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張と左之助(明治・東京)
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張は京都で斎藤の密偵になって以来、初めて二日の休暇をもらった。
日頃のストレス、その他もろもろで張は飲みたい気分だったのだ。
張はほろ酔いで一件目の店を出て暖簾を手で分け、さてどっちへ行こうかと思った時、背後から袖をぐいっと引っ張られた。
「よう・・。」
どこかで聞いた声だと振り返った張が見たものは京都以来の相楽左之助。
いろいろ五月蝿いこの男は張にとって見たくもない人間の中で五本の指に入る男だった。
「何や、トリ頭か。お前の顔見るとせっかくの酒もまずうなるわ、はよどっか行け。」
張は迷惑だという感情を全身から出して左之助に言ったが左之助は握った袖を離さない。
左之助にしてもここで張に会ったことは偶然であった。
舎弟の所へ顔を出した帰り、たまたま歩いていた目の前の店から張が出て来たに過ぎない。
だが張の姿を見た瞬間、左之助は張に聞きたいことを思いついたのだ。
それは武尊の事。
赤報隊で自分を可愛がってくれた副隊長を殺した犯人は武尊だと思っている左之助は何としても武尊の居所を知りたい。
武尊が神谷道場に来た時一発しか殴れなかったのは左之助にとって物足りなさすぎた。
しかもその後の攻撃を全て交わされたのは我慢がならなかった。
この間はつい頭に血が上ってしまってぶっ殺してやるぐらいの勢いだったが、一応【不殺】の剣心組の一番の組員と自負する手前、せめてブタ饅頭(谷十三)と同等にとりあえずタコ殴りにすると決めたところだった。
だが先日その件を斎藤から聞き出そうとすれば逆に斎藤から一発喰らって気を失わされ情報を聞き出せなかった。
同じ斎藤の部下ならこいつも武尊の居所を知っているんじゃねぇかと思った左之助にとっては、それを聞き出すまではすっぽんのように喰いついて離さないつもりでいた。
「いつまで袖持ってんねん、早よう放せやトリ頭。」
「やなこったい、放して欲しけりゃ一つ教えろホウキ頭。」
トリ頭がしつこいというかウザイと言うのは十分承知。
それならば早く答えて消えてもらうのが一番。
そう思った張は左之助を追い払うためにも嫌々ながら、
「何やねん、ほな早よ言え、ほんでさっさと失せい。」
と言ってやった。
「三本傷は何処に居やがる。」
(三本傷?)
いきなり誰のことなんかいと思った張だったが、知ってる顔で三本の傷があると言えば・・・はっ、と張の脳裏に武尊の顔が浮かんだ。
(何でお前ごときに武尊がそないな言われ方をせんなあかんのや!)
っと、左之助にむっときた張は答える代りに、
「トリ頭に話すことはあらへん。」
と背を向けて左之助を引きずりながらでも歩こうとした。
「オイコラ!話すんじゃなかったのか!」
「誰がお前なんかに話すかボケッ!」
「何だとホウキ!今早く言えって言ったのはお前じゃないかコラ!言うまで離してやんねぇからな!」
と、それこそすっぽんのように張の袖を握りしめた。
「・・・・。」
その時張の頭にひらめいたことがあった。
張は左之助を振り返った。
急に振り返られたうえに顔を至近距離まで近づけられてて左之助は目を一瞬点にした。
「な、何だよ・・急に・・。」
オイオイ・・間違ったら危うく口がくっついちまうだろ!と左之助が焦る距離で張はギロリと左之助を見ながら言った。
「三本傷の奴っていうのは右頬に三本傷がある奴のことだな。」
「そ、そうだぜ・・・知ってんだろ。」
左之助はいつもと違う張の様子に思わずどもってしまった。
張は数秒黙った後、
「ちょっと来いや、少しおごっちゃるさかい、その三本傷の事わいに話してぇや。」
と言った。
「あ゛?・・おごってくれんのか?」
プータローの左之助は【おごり】という言葉に弱い。
しかも今左之助がいる界隈は飲み屋街。
ひょっとしてただ酒が飲めると左之助は浮き足立った。
が、相手はなんてったって元十本刀、いまいち信用出来ねぇと左之助はふんだ。
「んなこと言って逃げるつもりだろうが、店に入るまで袖は放してやんねェからな。」
「袖でも何でも好きにせーや。とにかくこんな所で立っとんのもなんや、行くちゅうたら行くで。」
張はすぐ先の角の居酒屋へ向かった。
そしてその心中はちょっと複雑だった。
(トリ頭はわいの知らへん武尊を知っている・・いったいこいつと武尊の間に何があったんや。)
張はそれを知りたいと思った。
あの容姿で顔に傷をうけ、女には命と言われる髪を男のように短くして斎藤に雇われている。
斎藤は役に立たない者を部下に持つほど阿呆じゃない。
最初はコロシと聞いただけでも倒れそうなぐらいに顔を青くしたひ弱な武尊も、雇った斎藤も、張は理解できなかった。
役には立たない奴と思っていたのに実は射撃は名手で捜査にあたっての勘もいい。
笑った所が少し宗次郎に似ていると思っていた矢先に武尊が女と知りいつの間にか恋に落ちていた。
阿呆らしいほどの片思い。
それでも好きなもんは好きやねんと、割り切れる自分はエライと自分で思う張だった。
だがそんな好きな女の過去を張は何も知らないのだ。
いや、この間初めて知ったのは武尊には生き別れの兄がいて、その男がどえらいお宝の刀を寺に供養してくれと持ってきた事ぐらい。
・・自分の知らない事をトリ頭は知っているという事に張は少し苛立った。
ガラっと張は二件目の飲み屋の入口を開けた。
「ここやで、日本酒はいけるかトリ頭。」
「おう・・俺は何でもいけるぜ、心配すんなトリ頭。」
そうして二人は近くの机の椅子が引き、互いに向かい合って座った。
日頃のストレス、その他もろもろで張は飲みたい気分だったのだ。
張はほろ酔いで一件目の店を出て暖簾を手で分け、さてどっちへ行こうかと思った時、背後から袖をぐいっと引っ張られた。
「よう・・。」
どこかで聞いた声だと振り返った張が見たものは京都以来の相楽左之助。
いろいろ五月蝿いこの男は張にとって見たくもない人間の中で五本の指に入る男だった。
「何や、トリ頭か。お前の顔見るとせっかくの酒もまずうなるわ、はよどっか行け。」
張は迷惑だという感情を全身から出して左之助に言ったが左之助は握った袖を離さない。
左之助にしてもここで張に会ったことは偶然であった。
舎弟の所へ顔を出した帰り、たまたま歩いていた目の前の店から張が出て来たに過ぎない。
だが張の姿を見た瞬間、左之助は張に聞きたいことを思いついたのだ。
それは武尊の事。
赤報隊で自分を可愛がってくれた副隊長を殺した犯人は武尊だと思っている左之助は何としても武尊の居所を知りたい。
武尊が神谷道場に来た時一発しか殴れなかったのは左之助にとって物足りなさすぎた。
しかもその後の攻撃を全て交わされたのは我慢がならなかった。
この間はつい頭に血が上ってしまってぶっ殺してやるぐらいの勢いだったが、一応【不殺】の剣心組の一番の組員と自負する手前、せめてブタ饅頭(谷十三)と同等にとりあえずタコ殴りにすると決めたところだった。
だが先日その件を斎藤から聞き出そうとすれば逆に斎藤から一発喰らって気を失わされ情報を聞き出せなかった。
同じ斎藤の部下ならこいつも武尊の居所を知っているんじゃねぇかと思った左之助にとっては、それを聞き出すまではすっぽんのように喰いついて離さないつもりでいた。
「いつまで袖持ってんねん、早よう放せやトリ頭。」
「やなこったい、放して欲しけりゃ一つ教えろホウキ頭。」
トリ頭がしつこいというかウザイと言うのは十分承知。
それならば早く答えて消えてもらうのが一番。
そう思った張は左之助を追い払うためにも嫌々ながら、
「何やねん、ほな早よ言え、ほんでさっさと失せい。」
と言ってやった。
「三本傷は何処に居やがる。」
(三本傷?)
いきなり誰のことなんかいと思った張だったが、知ってる顔で三本の傷があると言えば・・・はっ、と張の脳裏に武尊の顔が浮かんだ。
(何でお前ごときに武尊がそないな言われ方をせんなあかんのや!)
っと、左之助にむっときた張は答える代りに、
「トリ頭に話すことはあらへん。」
と背を向けて左之助を引きずりながらでも歩こうとした。
「オイコラ!話すんじゃなかったのか!」
「誰がお前なんかに話すかボケッ!」
「何だとホウキ!今早く言えって言ったのはお前じゃないかコラ!言うまで離してやんねぇからな!」
と、それこそすっぽんのように張の袖を握りしめた。
「・・・・。」
その時張の頭にひらめいたことがあった。
張は左之助を振り返った。
急に振り返られたうえに顔を至近距離まで近づけられてて左之助は目を一瞬点にした。
「な、何だよ・・急に・・。」
オイオイ・・間違ったら危うく口がくっついちまうだろ!と左之助が焦る距離で張はギロリと左之助を見ながら言った。
「三本傷の奴っていうのは右頬に三本傷がある奴のことだな。」
「そ、そうだぜ・・・知ってんだろ。」
左之助はいつもと違う張の様子に思わずどもってしまった。
張は数秒黙った後、
「ちょっと来いや、少しおごっちゃるさかい、その三本傷の事わいに話してぇや。」
と言った。
「あ゛?・・おごってくれんのか?」
プータローの左之助は【おごり】という言葉に弱い。
しかも今左之助がいる界隈は飲み屋街。
ひょっとしてただ酒が飲めると左之助は浮き足立った。
が、相手はなんてったって元十本刀、いまいち信用出来ねぇと左之助はふんだ。
「んなこと言って逃げるつもりだろうが、店に入るまで袖は放してやんねェからな。」
「袖でも何でも好きにせーや。とにかくこんな所で立っとんのもなんや、行くちゅうたら行くで。」
張はすぐ先の角の居酒屋へ向かった。
そしてその心中はちょっと複雑だった。
(トリ頭はわいの知らへん武尊を知っている・・いったいこいつと武尊の間に何があったんや。)
張はそれを知りたいと思った。
あの容姿で顔に傷をうけ、女には命と言われる髪を男のように短くして斎藤に雇われている。
斎藤は役に立たない者を部下に持つほど阿呆じゃない。
最初はコロシと聞いただけでも倒れそうなぐらいに顔を青くしたひ弱な武尊も、雇った斎藤も、張は理解できなかった。
役には立たない奴と思っていたのに実は射撃は名手で捜査にあたっての勘もいい。
笑った所が少し宗次郎に似ていると思っていた矢先に武尊が女と知りいつの間にか恋に落ちていた。
阿呆らしいほどの片思い。
それでも好きなもんは好きやねんと、割り切れる自分はエライと自分で思う張だった。
だがそんな好きな女の過去を張は何も知らないのだ。
いや、この間初めて知ったのは武尊には生き別れの兄がいて、その男がどえらいお宝の刀を寺に供養してくれと持ってきた事ぐらい。
・・自分の知らない事をトリ頭は知っているという事に張は少し苛立った。
ガラっと張は二件目の飲み屋の入口を開けた。
「ここやで、日本酒はいけるかトリ頭。」
「おう・・俺は何でもいけるぜ、心配すんなトリ頭。」
そうして二人は近くの机の椅子が引き、互いに向かい合って座った。