斎藤はあきれた。


沖田と一緒に来てみれば

蘭丸はスヤスヤや寝息をたてて寝ているではないか。



「ありえん。ここを何処だと思っているんだ。」

斎藤は眉間にしわをよせて言った。


「あはは。蘭丸さんって面白い人ですね。」

沖田は楽しそうに笑った。




「どうです？間違いないですか？」


斎藤はあの夜の十六夜丸の姿を思い出していた。

（間違いない。だが昼間見たときの違和感。あれは何だったんだ。）


「おい。」

話しかけるが全く反応がない。


「おいっ！」

結構大きな声を出したのだがやはり無反応だ。


すると、何を思ったのか斎藤は蘭丸の鼻をつまんで言った。


「おい、起きろ。」


さすがに息が苦しくなったのか摘ままれた鼻が痛かったからなのか、ようやく




「ん～～。」


心地よい眠りから無理やり覚醒を強いられた。

寝ぼけた状態の蘭丸はそこがいつもと違う場所だということに気が付くのに少し時間がかかった。



「眼が違うな・・・・・・。顔は間違いなくこいつなんだが。」


「他人の空似か。ふ－ん、残念。」



「んんん・・・あれ？ここ・・・。あ、沖田さん？」

ようやく起きたらしい。


「蘭丸さん。おはようございますって言ってももう夜ですけどね。よく寝てましたね。」


私は流石に余所で思いっきり寝てたことが恥ずかしく思えて返す言葉がなかった。



「あ、こちらが斎藤さん。」


「昼間“おまえ”呼ばわりした人だ。」

うっかり思ったことが出てしまってそれを聞いた斎藤はむっとした。

例えそれがもともとの原因が斎藤自身にあったとしてもだ。



「どうかしたんですか？」

なぜ二人が覗き込むようにして自分の顔をみているのか、状況がわからずきいてみた。


「おまえ、俺を覚えているか？」


「昼間に会いましたが。」


「それ以前だ。」


「いいえ？」

私はは首を傾げた。


しぐさ言動で人の真意をある程度見抜ける二人にも蘭丸が嘘をついているようには見えなかった。