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拾と弐(倒れこんだ所は) (斎藤)
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だが、斎藤に手首を掴まれてる為、前方に身体はつんのめる。
蘭丸の身体は声に反応し振り返った斎藤の半身にぶつかりった。
斎藤は反射的に蘭丸を反対の腕で抱くようにホールドした同時に天蓋がガサっと畳に落ちる音。
結果、斎藤の胸の中に収まる形となった。
「ちゃんと前を見て歩け、阿呆。」
「ええと・・。」
こんなに無防備に誰かの間合いに・・入るなんて。
自分のドジが発端とはいえ、人生初のこの状況に蘭丸の思考は完全停止していた。
不安定な体勢を整えようと蘭丸をホールドしていた斎藤の手が蘭丸の背中を滑ったとたん、蘭丸はビクンと両肩をすぼませて震えた。
その反応に斎藤は瞬時にある仮説が立った。
(・・まさか!?)
斎藤は掴んだ手首を吊り上げると蘭丸の背中をぐっと自分に押し付け蘭丸の顔をじっと見た。
「ちょっと。」
急に吊り上げられ、しかも密着させられそうになっている自分の身体をそうはさせじと仰け反らせてながら斎藤を睨む。
斎藤は蘭丸の睨みなど構いもせずに目で蘭丸の瞳の奥を探り、背に回した手の指で蘭丸の身体の情報を探る。
身体の線、柔らかさ。
探るような微かな指の動きにビクついて答える身体。
歯を食いしばってその感覚を耐えているのであろうが全力で目力で応戦しようとしているのが健気だ。
手首もそうだ。細すぎる、それに筋肉のない柔らかい腕。
斎藤はそのまま蘭丸の背中を抱え込むと吊り上げていた手を放しそのまま蘭丸の頬に触れた。
きめの細かなもち肌だ。
男にはない感触だ。
蘭丸は自由になる片手で頬に触れている斎藤の手を引き離そうとするが全く動かない。
「何を・・!」
抵抗できるのは声だけだ。
怯えと怒りと恥じらいの混ざった良いセリフだと思った通りの言葉に
「別に。何も。」
余裕綽々と斎藤は言葉を返した。
「お前もしかして感じているのか?」
その質問にカッと顔を真っ赤にして
「感じてなんかない!」
と更に強く自分を睨んでくる。
意地悪な質問だと分かっていても見たかった予想どうりのその表情。
まるで手の中でもがく小鳥のようだ。
どんな風に可愛がれば良い声で鳴くのだろう。
だがいじめるのはそれぐらいだと・・いやこれからか?
「座れ。」
と、斎藤はその場に胡坐をかいた。
もちろん蘭丸も強制に膝をつかされた。
背中に回された腕を放してもらえなかったのでそのまま顔を斎藤の懐に密着させられる形で・・。
これ以上倒れ込まないように両手で畳の上で踏ん張る。
ここで背中の圧力に負けたら顔は・・
この股間の辺りに不時着だ。必死の抵抗だ。
「何をしている。」
「・・何をって、あんたが私にこんな格好をさせてるんじゃないか!!腕をどけろ!」
「逃げないと約束するならな。」
っと斎藤は更に自分の腕に力をいれる。と言ってもこんなのは力を入れているうちには入らないぐらいなのだが。
やばいやばいやばい・・
「分かった!分かったから!腕を放して!!」
斎藤はひょいと腕をのけると蘭丸はそのまま這って向こうへ行こうとしたので、
「おい、逃げないんだろ。」
と斎藤は蘭丸の後ろ帯を掴み引き戻した。
「あっ。」
蘭丸はあっという間に斎藤の胡坐の中に引き戻された。
自分の背中がドンと斎藤に当たった。
不意な姿勢に自分の身体が固まっていく。
「・・・。」
同じ部屋の隅にいることもかなわないのか。これじゃ、全く逃げられないや。いや、確かに逃げないっていったけど・・。
背中がこれだけ他人と近いなんて居心地が悪い。
最終手段は声の方向へ頭突きを食らわして状況打破を図るしかないかも・・。
心でぶつぶつ独り言を言う蘭丸に斎藤は、
「そんなに固くなるな。話も出来ないだろうが。ん?」
と蘭丸を上から覗き込む。
「話?」
斎藤の口調に少しだけ緊張を解いて蘭丸も首を回して斎藤の方を少し見る。
瞳を大きくして斎藤を見つめる素直な眼差し。
あらゆる防御を突き抜け腹の奥底に何かが刺さる感じに斎藤は一瞬だけ思考を奪われた。
「・・嗚呼そうだ。」
たかが女のガキに、という動揺を消しいつもの自分に戻った斎藤は話の口火を切った。
「お前、女だろ。」
と言った瞬間蘭丸の表情がサッと変わった。
分かりやすさ満点だと斎藤は思った。
だがこんなにも分かりやすい奴なのに先程までは声変わり前の男のガキだと思っていた自分を猛省する。つまり自分はまんまと騙されていたということだ。
というか、最初の出会い(十六夜丸)を見てあれが女だと思うなと言う方が無理だと斎藤は思う。
斎藤ほどの達人になれば刀を合わせた瞬間、相手の強さはもちろん性分まで分かる。
・・あれは間違いなくかなり性格の歪んた
そして今自分の手の内にあるのが単純で小阿呆なガキの女。
この顔、この傷さえ同じでなければ誰が十六夜丸だと思うのだろうか。
緊張を取り除いてやろうと斎藤は蘭丸の髪を指ですくと蘭丸はまた肩を震わせた。
「驚いたな、髪の毛も感じるのか。」
「うるさい!」
ザワザワとした感覚が瞬時に走る。
感じる!?これが?
そう思うと恥ずかしくて顔から火を噴きそうになる。
「そう睨むな。まったくお前には驚かされる。」
斎藤はころころ変わる蘭丸が楽しくなってククっと喉で笑った。