僕らは火星に行けなかった
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そっとドアを開けると、常夜灯のオレンジの光が部屋から漏れ出ていた。
廊下の蛍光灯は切れてしまっていて、何かにぶつかって音を出してしまわないように、慎重に歩く。
部屋のドアを開けると、〇〇がベッドの端っこで小さく寝ていて、静かに近寄って、しばらくその寝顔を見ていた。
〇〇はまるで居場所がないかのように、小さく身を縮こめて眠る。それは、起きている時も同じ。
いつも彼女は、押しつぶされそうな苦しそうな顔をしていて、それをどうにかしてあげたいって心から思うのに。
ねえ、どうして手を伸ばしてくれないの。
わずかに動いてはらりと落ちた彼女の前髪をかき分けて、小さくキスを落とす。
きっと君は、こうやってオレが別の匂いをまとってくるのを快く思っていないんだろう。寝ているフリをしているけど、いつも髪の毛の匂いを確認してることも知ってる。
でも、じゃあ、本当の気持ちを言ったところで、君は結局オレを受け入れてくれないことも知ってるんだ。
だって君は、高層マンションの綺麗な部屋だったり、すごく高いブランドもののバッグだったり、たくさんのものを持ってるのに、欲しがるのはいつも手に入れられないものだから。
ドラマを見ていて、「こんなお父さんいたらいいな」って言ったり。
いつもぎゅっと唇を噛みながら地元の同級生のインスタを見ていたり。
そのうち、違う惑星に行きたいなんて言い出すんじゃないかな。
だから、君から欲しがられるには、君のものになっちゃいけないんだ。
………ごめんね。
彼女の頰に残る涙の跡を拭いとるように、口づける。
不安も孤独も寂しさも、全部抱きしめるよ。
君がいれば、それだけでいいって本気で思ってる。
溺れそうなくらい、オレの身体は君でいっぱいいっぱいなのに。
……ねえ、だからオレのことを好きになってよ。
言えない想いを隠して、するりと彼女の横に身を滑らせた。
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