白いマントを着たその男はその日も酒を仕入れて帰る途中だった。

いつもと同じ夕暮れに帰路についたのに急に厚い雲に覆われ暗くなった山道。

稲妻こそ走りはしてないがあちこちで放電しており、空が明るくなるたびに森が白くそして黒くを繰り返していた。


「まったく妙な天気だな。こんなのは初めてだ。」


やれやれと思いつつ酒が早く飲みたいので少し早めに歩きだしたその時、顔がチリッっとしびれるような感じを覚えたと同時に目の前に閃光が－－－－


「・・・・っ！」








ドサッ




何かが落ちた音がした。
瞬間くらった目くらましから解放されると足元に何かがあった。


（人・・・・か？）


っと思ったのはあまりにも身に着けている物が見たこともない物だったからだ。
そんな輩が瞬間自分を見た、ような気がした。

が、そいつはすぐに目を閉じていった。


「おいっ！」


呼びかけてみたが返事はない。
なんだこいつは。と、思っていた矢先、そいつが着ているものがスーっと消えていった。


「・・・！」


身に着けていた物が目の前で消えるなど摩訶不思議な事が起こり得るなどとても信じられなく、しかも、それが女などととは・・・・・・・・・・



だが突然目の前にふってわいたとしてもこの女、自分には全く関係がないと白いマントの男ははそのまま通り過ぎた。

が、２、３歩過ぎて立ち止まった。

はっきり言ってこの御時世、行き倒れをみんな助けていては自分が何人いても足らない。

置いていきたい気がなかったといえば嘘になる。だが少し気まずくもあった。

何より飛天御剣流の理は目の前の苦しんでいる人を助けること・・・・・


そしてそれ以上に一瞬だけお互いの瞳が合ったその印象が心の底にひっかかってた。


立ち止っている間に空は雷鳴と稲妻をつれて暴れだした。

大粒の雨が地面を叩く。

白いマントの男の前髪からも見る間に水滴が滴り始める。



「ちっ、面倒なことはごめんなんだが・・・」


つぶやきつつも女を肩に担ぐと家に向かった。


「天気がよくなったら口入屋にでも聞いてやるか。」


面倒事には関わりたくないと自分に言い聞かせるように言うのだった。