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弐拾と弐(終焉に向かって) (兄・夢主・十六夜丸)
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嵐山の庵に隠れてしばらくは、蘭丸の夕餉に眠り薬を入れ、寝入った後に密かに薬を飲ませて何度か十六夜丸にさせていた市彦も、流石に気付かれそうでやり方を変えなければと思っていた。
そんなことをしていたことがばれたら激怒した蘭丸にここを出て行かれるか断固として薬を飲まないだろう。
一生縄で手足を縛って、口に猿ぐつわをかませて自害しないようにしてここに縛り付けておき、薬は漏斗で流し込み・・。
などと、本気で考えたこともあったが苦痛に歪むであろう蘭丸の顔が最愛の妹と重なり、それは出来ないでいた。
逆に蘭子と同じ顔で喜び、同じ声で自分を呼び、普段の些細な仕草が市彦にとってどれほど心の支えになっているかわからない。
だからこの女を絶対に失うわけにはいかない。
そう思った頃、市彦は一番知りたかった情報を手に入れることが出来た。
それは自分達を不幸に陥れた人物の名前。
何よりも蘭子をあのように死なせてしまった原因となる男の名前が分かったのだ。
その男をこの手でこの世から葬り去る!
その為に十六夜丸の力は市彦にとって今は絶対必要なのだ。
だから市彦は意を固め、蘭丸に薬を飲んでもらうように頼むことにした。
長月、中秋の名月が夜空に輝く。
お月見団子を縁側に蘭丸は月を眺めていた。
「蘭子、話がある。」
「ん?なあに。」
蘭丸は軽く返事をしてみたが市彦の口調は重かったので十六夜丸に関係する話だろうとは察した。
「俺達の父を死に追いやった奴の名前が判った。その者の居場所、行動を探ってもらいたい。そのために十六夜丸の力が必要なのだ。相手に傷を負わせるのはこちらが窮地に立った時だけだ。」
「居場所が分かったら・・どうするの?」
「仇を取る。俺はそれだけの為に生きている。」
『仇討ちなんてしたってお父さん、喜ばないよ。』と言おうとしたが侍の仇討は許されてるんだったっけ?と昔見たテレビの時代劇が言っていたことが頭を過り、説得できる理屈が蘭丸には思いつかない。
親もなく、家にも住めなくなって兄妹と鷹でずっと支え合って苦労して生きてきたんだ。仇を討ちたいという気持ちは分からないわけではない・・。まして鷹はもう帰っては来ない。
蘭丸は折れた。
毎日遅くまで情報を手に入れようと歩き回っている兄をこれ以上精神的に追い詰めるわけにはいかなかった。
「・・十六夜丸を使っての”殺し”は駄目だからね。約束してくれるなら少しだけ協力する。仇の名前は?」
「川路利良 。」
川路の名を告げた後、市彦は月を見上げほくそ笑んだ。まさかこんなに簡単に承知してくれるとは。
だからと言って今更後には引けない市彦だった。
十六夜丸は市彦の命により情報収集ではなく斬殺も実行した。
すべては川路を討ち取る為に。
”十六夜丸”という名前。
それはいつの間にか薩摩藩士にとって恐怖の対象となった。
京都においては、姿を見た者で生き残ったのは抜刀斎によって守られたときの者だけだった。
にもかかわらず薩摩藩士が襲われ死んだ時には十六夜丸の所為にされ、その名前だけが一人歩きをするようになっていた。
そんなことをしていたことがばれたら激怒した蘭丸にここを出て行かれるか断固として薬を飲まないだろう。
一生縄で手足を縛って、口に猿ぐつわをかませて自害しないようにしてここに縛り付けておき、薬は漏斗で流し込み・・。
などと、本気で考えたこともあったが苦痛に歪むであろう蘭丸の顔が最愛の妹と重なり、それは出来ないでいた。
逆に蘭子と同じ顔で喜び、同じ声で自分を呼び、普段の些細な仕草が市彦にとってどれほど心の支えになっているかわからない。
だからこの女を絶対に失うわけにはいかない。
そう思った頃、市彦は一番知りたかった情報を手に入れることが出来た。
それは自分達を不幸に陥れた人物の名前。
何よりも蘭子をあのように死なせてしまった原因となる男の名前が分かったのだ。
その男をこの手でこの世から葬り去る!
その為に十六夜丸の力は市彦にとって今は絶対必要なのだ。
だから市彦は意を固め、蘭丸に薬を飲んでもらうように頼むことにした。
長月、中秋の名月が夜空に輝く。
お月見団子を縁側に蘭丸は月を眺めていた。
「蘭子、話がある。」
「ん?なあに。」
蘭丸は軽く返事をしてみたが市彦の口調は重かったので十六夜丸に関係する話だろうとは察した。
「俺達の父を死に追いやった奴の名前が判った。その者の居場所、行動を探ってもらいたい。そのために十六夜丸の力が必要なのだ。相手に傷を負わせるのはこちらが窮地に立った時だけだ。」
「居場所が分かったら・・どうするの?」
「仇を取る。俺はそれだけの為に生きている。」
『仇討ちなんてしたってお父さん、喜ばないよ。』と言おうとしたが侍の仇討は許されてるんだったっけ?と昔見たテレビの時代劇が言っていたことが頭を過り、説得できる理屈が蘭丸には思いつかない。
親もなく、家にも住めなくなって兄妹と鷹でずっと支え合って苦労して生きてきたんだ。仇を討ちたいという気持ちは分からないわけではない・・。まして鷹はもう帰っては来ない。
蘭丸は折れた。
毎日遅くまで情報を手に入れようと歩き回っている兄をこれ以上精神的に追い詰めるわけにはいかなかった。
「・・十六夜丸を使っての”殺し”は駄目だからね。約束してくれるなら少しだけ協力する。仇の名前は?」
「
川路の名を告げた後、市彦は月を見上げほくそ笑んだ。まさかこんなに簡単に承知してくれるとは。
だからと言って今更後には引けない市彦だった。
十六夜丸は市彦の命により情報収集ではなく斬殺も実行した。
すべては川路を討ち取る為に。
”十六夜丸”という名前。
それはいつの間にか薩摩藩士にとって恐怖の対象となった。
京都においては、姿を見た者で生き残ったのは抜刀斎によって守られたときの者だけだった。
にもかかわらず薩摩藩士が襲われ死んだ時には十六夜丸の所為にされ、その名前だけが一人歩きをするようになっていた。