守護りたいもの

すっかり秋の夕暮れとなった季封村。真っ赤に染め上がった畦道を俺達は、歩いている。 

「おとうしゃん!とんぼ!とんぼ!」

前を走っているのは、息子の悠生ゆうき
あちこちを走り回るようになり危なっかしくて目が離せない。

「ふふっ。悠生たらはしゃいじゃって」 

そういいながら隣を歩くのは、俺の愛する人、珠紀。腕にはまだ産まれたばかりの娘、美夕紀みゆきを抱いている。

「おとうしゃん!とんぼつかまえた!」
「コラ!そんなに走り回ると転ぶ…」

俺が言い終わるのを待たずに派手に転ぶ悠生。膝小僧をすりむき、大泣きしている。 

「だから言ったろ。転ぶって…」

泣き叫ぶ悠生に駆け寄り、土を払ってあげた。

「ほら、家に帰るぞ。絆創膏を貼らないと…」
 
「だって…とんぼが…」
 
そうぐずる悠生を肩車してあげた。

「うわ~…」 

肩車された悠生の周りにたくさん赤とんぼがあつまる。

「こうすると、たくさん見れるだろ?」
「うん!」
その光景を、微笑ましく見ていた珠紀は隣に立ち、呟く。

「拓磨…。私、幸せ」
「ああ…。俺もだ」
珠紀の呟きに俺はそう返す。

 珠紀と結婚して数年、俺にも守護まもりたいものが増えた。
愛する人、珠紀。そして悠生、美夕紀。

 俺は、この幸せな家庭を守護まもり続けたい。未来永劫、ずっと…
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