第一章 ヒーローとの出会い
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それからと言うものの、中々守沢さんと鉢合わせることがなく、月日は流れていった。プロデューサーさんに渡すマカロンも、守沢さんの好きなお菓子を聞いてから一緒に作ろうと思っていたので結局作れていない。プロデューサーさんにお礼を今度渡すと宣言している訳では無いが、未だに彼女のクッキーは頂いているため申し訳ない気持ちが膨れ上がってきている。
「もう佐賀美先生が代わりに守沢さんに好きなお菓子聞いてくれませんか」
「いやでも、話しかけるいいきっかけになると思うんだよなぁ」
「それは…そうですよね…」
だがこんなにもすれ違うものなのだろうか。(良くないことなのだが)最近は色々とごたついてしまい、そのせいで保健室へ通う頻度が増えているのだが。
「守沢最近忙しそうにしてる感じだなぁ。後輩の世話やらライブの手続きやらなんやらその他諸々で」
「あっ…そうか。守沢さんアイドルなんでしたよね」
「アイドル科だからな〜」
すっかり忘れていたが、そうなのだ。もしかしたら三年後にはテレビに引っ張りだこの超人気スーパーアイドルとして名を馳せるかもしれない。それに、本来普通科とアイドル科の生徒は交わらない。こうして今まで少しでも声を聞けたり顔を見れたりしたことは幸運中の幸運なのだ。この状況に満足しなければならない、そんな気がしてきた。
「アイドルだからって自分とは別次元の人とか思うなよ〜。守沢はどんな奴にでも優しく分け隔てなく接してくれる奴だから遠慮はするな」
「あ、ありがとうございます」
先生に心の中を読まれて動揺が隠しきれなかった。
だけれど、先生が励ましてくれたらまるで魔法が掛かったみたいに大丈夫だと思えてくる。守沢さんは優しい人だというのは既に知っている。だったらもう、迷う必要はないのだ。
「頑張ります………!」
威勢よく意気込んだ私に、先生は「よし」と頷いてくれたのだった。
▽
「近々皆さんにスピーチを書いて、発表してもらいたいと思います」
年老いた国語の教師がそう述べた瞬間、頭に電気が流れたように激痛が走った。ジリジリと痛みが増してくる。やがて、ドリルで穴を掘られているような衝撃が頭の中でこだまする。
手を挙げることも出来なければ、保健室へ移動することも出来ない。
「スピーチのテーマは『将来なりたい職業・人物像』です」
腹部を鋭利なもので貫かれた感覚がした。ひどい眩暈がする。四肢と唇の震えが止まらなくて、机に額をぶつけそうになる寸前で戦っていた。
「今からプリントを配ります。話したいことを箇条書きでいいのでこのプリントにまとめてみてください」
きっと今、「何話せばいいのかな」だの「俺将来はバイトリーダーだわ」だの「特に何も無いんだけどなぁ」だのざわついているのだろうが、一切耳に入ってこない。前の席の人がプリント回し、机の上に置いた。私の様子がいつもと違うと思っていないのだろう。痛がってるのだろうが、いつものことだ。今更特別心配する必要などないと判断しているに違いない。
「す、すみませ…」
なんとか手を挙げられた。ざわつきが止み、皆がこちらを向いてからまた騒がしくなる。
「大丈夫ですか…?付き添いますよ」
「や、大丈夫です。一人で行けます…」
教師の言葉を振り払い、私は静かに教室を出た。いつもよりひどい症状だったからか、サボりだのなんだのヤジは飛んでこなかった。
最悪なことになってしまった。しばらくは教室にいけるかえ不安である。
あの教師がテーマを発表した時、私のトラウマとこうなってしまった元凶が思い出された。独断の偏見で語られて、数で押さえつけて、理不尽な理論でねじ伏せられた。自分の信じるものを誰も信じてくれなくて、何もかもへの自信を失ってしまった。貫き通す勇気すらも失せてしまった。
「…っ」
佐賀美先生から許可されている教師玄関からアイドル科へと足を踏み入れる。
足がガクガクと震え、今にも崩れ落ちそうだ。壁に寄りかかりながら必死に保健室を目指す。
『気持ち悪い』私を指さし嘲笑う声が頭の中に響く。大丈夫、大丈夫。大丈夫なんだ。
「………っ、…!」
今はもう、何も怖くないんだ。私には信じることが出来る相手がいるのだから。誰にも受け入れられないことなんてない。
佐賀美先生は受け入れてくれた。それも一人の個性だと。というか、それがどうして侮辱されなければならないのかと疑問を抱いていたくらいだ。だからきっと、守沢さんも………。
『申し訳ないのだが、それは引く。寒気がした。』
大丈夫。私を、受け入れてくれる。
『もう俺と関わろうとしないでくれ』
鈍い音がすぐ近くで聞こえた。
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それからと言うものの、中々守沢さんと鉢合わせることがなく、月日は流れていった。プロデューサーさんに渡すマカロンも、守沢さんの好きなお菓子を聞いてから一緒に作ろうと思っていたので結局作れていない。プロデューサーさんにお礼を今度渡すと宣言している訳では無いが、未だに彼女のクッキーは頂いているため申し訳ない気持ちが膨れ上がってきている。
「もう佐賀美先生が代わりに守沢さんに好きなお菓子聞いてくれませんか」
「いやでも、話しかけるいいきっかけになると思うんだよなぁ」
「それは…そうですよね…」
だがこんなにもすれ違うものなのだろうか。(良くないことなのだが)最近は色々とごたついてしまい、そのせいで保健室へ通う頻度が増えているのだが。
「守沢最近忙しそうにしてる感じだなぁ。後輩の世話やらライブの手続きやらなんやらその他諸々で」
「あっ…そうか。守沢さんアイドルなんでしたよね」
「アイドル科だからな〜」
すっかり忘れていたが、そうなのだ。もしかしたら三年後にはテレビに引っ張りだこの超人気スーパーアイドルとして名を馳せるかもしれない。それに、本来普通科とアイドル科の生徒は交わらない。こうして今まで少しでも声を聞けたり顔を見れたりしたことは幸運中の幸運なのだ。この状況に満足しなければならない、そんな気がしてきた。
「アイドルだからって自分とは別次元の人とか思うなよ〜。守沢はどんな奴にでも優しく分け隔てなく接してくれる奴だから遠慮はするな」
「あ、ありがとうございます」
先生に心の中を読まれて動揺が隠しきれなかった。
だけれど、先生が励ましてくれたらまるで魔法が掛かったみたいに大丈夫だと思えてくる。守沢さんは優しい人だというのは既に知っている。だったらもう、迷う必要はないのだ。
「頑張ります………!」
威勢よく意気込んだ私に、先生は「よし」と頷いてくれたのだった。
▽
「近々皆さんにスピーチを書いて、発表してもらいたいと思います」
年老いた国語の教師がそう述べた瞬間、頭に電気が流れたように激痛が走った。ジリジリと痛みが増してくる。やがて、ドリルで穴を掘られているような衝撃が頭の中でこだまする。
手を挙げることも出来なければ、保健室へ移動することも出来ない。
「スピーチのテーマは『将来なりたい職業・人物像』です」
腹部を鋭利なもので貫かれた感覚がした。ひどい眩暈がする。四肢と唇の震えが止まらなくて、机に額をぶつけそうになる寸前で戦っていた。
「今からプリントを配ります。話したいことを箇条書きでいいのでこのプリントにまとめてみてください」
きっと今、「何話せばいいのかな」だの「俺将来はバイトリーダーだわ」だの「特に何も無いんだけどなぁ」だのざわついているのだろうが、一切耳に入ってこない。前の席の人がプリント回し、机の上に置いた。私の様子がいつもと違うと思っていないのだろう。痛がってるのだろうが、いつものことだ。今更特別心配する必要などないと判断しているに違いない。
「す、すみませ…」
なんとか手を挙げられた。ざわつきが止み、皆がこちらを向いてからまた騒がしくなる。
「大丈夫ですか…?付き添いますよ」
「や、大丈夫です。一人で行けます…」
教師の言葉を振り払い、私は静かに教室を出た。いつもよりひどい症状だったからか、サボりだのなんだのヤジは飛んでこなかった。
最悪なことになってしまった。しばらくは教室にいけるかえ不安である。
あの教師がテーマを発表した時、私のトラウマとこうなってしまった元凶が思い出された。独断の偏見で語られて、数で押さえつけて、理不尽な理論でねじ伏せられた。自分の信じるものを誰も信じてくれなくて、何もかもへの自信を失ってしまった。貫き通す勇気すらも失せてしまった。
「…っ」
佐賀美先生から許可されている教師玄関からアイドル科へと足を踏み入れる。
足がガクガクと震え、今にも崩れ落ちそうだ。壁に寄りかかりながら必死に保健室を目指す。
『気持ち悪い』私を指さし嘲笑う声が頭の中に響く。大丈夫、大丈夫。大丈夫なんだ。
「………っ、…!」
今はもう、何も怖くないんだ。私には信じることが出来る相手がいるのだから。誰にも受け入れられないことなんてない。
佐賀美先生は受け入れてくれた。それも一人の個性だと。というか、それがどうして侮辱されなければならないのかと疑問を抱いていたくらいだ。だからきっと、守沢さんも………。
『申し訳ないのだが、それは引く。寒気がした。』
大丈夫。私を、受け入れてくれる。
『もう俺と関わろうとしないでくれ』
鈍い音がすぐ近くで聞こえた。
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