第一章 ヒーローとの出会い
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それから三日、できるだけ保健室に来るようにしていたが守沢さんが現れることはなかった。保健室の常連とはいえ、それほどまでに通いつめるほどでもないのだろう。
「守沢さん来ないですね…」
「まあお前と同じで常連ではあるけど来る頻度は不定期だからな。」
たしかに、私も水曜日の三時間目後に必ず来るという訳ではない。ここは首を長くして気長に待つしかないのだろう。
…あ、そういえば。と思い出したことを口にする。
「プロデューサーさんの好み聞いてくれました?」
「ああ、でも手作りならなんでもいいですよとか言ってたからお菓子に絞ってみたんだけど、最近はマカロンが好きって言ってたなぁ」
「マカロンですか…頑張れば作れますかね?」
「さあ?俺はお菓子なんて作らないからなぁ。検索してみれば簡単なレシピぐらい見つかると思う」
じゃあ次までにマカロン作ってきますね、と先生と約束をした。「俺があいつに渡しとくから安心しろ」とのこと。大変有難い。お菓子作りはバレンタインチョコを数年前に作ったくらいだが、レシピを見ながらならお礼としてそれ相応のものは作れるのではないだろうか。プロデューサーさんにはきっと及ばないけれど。
「守沢さんの好きなお菓子って何なんでしょうか?」
「それは俺にも分からん。守沢に聞け」
「………佐賀美先生、俺の名前を呼びましたか?」
申し訳程度のノックの後に、扉が控えめに開く音がした。ビクッと肩が震える。守沢さんと話して、受け入れてもらいたい。その願望を口にして初めてお目にかかる。( カーテンは閉まっていて顔は見れていないが )
「あれ、聞こえてたか?」
「はい。すみません、つい気になってしまって…」
「言えないことなら無理に言及はしませんけど…?」と言った守沢さんが静かにこちらを向いた気がした。「あそこの方が何か…?」きっと佐賀美先生の視線を追ったのだろうなと思う、自分自身で頑張るとは言ったもののやはりこういう助け舟は有難い。
しかし、手が震える。きっとここでカーテンの裏から出てきて、挨拶をするべきなのだろうが。勇気が出ない。右手が震える。左手で右手首の震えを抑える。この状況、数日前のあの時と似ている。あの時は勇気が出なくて結局何も出来なかった。きっと、今は違う。きっと。
「………」
カーテンを一センチほど右にずらす。守沢さんの綺麗な顔がこの目にしっかりと焼き付いた。想定したよりもずっと整っている顔立ちで熱血さと優しさが身に染みた。
「…?」
守沢さんが首を傾げている。佐賀美先生の顔は、もう少し私が移動しないと見えないようだ。
口を開く。何か。何か言うんだ。挨拶でもいい。できることなら好きなお菓子を聞いて、プロデューサーさんの分と一緒に作るんだ。
「っ…」
言葉が出ない。言葉が喉の奥でつっかえている。吐息しか吐くことができない。私は何故、緊張した時に何も出来ないのだろう。頭痛がして、軽い眩暈を起こす。言葉を発することが出来ない。そう自覚してしまって、カーテンを閉めようとする。
「えっと…」
保健室で寝ている人には熱い挨拶などしたくてもできないのだろう。初めて聞いた守沢さんとは違う態度に不安に落ちる。大丈夫、大丈夫だから。せめて、お辞儀だけでも……っ!
「…っ!」
勢いよくお辞儀をしてカーテンを閉める。頭痛が再発して、ベッドに倒れ込んだ。
「あの人が俺のことを話してたんですか?」
「あー、それは本人に聞け」
あくまで私と守沢さんの関わりを作ってくれている。そう思うと、少しだけ落ち着いた。守沢さんの顔を見てしまったせいで、衝撃と緊張感が何割増しかに膨れ上がってそれに耐えきれなかった。
「すみません、保健室で寝ている人でしたので普段の挨拶をしていいのか分からなくて…」
「そっか。まああいつは喜ぶと思うぞ」
「分かりました。次に会った時は普段の感じでいきます!あの人も雰囲気の違う俺を見て困惑していたようですし…」
まるで守沢さんに非があるという言い方だ。何もかも非があるのは私の方なのに。
やはり私は、守沢さんを信用したい。期待したい。きっと私のことを受け入れてくれると。
声をかけるのには失敗したが、私の胸は嬉しさで溢れかえっていた。
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それから三日、できるだけ保健室に来るようにしていたが守沢さんが現れることはなかった。保健室の常連とはいえ、それほどまでに通いつめるほどでもないのだろう。
「守沢さん来ないですね…」
「まあお前と同じで常連ではあるけど来る頻度は不定期だからな。」
たしかに、私も水曜日の三時間目後に必ず来るという訳ではない。ここは首を長くして気長に待つしかないのだろう。
…あ、そういえば。と思い出したことを口にする。
「プロデューサーさんの好み聞いてくれました?」
「ああ、でも手作りならなんでもいいですよとか言ってたからお菓子に絞ってみたんだけど、最近はマカロンが好きって言ってたなぁ」
「マカロンですか…頑張れば作れますかね?」
「さあ?俺はお菓子なんて作らないからなぁ。検索してみれば簡単なレシピぐらい見つかると思う」
じゃあ次までにマカロン作ってきますね、と先生と約束をした。「俺があいつに渡しとくから安心しろ」とのこと。大変有難い。お菓子作りはバレンタインチョコを数年前に作ったくらいだが、レシピを見ながらならお礼としてそれ相応のものは作れるのではないだろうか。プロデューサーさんにはきっと及ばないけれど。
「守沢さんの好きなお菓子って何なんでしょうか?」
「それは俺にも分からん。守沢に聞け」
「………佐賀美先生、俺の名前を呼びましたか?」
申し訳程度のノックの後に、扉が控えめに開く音がした。ビクッと肩が震える。守沢さんと話して、受け入れてもらいたい。その願望を口にして初めてお目にかかる。( カーテンは閉まっていて顔は見れていないが )
「あれ、聞こえてたか?」
「はい。すみません、つい気になってしまって…」
「言えないことなら無理に言及はしませんけど…?」と言った守沢さんが静かにこちらを向いた気がした。「あそこの方が何か…?」きっと佐賀美先生の視線を追ったのだろうなと思う、自分自身で頑張るとは言ったもののやはりこういう助け舟は有難い。
しかし、手が震える。きっとここでカーテンの裏から出てきて、挨拶をするべきなのだろうが。勇気が出ない。右手が震える。左手で右手首の震えを抑える。この状況、数日前のあの時と似ている。あの時は勇気が出なくて結局何も出来なかった。きっと、今は違う。きっと。
「………」
カーテンを一センチほど右にずらす。守沢さんの綺麗な顔がこの目にしっかりと焼き付いた。想定したよりもずっと整っている顔立ちで熱血さと優しさが身に染みた。
「…?」
守沢さんが首を傾げている。佐賀美先生の顔は、もう少し私が移動しないと見えないようだ。
口を開く。何か。何か言うんだ。挨拶でもいい。できることなら好きなお菓子を聞いて、プロデューサーさんの分と一緒に作るんだ。
「っ…」
言葉が出ない。言葉が喉の奥でつっかえている。吐息しか吐くことができない。私は何故、緊張した時に何も出来ないのだろう。頭痛がして、軽い眩暈を起こす。言葉を発することが出来ない。そう自覚してしまって、カーテンを閉めようとする。
「えっと…」
保健室で寝ている人には熱い挨拶などしたくてもできないのだろう。初めて聞いた守沢さんとは違う態度に不安に落ちる。大丈夫、大丈夫だから。せめて、お辞儀だけでも……っ!
「…っ!」
勢いよくお辞儀をしてカーテンを閉める。頭痛が再発して、ベッドに倒れ込んだ。
「あの人が俺のことを話してたんですか?」
「あー、それは本人に聞け」
あくまで私と守沢さんの関わりを作ってくれている。そう思うと、少しだけ落ち着いた。守沢さんの顔を見てしまったせいで、衝撃と緊張感が何割増しかに膨れ上がってそれに耐えきれなかった。
「すみません、保健室で寝ている人でしたので普段の挨拶をしていいのか分からなくて…」
「そっか。まああいつは喜ぶと思うぞ」
「分かりました。次に会った時は普段の感じでいきます!あの人も雰囲気の違う俺を見て困惑していたようですし…」
まるで守沢さんに非があるという言い方だ。何もかも非があるのは私の方なのに。
やはり私は、守沢さんを信用したい。期待したい。きっと私のことを受け入れてくれると。
声をかけるのには失敗したが、私の胸は嬉しさで溢れかえっていた。
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