小話① 趣味
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『お互いの好きなDVD持ってこようとは言ったけどさぁ』
「うん!」
キラキラとした瞳をいつもなら可愛いと思うはずだけど、いや、間違いなく可愛いんだけど、それとは別にどうやっても口は尖るし眉根は寄ってしまう。
だって。
『それ、ひよりの好きなアイドルの(しかも男の)ライブDVDじゃん!』
今日はおうちデートの日。
今まで彼女の家には何度か行ったことはあるけど、こちらの家に来てもらうのは初めてで、「お邪魔します…」と部屋に足を踏み入れた彼女は少しそわそわとした様子だった。
まずは彼女の持ってきたDVDを見て、そのあとオレが選んだ恋愛映画を観ながら、あわよくば、ちょっとイチャイチャできれば…なんて思っていたのに。
他の男を観るなんて聞いてない!
ひよりがアイドルを好きなことは知っていたし、趣味は人それぞれだから口出しはしないけど、正直複雑だ。
………その人たちとオレ、どっちが好きなの?って、あまりに女々しいからそんなことは言わないけど。
「…だめ?」
上目遣いで首を傾げられてしまうと、却下するわけにもいかなくて、『いーよぉ…』としぶしぶディスクをセットする。
………しっかりBlu-rayだし、しかもサイリウムまで持ち始めるし。
ディスクにプリントされた5人分の笑顔をそれぞれ心の中で“イーッ”と睨みつける。
「聡くんも観たら絶対ハマるから!」
『そおかなぁ……』
スピーカーから音が流れて、映像が再生され始めた。
数十分後。
『えっ、今のところ高音すごい……あの人なんて名前?!』
『ねえ、今すれ違う時のハイタッチ、完全にノールックだったよね?!』
『嘘みたいにみんなカッコいい……』
魂が抜かれるって、きっとこんな気持ちなんだ。
綺麗な歌声。個性のある踊り。きらめく汗。こちらを射抜く瞳。
見終わった後、しばらく放心状態で何もできず、黙り込む。
ただ、さっきの5人が歌って踊る姿や笑顔が頭の中に焼きついて離れないなか、ようやっと『……CD貸して』と小さな声で頼めば、彼女はにっこりと微笑んだ。
それからは早かった。
『ひより、初期のBlu-ray持ってる?!見せて!!ネットショップ探したけどもう廃盤になってて』
「いいよ〜、ってあれ、聡くんその靴…」
『うん!こないだブログで××くんがお気に入りって言ってたやつ!』
自分がハマったら早いタイプだってことを忘れていた。
今日も今日とて、ひよりと2人で鑑賞会。
テレビの画面が大きいから、最近はめっきりひよりの家で観ることが多くて、ひよりのお母さんにも「あら聡くん。また2人でDVD?ほんとに仲良しねぇ」と声をかけられた。
「ここ!ここで□□くんが××くんの方をチラッとみるの!」
『ぎゃー!!エモ!あと◇◇くん安定に歌上手すぎ!!カメラの位置把握しすぎ!天才!!』
「ほんとそれ!はぁ…かっこいいよぅ……」
『ほんとめちゃくちゃかっこいい……』
「次のライブ当たるといいなぁ…」
『2人で運貯めよ!がんばろ!』
一緒に当選祈願に神社に行ったり、参戦服を選びに行ったり。
無事当選したライブでは、2人とも涙もろくて大号泣して、近くの席の人たちからティッシュを恵まれてしまった。
『生きててよかった…』
「ほんとに生きててよかった…」
次の日の学校で、莉子に向かって昨日のライブについて熱弁すると、莉子は呆れたように、「あれだけアイドルに嫉妬してたのに、もはや立派なドルオタカップルじゃん」と首を振った。