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キュッキュッとホワイトボードの上でペン先が滑る音がする。
デカデカと書かれた【新入生勧誘】の字の横を、会長はバンッと叩いてサークル室を見渡した。
「何かいい案あるやつ!」
そういえばもうそんな時期か、とサークル室に召集をかけられた理由を遅ればせながら理解する。
もう3月の上旬。あと1ヶ月で新入生がやってくる。
隣をちらりと見ると、風磨も “ああ、そういえば” とわたしと同じような表情を浮かべていた。
「何かいい案あるやつ!」と同じ言葉を繰り返した会長の圧に押されて、そろりそろりと前の方で手が上がる。
「例年で言えばビラ配りとか…」
「却下!それはどこでもやってる」
「じゃあ、お花見会とか…」
「却下!それ、おまえらが酒飲みたいだけだろ」
「えぇ…、じゃあ他に何が……」
途方にくれた声に、会長はやれやれと首を振った。
「ほんとに考えが貧困だなーおまえら!」
「それじゃあ会長は何か案があるんですか?」
会長は、その言葉を待っていましたとばかりに、自慢げに胸をそらし、声を張り上げた。
「ショートムービーを撮る!!」
「ショートムービー??」
サークル室全体にクエスチョンマークが浮かぶ。
「よく企業とかも会社のイメージ動画作ってたり、ミュージシャンとかもMV作ってたりするだろ。あれを作って、SNSにアップする。…おい、我らがキャンプサークル、1番の強みはなんだと思う?」
ほら木村、と会長に指を差されて木村くんはおどおどと答える。
「えっと、みんな仲良いところ…?」
「バカ、ちがう!」
「じゃあキャンプに行けるとこ…?」
「アホか!!うちのサークルの強みは、こいつら2人がいることだろうが!」
ビシッと前を向いた会長の指は、右手人差し指は風磨に、左手人差し指はわたしに向いている。
「へ……?」
急に周りの目がこちらに向いて、きょとんと思わず風磨と顔を見合わせる。
「こんな派手でリア充感あふれるやつらが、なんでキャンプサークルにと常々不思議に思っていたが、今こそその使いどきだ!こいつら2人をメインで撮れば見栄えも抜群だ」
もう脚本も用意した、と誇らしそうな会長の言葉に、おお…たしかに…それいいじゃん…と周りは次々と頷きはじめる。
『…いやいやいや、やんねーよ?!』
「そ、そーですよ!しかもSNSにアップするんでしょその動画!」
『デジタルタトゥーって知ってます?一生消えないんすよそれ!』
「それにそんなのわたしたちに1個も得がないじゃ「もちろん報酬は出す」
会長はキャンキャンと噛みつくわたしたちをドウドウとなだめつつ両手で遮る。
「……出演料、2万でどうだ?」
ピンと立てられた二本指。
わたしたちはまた、顔を見合わせる。
言葉にするまでもなくお互いの考えは重なった。
「『やらせてください!!』」
声を揃えて、パタパタと尻尾を振った。