの頃は女を持とうなんてことすら考えもしなかった、いや、別に今も女なんかいてもいなくても関係ないし欲しいとも思わない、と、左之助が思っていると、張がぼそぼそと、
「あの抜刀斎でさえ神谷の娘と出来とるやろ、しかも一回りも歳がちゃうちゅうらしいやないか・・・・抜刀斎がそないな趣味だとは思わへんやったわ・・・・ほんであのガキもちゃっかり彼女がおんねんやろ、われ、そないなまんまやあのガキに筆おろし先こされるで。」
ガーーン!
女の有無はどうでもよかったが、左之助にとって弥彦にそれを先に越されることは男のこけんに関わることだった。
しかもそれを張に言われるのは、まったくもって大きなお世話。
だが張の言った事はかなり左之助に動揺を与えた。
(剣心はともかく(そもそも十六で結婚していたとは思っていなかったが)、弥彦の奴に先に筆おろし(童貞喪失)されちまうのだけは、そりゃ有り得ねぇ!)
と、心の中で左之助は叫んだ。
だがこの目の前の関西弁のホウキ野郎に女なんざいるわけねぇと信じたいあまりどもりながら左之助は言った。
「て、て、てめぇはいるんだろうな、そんな余裕ぶっこいて言うからにはよ!」
「おるで。」
「!」
張は左之助の期待を裏切りサラリと答え、またグイッとさけをあおった。
「わいはな、お前と違ごうてちゃんと相手の話は聞くさかい、つまり聞き上手や。ほんでおなごへの気配りもばっちりや。お前みとうなワカランチンとはちゃうねん。」
「わからんちん・・。」
ブチ・・、ボロクソに言われたうえ、弥彦に対する焦りが左之助の只でさえ短い堪忍袋の緒を切った。
ガタッ、左之助は椅子から立ち上がった。
「こら、ホウキ頭!いつかの勝負ここでつけてやってもいいんだぜ!」
だが張は全然動じず立ち上がった左之助を上目使いで見上げて、
「それとな・・お前の悪い所は年上を敬わないことや。」
と言った。
初めて会った時から互いに何かとむかつくと思っていた張と左之助。
だが左之助がブチ切れていく中、今日は張は左之助の挑発には乗らなかった。
「まあ、飲めやトリ頭・・。」
と、スッとお銚子を左之助に差し出した。
「なっ・・・・・・おう、悪いな・・。」
単純な左之助は火付きも早いが火消も早い、張のそんな態度にまたガタっと椅子を引いて座り直した。
左之助はぐい呑みを自動的に差し出すと張はそこへお酒を注いだ。
「で、トリ頭、三本傷って言うのはどんな奴なんだ。わいも縁の件であっちこっち行っとったさかい、同じ斎藤の密偵でも顔を合わしたぐらいしかないさかいに、そいつの事ようしらんのや。・・せやけどわいとお前の仲や、どこに居るかぐらい調べてやってもええで。」
知らないなんて嘘。
成行きとはいえ自分の胸の中に武尊を収めてその息づかいを間近で聞いたこともある仲。
だけどそんな事は知らない左之助。
張の言葉を真に受けた。
「何だよ、知らねェのかよ。役にたたねぇな。」
いつも一言多い左之助。
だが張はそんな一言にも今日は乗ってやらないでいた。
今は左之助から武尊の事を聞き出す網を張っている最中なのだ。
左之助はちょっといい気分になって、言いたいことを言う。
「あいつはな、俺が赤報隊準隊士だった頃の仇だ。」
「へぇ・・・あ?チョイ待ちぃや、お前赤報隊やったんか!」
「そうよ、まだガキだったがよ、俺は正々堂々の準隊士だったんだ。」
赤報隊はなくなってもその誇りは今もあると左之助はそう言った。
意外な左之助の過去に驚きながらも張は武尊と左之助の繋がりが気になった。
「で、なんで武尊が仇なんや、十年前やで?あいつの歳二十五って・・・(やべ、)・・二十五やって斎藤がわいに言うとったんやけど、ほんなら十年前ちゅうたら十五やそこらやで。なわけあらへんやろ!」
「お前だって十五の時にはすでに殺しとかやってたんだろ?剣心だって昔は十五で抜刀斎として人斬りだったんだぜ、それに俺は見たんだ・・あの夜屋根の上にあいつが居たのを・・あの赤い眼・・・ガキの俺を凍りつかせるには十分な眼だったぜ・・。」
「で、お前は生き残ったんだな。」
「いや、俺は奴が殺ったとこは見てねぇ。」
「は?それが何で三本傷が殺ったちゅう事になんねん!」
「だから言ったじゃねーか、あんな眼をする奴は下手人じゃねぇわけないだろ!」
「アホか、トリ頭。見てもおらんのに何勝手に決めとんねん!ほなら若しあそこにわいがおったらわいが仇になるんか!」
(喧嘩屋斬左だったのは伊達じゃねぇ、俺には分かるんだ・・。)
左之助はそう思ったが張の言い分を覆す証拠がない。
「てめぇだって見た事ないくせに適当な事言うんじゃねぇよ・・・あいつも剣心みたいに今は変わっちまったかも知れねェけどあいつなんだよ・・殺ったのは絶対・・。」
「・・・。」
張だって抜刀斎と神社で対峙したときに抜刀斎の人斬りの顔を見た手前、今度は張が何も言えなくなってしまった。
「て、訳だ。ちょいとぶん殴らなけちゃ気がすまねぇ、だからあいつの居場所頼むぜ。」
張は黙って手の中のぐい呑みの酒がゆらゆらと揺れるのを見ていた。