第一章 ヒーローとの出会い
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しばらく布団に潜り込みながら、佐賀美先生と守沢さんの会話を流し聞きしていたのだが、怪我の処置が終わったのか先生が腿を叩く音がした。治療が終わり、大事にしとけよ、という合図だ。
「ありがとうございます!」
「次の授業まで時間ないから急げよー、無理しない程度にな」
「了解しました!!」
守沢さんが走っていくかと思いきや、きちんと扉を閉めてから走り出したのを音で察知したあと、もう一度体を起こす。
私は何故、顔も見たことがない相手を信じられる信じられないなどと推し量っているのだろう。そんなことをできるほど、私は偉くないのに。
「あんず大丈夫かー守沢うるさくなかったか」
「い、いえ…ただ、今まで遭遇した人たちとは違う気がして。驚きました」
私と同じような人達が訪れていた保健室に、私とは全く違う、憧れた姿があった。先程、彼を推し量ろうとしていたのは、私がそれほどまでに人を信じることが出来なくなっていたのもあるけれど一抹の嫉妬があったのも間違いない。
「守沢さんは特撮が好きなんですか?」
「ああ、それで正義のヒーロー云々言ってるわけだ」
なるほど、と考える人のポーズ。
「あんずが他人に興味を抱くのなんて珍しいな」
「…えっ?」
「ああいや、お前普段は他人に興味を抱く以前に存在すらしてほしくないって感じだったからなぁ」
自覚はあった。確かに、いつの間にか周りの人への酷い偏見ができあがっていた。佐賀美先生に初めて会った時も、酷いことを言った上に失礼な態度もとった。そんな私を、先生は見捨てなかった。
私が他人に興味を抱くことを、先生は嬉しく思ってくれているのだろうか?それとも、いつもと違う私に驚いて気味悪がるだろうか?
「俺はお前じゃないから100%のお前のことが分かるわけじゃないけど、それはいい変化だと思うぞ」
「いい変化、ですか…」
「もしかしたら守沢がお前にとっての救世主になるかもしれない」
「あくまで俺の予想というか妄言だし、気にしなくていいけどな」と柔らかく微笑んだ。
守沢さんが私の何かを変えてくれる?それは私にとっていいことであり、救いとなる?
確かに、先程私は守沢さんがもしかしたら私のことを受け入れてくれるかもしれないと思った。それに関しては佐賀美先生も同じ考えだったということか。けれど、そんな簡単に人を信用して失ったものが私には数多くある。佐賀美先生を信じるにも多くの時間を要した私が、果たして守沢さんを信じられるのだろうか。
「真に受けてるのか?俺の言うことなんざ全部信じない方がいいぞ」
「佐賀美先生を信じなかったら私には信じられる相手がいないです」
お前一度信じるって決めたらとことん信じるタイプだもんなぁ、と私の面倒くさい部分を的確に指摘され縮こまる。そういった部分も相まって、私は見事に皆に遠ざけられたのだが。しかし、私が言ったことも事実なのだ。第一、私に非があるのがいけないことが殆どなのだけど。
「でも常に俺が正しいわけじゃないからなぁ」どうしたものかと頭を抱える佐賀美先生。ああ、またすぐに相手を信じて近寄ったことで相手を困らせてしまった。距離感がイマイチ掴めない。
「じゃ、俺以外に信じる相手作ったらどうだ」
名案だろ、と口の端を上げた佐賀美先生に「は、はぁ…」と最高級に濁す返事をする。
「それこそ守沢とかな」
そこで守沢さんの名前を出してくるあたり、先程の言葉はどうやらただの妄言で終わらせたくはないらしい。老いぼれのような態度を取りつつも精神年齢はまだまだ好戦的な男子高校生だ。…佐賀美先生は究極の守沢さん推しなのか。
「ナシではないだろ」
「…ですね」
守沢さんを勝手に推し量ってしまって申し訳ないが、先生のひと押しもあり、私は少し挑戦して期待してみることにした。
「守沢は悪い奴じゃないから大丈夫だと思うけど何かあったら俺に相談しろよ」
「佐賀美先生も守沢さんと同じヒーローなんですか?」
ふと、守沢さんが佐賀美先生に言っていた『困った時はいつでも言ってください』が脳内再生された。
「まぁそういう番組に出たことはあるな」
別に守沢みたいな正義のヒーローじゃないけど、守沢が信じられなくなったら信じられるのは俺だけなんだろ?と、頼れる大人の笑みを見せた。
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しばらく布団に潜り込みながら、佐賀美先生と守沢さんの会話を流し聞きしていたのだが、怪我の処置が終わったのか先生が腿を叩く音がした。治療が終わり、大事にしとけよ、という合図だ。
「ありがとうございます!」
「次の授業まで時間ないから急げよー、無理しない程度にな」
「了解しました!!」
守沢さんが走っていくかと思いきや、きちんと扉を閉めてから走り出したのを音で察知したあと、もう一度体を起こす。
私は何故、顔も見たことがない相手を信じられる信じられないなどと推し量っているのだろう。そんなことをできるほど、私は偉くないのに。
「あんず大丈夫かー守沢うるさくなかったか」
「い、いえ…ただ、今まで遭遇した人たちとは違う気がして。驚きました」
私と同じような人達が訪れていた保健室に、私とは全く違う、憧れた姿があった。先程、彼を推し量ろうとしていたのは、私がそれほどまでに人を信じることが出来なくなっていたのもあるけれど一抹の嫉妬があったのも間違いない。
「守沢さんは特撮が好きなんですか?」
「ああ、それで正義のヒーロー云々言ってるわけだ」
なるほど、と考える人のポーズ。
「あんずが他人に興味を抱くのなんて珍しいな」
「…えっ?」
「ああいや、お前普段は他人に興味を抱く以前に存在すらしてほしくないって感じだったからなぁ」
自覚はあった。確かに、いつの間にか周りの人への酷い偏見ができあがっていた。佐賀美先生に初めて会った時も、酷いことを言った上に失礼な態度もとった。そんな私を、先生は見捨てなかった。
私が他人に興味を抱くことを、先生は嬉しく思ってくれているのだろうか?それとも、いつもと違う私に驚いて気味悪がるだろうか?
「俺はお前じゃないから100%のお前のことが分かるわけじゃないけど、それはいい変化だと思うぞ」
「いい変化、ですか…」
「もしかしたら守沢がお前にとっての救世主になるかもしれない」
「あくまで俺の予想というか妄言だし、気にしなくていいけどな」と柔らかく微笑んだ。
守沢さんが私の何かを変えてくれる?それは私にとっていいことであり、救いとなる?
確かに、先程私は守沢さんがもしかしたら私のことを受け入れてくれるかもしれないと思った。それに関しては佐賀美先生も同じ考えだったということか。けれど、そんな簡単に人を信用して失ったものが私には数多くある。佐賀美先生を信じるにも多くの時間を要した私が、果たして守沢さんを信じられるのだろうか。
「真に受けてるのか?俺の言うことなんざ全部信じない方がいいぞ」
「佐賀美先生を信じなかったら私には信じられる相手がいないです」
お前一度信じるって決めたらとことん信じるタイプだもんなぁ、と私の面倒くさい部分を的確に指摘され縮こまる。そういった部分も相まって、私は見事に皆に遠ざけられたのだが。しかし、私が言ったことも事実なのだ。第一、私に非があるのがいけないことが殆どなのだけど。
「でも常に俺が正しいわけじゃないからなぁ」どうしたものかと頭を抱える佐賀美先生。ああ、またすぐに相手を信じて近寄ったことで相手を困らせてしまった。距離感がイマイチ掴めない。
「じゃ、俺以外に信じる相手作ったらどうだ」
名案だろ、と口の端を上げた佐賀美先生に「は、はぁ…」と最高級に濁す返事をする。
「それこそ守沢とかな」
そこで守沢さんの名前を出してくるあたり、先程の言葉はどうやらただの妄言で終わらせたくはないらしい。老いぼれのような態度を取りつつも精神年齢はまだまだ好戦的な男子高校生だ。…佐賀美先生は究極の守沢さん推しなのか。
「ナシではないだろ」
「…ですね」
守沢さんを勝手に推し量ってしまって申し訳ないが、先生のひと押しもあり、私は少し挑戦して期待してみることにした。
「守沢は悪い奴じゃないから大丈夫だと思うけど何かあったら俺に相談しろよ」
「佐賀美先生も守沢さんと同じヒーローなんですか?」
ふと、守沢さんが佐賀美先生に言っていた『困った時はいつでも言ってください』が脳内再生された。
「まぁそういう番組に出たことはあるな」
別に守沢みたいな正義のヒーローじゃないけど、守沢が信じられなくなったら信じられるのは俺だけなんだろ?と、頼れる大人の笑みを見せた。
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