守護者のお仕事事情

「守護者ってどんな仕事をしているんですか?」
昼休みの屋上、お弁当のおかずを箸でつまみながら珠紀はふとした疑問を口にした。 

「どんな仕事ってお前を守る事が仕事だろ。」 

拓磨が食後のたい焼きをほおばりながらそうぶっきらぼうに答える。
  
「いや、あの、そうじゃなくて‥玉依姫の守護者以外に仕事しているのかなと思って。まさかそれで生計立てているわけじゃない…よね…?」
一瞬場が静かになる。

「あ、その…答えにくかったら言わなくても大丈夫です」

 国によって管理されているこの季封村では働き口は限られている。大人な卓はともかく、まだ学生の守護者達はどうしている気になったのだ。 

「いや、構わない。玉依姫にとって俺たちの事を知るのは重要だからな」

そう祐一は言うと、ぽつりぽつりと話し始めた。 

「俺たち守護者は基本的には先祖代々の仕事に就く事が多いな。鬼崎家は林業、犬戒家は農家と猟師、狐邑家は染織、鴉取家は酒店を営んでいる。」

「へぇ~、以外と普通の仕事なんですね。ということは卓さんも?」

「大蛇家は不動産業を営んでいるが…、守護者の仕事に専念したいという本人の申し出で親戚の方に任せていると聞いた」

「守護者個人が手に職持ってるのも珍しくないからな」

 「まー、村の中じゃ働ける仕事も限られているしな、大蛇さんみたいな方が働きやすいんだろ、俺ん所なんか最近酒の仕入れ値が高いってて父ちゃんが愚痴ってたぜ」 
「俺の所も似たようなもんすよ、木材の値が隣村と比べて下がってるていってましたし」
 「お前たちの所はまだマシな方だ。俺の家は稼ぎが悪くてな、父が村の外で働きに出ている」
 「僕の所も最近の雨不足のせいで野菜の生育不良が続いてるてぼやいていましたね。狩猟でなんとかやっていますが」  

守護者の皆が自身の家の仕事の不満を口に出し始め珠紀は肩をすくめ萎縮した。 
 
「みんな大変ですね…。すみません…プライベートな事を聞いてしまって…」
そんな珠紀の様子を見て守護者たちは反省した。

「お前は気にする必要はない。長く守護者をやっているとよくあることだ」

「そーそー。つーかお前は自分の事を心配しろよな」
「玉依姫としてはまだまだ頼りないしな」
「ロゴスの様子も気になりますしね」
「うぅ…そうだよね…頑張らなきゃ」

珠紀がそう意気込んだ瞬間昼休み終了のチャイムが鳴った。

「いけない!もうこんな時間…。すみません。色々聞いてしまって…」
「気にするな。また聞きたいことがあったらいつでも聞いてくれ。さて…次の授業は英語だったか」
「英語!となるとフィオナ先生か!
待っててください、フィオナ先生!今行きます!」
「真弘、そんなに急いでも先生はすぐ来ない」
「僕も移動教室だから早くいかないと…お先に失礼しますね」
「さてと私も行かないと…」
他の守護者たちが急いで屋上をでる中珠紀も空のお弁当箱を片付ける、とその時、「なぁ」と拓磨に声をかけられる。

「うん?なあに?早くしないと授業に…」
「何か困ったら俺を頼れ。一応近くにいるんだし」
「う、うん」
(いきなりなんなんだろ…私が変な事聞いたせい?)

そう思った時拓磨はすぐにそっぽを向き、
「ほら早くしないと授業に遅れるぞ」
と言って足早に屋上を出た。

「あっ、待ってよ!拓磨!もう。一体何なの!」
そう愚痴を零しながら屋上を出る珠紀。

彼女と守護者たちにふりかかる試練はまだこれから…
1/1ページ
    スキ