第一章 ヒーローとの出会い
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頭が痛い。お腹が痛い。気持ち悪くて、クラクラする。少しでも嫌なことがあるといつもこうだ。
小テストがあった時。授業が嫌いな単元に入った時。みんなの前で発表をしなくてはならない時。都合が良く、気分が悪くなる。クラスメイトは勿論、先生でさえもずる休みだと疑うくらいにタイミングが良すぎる。
少々咳き込み、手を上げる。ああ、また保健室ですか。どうぞどうぞ、どうせ一人でいけるんでしょ。ずる休みのくせに。と言わんばかりの表情を浮かべ、先生は教室の出口を顎で指した。クラスメイトの視線が痛い。ここに私の居場所は存在しない。
私は普通科の保健室を通り過ぎて、アイドル科の方へ歩いていく。普通科の保健室の先生はまたずる休みですかいい加減真面目に授業に出てくださいなんて言って私を追い払う始末だ。保健室の先生としては本当にどうかと思う。しかし、アイドル科の保健室の先生、佐賀美先生は違う。ちゃんと私のことを受け止め、休ませてくれる。私がアイドル科の方へわざわざ足を運んでいるのは、先生たちも知った上で止めないので学院の形骸化が著しいのは教師の責任でもあるのだろうなと前々から嫌というほど感じられる。
「お、あんず。三日ぶりだな」
「記録更新にはなりませんでしたけど」
充分頑張ったと佐賀美先生は微笑み、ベッドは空いてるぞと告げる。ありがとうございますと一礼をしてベッドに横にならせてもらった。息苦しくて呼吸が困難だったのがだんだんと楽になっていく。普通科の方よりもこちらの方が居心地が良い。その上、私を受けいれてくれる場所がある。そう肌で感じられるだけで、体の力が抜けて、一息つける。自然と瞼が重くなってきて、そのまま一睡しようかと考えていた。
「そういえばクッキー貰ったんだけど食べるか?」
「っ、食べます…!」
ばっと起き上がった衝撃で治りかけていた腹痛が逆流してくる。お腹をさすっていると、佐賀美先生の方からこちらへ来てくれた。
「はい、お前の好きな味のやつ」差し出されたクッキーをちまちまと食べていく。学校でのこのような間食は勿論ダメだが、早めの昼食とか言えば大丈夫だろなんて先生がずぼらな理論を並べ立ててお菓子で釣ってくるのでこれは有難く頂いておく。だがお菓子のからや欠片を床に落とすと殺すなどと忠告(正しくは脅迫だが)されているので毎回注意深く口の中に吸い込むのだ。
「これはまた例のプロデューサーさんから貰ったものですか?」
「ああ、お前のクッキーを美味しいって言ってくれるやつがいたって話してから持ってくる頻度がぐんと上がってな。毎回その方喜んでくれるといいですとか言ってる」
普通科に入学するはずだった女の子が来年からの共学化やプロデュース科設立のために一人でアイドル科に放り込まれたようだ。その子は私とは違って楽しく生活できているのだろうか。そうでなくとも、私のためにクッキーを焼いてくれる子なのだから心優しい女の子なのだろう。それならきっと、お友達に囲まれてさぞ幸せに過ごしているのだろうな。
「いつかそのプロデューサーさんに何かしらお礼をしたいです。プロデューサーさんの好きな食べ物とか分かりますか?」
( 私ももっと優しかったらなぁ。)
いつからだったか、ひねくれた性格になってしまった私は、プロデューサーさんのようなことはできない。
「お前だって充分優しいよ」
私の心を読んだのか、表情に出ていたのか、佐賀美先生は私の頭をぽんぽんと撫でる。
私が優しい?どうして?今もこうして授業に出られていないのに?
…なんて、次々とそんな質問が頭に浮かんでくるあたり、常人ではないのだろう。嫌気がさしてくる。
「優しくない奴だったらお礼したいなんて言わねぇよ」
「そういうものでしょうか」
大体、口先だけではなんでも言える。勿論私は実行するつもりだが、いざ実行しようとして急にやる気が削がれて実行しないかもしれない。
「あんまり思い詰めるなよ」手を差し出した佐賀美先生の手のひらにお菓子のからを乗せる。「好きな食べ物くらい聞いといてやるよ」カーテンを閉めて、先生はいつもの位置へと戻っていってしまった。
コンコン
次の瞬間、保健室の扉が叩かれた。
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頭が痛い。お腹が痛い。気持ち悪くて、クラクラする。少しでも嫌なことがあるといつもこうだ。
小テストがあった時。授業が嫌いな単元に入った時。みんなの前で発表をしなくてはならない時。都合が良く、気分が悪くなる。クラスメイトは勿論、先生でさえもずる休みだと疑うくらいにタイミングが良すぎる。
少々咳き込み、手を上げる。ああ、また保健室ですか。どうぞどうぞ、どうせ一人でいけるんでしょ。ずる休みのくせに。と言わんばかりの表情を浮かべ、先生は教室の出口を顎で指した。クラスメイトの視線が痛い。ここに私の居場所は存在しない。
私は普通科の保健室を通り過ぎて、アイドル科の方へ歩いていく。普通科の保健室の先生はまたずる休みですかいい加減真面目に授業に出てくださいなんて言って私を追い払う始末だ。保健室の先生としては本当にどうかと思う。しかし、アイドル科の保健室の先生、佐賀美先生は違う。ちゃんと私のことを受け止め、休ませてくれる。私がアイドル科の方へわざわざ足を運んでいるのは、先生たちも知った上で止めないので学院の形骸化が著しいのは教師の責任でもあるのだろうなと前々から嫌というほど感じられる。
「お、あんず。三日ぶりだな」
「記録更新にはなりませんでしたけど」
充分頑張ったと佐賀美先生は微笑み、ベッドは空いてるぞと告げる。ありがとうございますと一礼をしてベッドに横にならせてもらった。息苦しくて呼吸が困難だったのがだんだんと楽になっていく。普通科の方よりもこちらの方が居心地が良い。その上、私を受けいれてくれる場所がある。そう肌で感じられるだけで、体の力が抜けて、一息つける。自然と瞼が重くなってきて、そのまま一睡しようかと考えていた。
「そういえばクッキー貰ったんだけど食べるか?」
「っ、食べます…!」
ばっと起き上がった衝撃で治りかけていた腹痛が逆流してくる。お腹をさすっていると、佐賀美先生の方からこちらへ来てくれた。
「はい、お前の好きな味のやつ」差し出されたクッキーをちまちまと食べていく。学校でのこのような間食は勿論ダメだが、早めの昼食とか言えば大丈夫だろなんて先生がずぼらな理論を並べ立ててお菓子で釣ってくるのでこれは有難く頂いておく。だがお菓子のからや欠片を床に落とすと殺すなどと忠告(正しくは脅迫だが)されているので毎回注意深く口の中に吸い込むのだ。
「これはまた例のプロデューサーさんから貰ったものですか?」
「ああ、お前のクッキーを美味しいって言ってくれるやつがいたって話してから持ってくる頻度がぐんと上がってな。毎回その方喜んでくれるといいですとか言ってる」
普通科に入学するはずだった女の子が来年からの共学化やプロデュース科設立のために一人でアイドル科に放り込まれたようだ。その子は私とは違って楽しく生活できているのだろうか。そうでなくとも、私のためにクッキーを焼いてくれる子なのだから心優しい女の子なのだろう。それならきっと、お友達に囲まれてさぞ幸せに過ごしているのだろうな。
「いつかそのプロデューサーさんに何かしらお礼をしたいです。プロデューサーさんの好きな食べ物とか分かりますか?」
( 私ももっと優しかったらなぁ。)
いつからだったか、ひねくれた性格になってしまった私は、プロデューサーさんのようなことはできない。
「お前だって充分優しいよ」
私の心を読んだのか、表情に出ていたのか、佐賀美先生は私の頭をぽんぽんと撫でる。
私が優しい?どうして?今もこうして授業に出られていないのに?
…なんて、次々とそんな質問が頭に浮かんでくるあたり、常人ではないのだろう。嫌気がさしてくる。
「優しくない奴だったらお礼したいなんて言わねぇよ」
「そういうものでしょうか」
大体、口先だけではなんでも言える。勿論私は実行するつもりだが、いざ実行しようとして急にやる気が削がれて実行しないかもしれない。
「あんまり思い詰めるなよ」手を差し出した佐賀美先生の手のひらにお菓子のからを乗せる。「好きな食べ物くらい聞いといてやるよ」カーテンを閉めて、先生はいつもの位置へと戻っていってしまった。
コンコン
次の瞬間、保健室の扉が叩かれた。
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