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弐拾と参(運命の夜) (斎藤・十六夜丸・市彦)
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「川路・・利良・・・・だったな。薩摩の仇の相手。」
「ああ。」
「俺が戻って来るまで新政府軍に見つからないように隠れてろよ。仇を見つけてもお前が死んでたら意味ないからな。」
フン、と十六夜丸が向こうの茂みを顎で指す。
「気を付けろよ。」
「誰に向かって言ってるんだ。今夜は殺るには良い場所良い夜だ。川路がいる可能性が高いんだろ、お前の方こそ気抜くなよ。」
クククと楽しそうに笑うと十六夜丸は闇に消えた。
十六夜丸は風のように山を駆け抜け見通しの良い場所で辺りを伺う。
夜間この山道を敗走した旧幕府軍を追っていくなら二列ぐらいに隊列を組んで行くはずだ。
満月より少し欠けた月の光が煌々を峠に差す。
木の枝が山道に所々かぶさっているが十六夜丸の目は人間の気配を逃さない。。
「見つけた。」
灯りは点けずに行軍していても錦の御旗は鈍色に浮かびあがる。
遠くとも歩兵の▲帽子も十六夜丸には十分認識可能だった。
旗の位置からこちらに近づいて来る道を十六夜丸は推測する。
先回りして襲撃によさそうな地形は・・と指を指して山沿いを見ていると何かが動いているのを見つけた。
ぐっと目を凝らしていると、どうやら傷を負った仲間を抱えて進んでいるようだった。
(旧幕府軍の敗走兵か。・・そこは邪魔だ!)
その場所で交戦になってはちょと不都合だと、
もう少し急かしてやろう、そう思い十六夜丸は敗走中の列に近寄って声をかけた。
「聞け、俺は敵ではない。むしろ薩摩に恨みがある者だ。新政府軍の奴らが追って来ている。邪魔だから敗走する速度をあげてもらいたい。」
話しの内容がどうであれ、邪魔だと突然言われたら捨て置けないのが武士のメンツ。更に『敗走』と言われれば頭に血が上るのも無理はない。
「おのれ!我らのどこが敗走だというのか!無礼者め!」
たちまち数人に十六夜丸は囲まれた。
「やれやれ。折角敵さんが追いつくって親切で教えてやってるのにそういう態度とるってか。別に俺がお前らを殺ってもいいんだぜ!」
ぺろりと舌なめずりした十六夜丸の目の紅さが増す。
殺すのは簡単だが、この道を何事もなかったように死体処理するのが非常に面倒なので出来れば避けてやってもいいと思った十六夜丸はつい、
「こっちには時間がないんだ。刀から手を離せば特別に傷も見てやってもいい。」
と言ってしまった。
だが相手態度は変わるようには見えなかった。
「へぇ・・そんな傷負いの身で俺と殺る気?面白れぇ。」
一触即発。
十六夜丸が刀に手を掛けようとした正にその時、
「やれやれ、どこかで聞いた覚えのある声だと思えば・・・・。」
敗走兵の前の列の方から声がした。
(ん?)
十六夜丸にも聞き覚えのある声。
暗闇の後ろから見たことのあるシルエットが浮かぶ。
「奇遇だな。こんな所で。」
「・・・・・・狼。」
「教えろ。後どれくらいで追いつかれる。」
「このままだと、ざっと半時かな。戦えまい、こんな状況では。」
「ふん、死ぬまで戦うことだけのことよ。」
「ぬかせ!お前らの目的は容保公を守ることじゃないのか。このままだと明日には新政府軍は城下に入るぞ。・・・ん?」
斎藤以下、何を根拠にそんなことが分かる、と言いたそうな顔だったが十六夜丸自身も何故自分がそんなことを口走ったか分からず戸惑った。人間のことなどどうでもいいからだ。
体裁が悪くなって十六夜丸は付けたした。
「べ・・別に信じる信じないはそっちの勝手だ。こんな所でもたもたしてる場合じゃないと思うぜ。死ぬかどくかどっちかだ、さ、どうする。」
十六夜丸は斎藤を注視した。
斎藤が刀に手を掛けた瞬間答えが決まる。
「ああ。」
「俺が戻って来るまで新政府軍に見つからないように隠れてろよ。仇を見つけてもお前が死んでたら意味ないからな。」
フン、と十六夜丸が向こうの茂みを顎で指す。
「気を付けろよ。」
「誰に向かって言ってるんだ。今夜は殺るには良い場所良い夜だ。川路がいる可能性が高いんだろ、お前の方こそ気抜くなよ。」
クククと楽しそうに笑うと十六夜丸は闇に消えた。
十六夜丸は風のように山を駆け抜け見通しの良い場所で辺りを伺う。
夜間この山道を敗走した旧幕府軍を追っていくなら二列ぐらいに隊列を組んで行くはずだ。
満月より少し欠けた月の光が煌々を峠に差す。
木の枝が山道に所々かぶさっているが十六夜丸の目は人間の気配を逃さない。。
「見つけた。」
灯りは点けずに行軍していても錦の御旗は鈍色に浮かびあがる。
遠くとも歩兵の▲帽子も十六夜丸には十分認識可能だった。
旗の位置からこちらに近づいて来る道を十六夜丸は推測する。
先回りして襲撃によさそうな地形は・・と指を指して山沿いを見ていると何かが動いているのを見つけた。
ぐっと目を凝らしていると、どうやら傷を負った仲間を抱えて進んでいるようだった。
(旧幕府軍の敗走兵か。・・そこは邪魔だ!)
その場所で交戦になってはちょと不都合だと、
もう少し急かしてやろう、そう思い十六夜丸は敗走中の列に近寄って声をかけた。
「聞け、俺は敵ではない。むしろ薩摩に恨みがある者だ。新政府軍の奴らが追って来ている。邪魔だから敗走する速度をあげてもらいたい。」
話しの内容がどうであれ、邪魔だと突然言われたら捨て置けないのが武士のメンツ。更に『敗走』と言われれば頭に血が上るのも無理はない。
「おのれ!我らのどこが敗走だというのか!無礼者め!」
たちまち数人に十六夜丸は囲まれた。
「やれやれ。折角敵さんが追いつくって親切で教えてやってるのにそういう態度とるってか。別に俺がお前らを殺ってもいいんだぜ!」
ぺろりと舌なめずりした十六夜丸の目の紅さが増す。
殺すのは簡単だが、この道を何事もなかったように死体処理するのが非常に面倒なので出来れば避けてやってもいいと思った十六夜丸はつい、
「こっちには時間がないんだ。刀から手を離せば特別に傷も見てやってもいい。」
と言ってしまった。
だが相手態度は変わるようには見えなかった。
「へぇ・・そんな傷負いの身で俺と殺る気?面白れぇ。」
一触即発。
十六夜丸が刀に手を掛けようとした正にその時、
「やれやれ、どこかで聞いた覚えのある声だと思えば・・・・。」
敗走兵の前の列の方から声がした。
(ん?)
十六夜丸にも聞き覚えのある声。
暗闇の後ろから見たことのあるシルエットが浮かぶ。
「奇遇だな。こんな所で。」
「・・・・・・狼。」
「教えろ。後どれくらいで追いつかれる。」
「このままだと、ざっと半時かな。戦えまい、こんな状況では。」
「ふん、死ぬまで戦うことだけのことよ。」
「ぬかせ!お前らの目的は容保公を守ることじゃないのか。このままだと明日には新政府軍は城下に入るぞ。・・・ん?」
斎藤以下、何を根拠にそんなことが分かる、と言いたそうな顔だったが十六夜丸自身も何故自分がそんなことを口走ったか分からず戸惑った。人間のことなどどうでもいいからだ。
体裁が悪くなって十六夜丸は付けたした。
「べ・・別に信じる信じないはそっちの勝手だ。こんな所でもたもたしてる場合じゃないと思うぜ。死ぬかどくかどっちかだ、さ、どうする。」
十六夜丸は斎藤を注視した。
斎藤が刀に手を掛けた瞬間答えが決まる。