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拾と九(接触者) (斎藤・沖田・土方・従者)

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新月まで後一日。







観光がてらは八坂神社周辺を散策し山崎おすすめの甘味を食べ、・・蘭丸が屯所に戻って来たのは夕方だった。




折角頂いた自由時間なのに楽しめない。



歩きながらも甘味を食べながらも、鷹から手渡された紙の『逃げろ』という言葉が頭から離れない。



もう一つ、懐に忍ばせた紙の方も見たかったのだがどうも途中から『嫌な感じ』を感じてそれが気になって仕方がなかった。




何というか、まとわりつく視線というか、、、




(もしかして『監視』されてる?)




という感覚を覚えた蘭丸は途中で懐から紙を取り出すことが出来なかったのだ。




(そろそろ逃げた方がいいのかもしれない・・けれど何処へ?)




素性も分からず、顔に傷があり、一文無しの読み書き出来ない人間を誰がまともにかくまってくれるのか。




行くとしたら兄、市彦の所しかないように思うのだがどうやって?


その手掛かりがもう一枚の紙にあるような気がするのだが・・



悩んでいる間に日が傾く。




『夜の京都は物騒だ。』と言った兄の言葉が思い出される。



屋台をやってそれは実感できることだった。



夜灯りがあるのは花街か一部の飯処ぐらい。



夜はそんな店の近く、お客が通りそうな所を狙って屋台を出すのだがその大抵の客は飲んだ後の締めか、辻君(個人の街娼、江戸では夜鷹)を買う男、そして浪人や何処かの侍。



逆に人が通らない一本裏道はへ入れば真っ暗で灯りは提灯か星明りしかない。いつ妖怪がでてもおかしくない雰囲気だ。



だから仕事終わりは必ず山崎が蘭丸を門まで送ってくれる。(朝は山崎が門まで迎えに来てくれる)




帰ってきたくない屯所だがこの嫌な視線から逃れるには屯所に戻るしかないということもあり戻って来たのだ。



だけど屯所の敷地に入ると何故か胸騒ぎがする。



蘭丸は土方へ報告に行く前に厠へ行き、用を足すついでにあの紙を出して素早く開いた。




(ここならちょっとの間なら安心だ。って・・ん?)







《新し山棘付京狸》




と、書いてある。






(ん????何だこれ?あたらしやまとげつききょうだぬき?)






鷹の『落ち合いましょう。』という話から落ち合う場所が書いてあるものだと思ったのに、新しい山の狸がどうかしたのか。






『謎』である。





しかし厠で長居をするわけにいかない。


この紙もちぎって下に捨ても万が一拾われたらまずい。(う●こまみれの紙を想像したくもない)



水場行って、水と一緒に飲み込もう。





和紙と墨だし、、、大丈夫だよね?





外出帰りの隊士が水を飲んだり洗濯に使う水をくむための井戸がある。



そこへ行き、握りしめて飴サイズにした紙と水を飲み込む。





喉の奥を湿らせても硬い物体が喉の奥で引っかかる。



それでも気合でゴクンと無理やり飲み込んだ。





「ふぅ。」





一安心。





では気が進まないけど副長に報告に行かないと、と思っていると背後から誰かが走ってくる。






振り返ると沖田だった。






「蘭丸さん!」





「沖田さん。」






沖田がそんなに慌てる様子など見たことがなかった。





「どうしたんですか?沖田さん、そんなに慌てて。」



「蘭丸さん、こっちに来ちゃだめですよ、さあ、戻りましょう。」



「どうしてです・・・。」


-----か?






と言おうとした矢先、何処からか物凄い悲鳴が聞こえた。



「何?」



蘭丸は声のした方を振り返った。


誰か隊士が稽古で骨でも折ったんじゃないかと思ったがその方向には訓練場も広場もない。



しかしあのただならぬ声を聞いたらに助けに行かないわけにはいかない、と思ったと同時に蘭丸は駆け出していた。




「あ、蘭丸さん!」



沖田が腕を伸ばすが全然届く距離ではない。




「蘭丸さん、そっちはダメだって!あ~~~、土方さんに怒られる~。」






ぼやきつつ沖田は全力で追いかけた。









(声の出所はここか?)






と思う所に目立たない小さな小屋があった。








「大丈夫?!」





声をかけながらガラッっと戸を開けると、中に土方がいたのを確認したが、それよりも蘭丸の視線を釘付けにしたのは、中央で両手を開いた状態でつるされて両手の甲に五寸釘を打たれた----男だった。
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