未来に向かって一歩ずつ
ここは宇賀谷家…の隣にある鬼崎の表札が掲げられた小さな一軒家。新婚となった拓磨と珠紀はここに引っ越し、その片付けに追われていた。春日珠紀改め鬼崎珠紀は玄関の清掃をしていた。郵便受けの清掃にとりかかり名前が書いてあるプレートを取り付けた。
「これでよし!」
と意気込んでつけたプレートには
『鬼崎 拓磨
珠紀』
と夫婦の名が記載されており分かっていても珠紀はついニヤけてしまう。
(私拓磨と結婚したんだな…。いつかこの下に私たちの子供の名前も…って私ったら何考えてるの!)
一人で妄想して顔を赤くしている珠紀に拓磨が玄関から声をかけた。
「珠紀こっちは終わったぞ。そっちの方は…なに顔赤くしてんだ?」
「べっ別になんでもない!こ、こっちももう終わるよ」
「そうか?だがまあしかし驚いたよな、まさか俺たちが住む家がもう建てられてるなんて」
「ほんとだよ、美鶴ちゃん前に『お二人がゆっくり出来る住まいを作らないといけませんね』とは言ってたけど家を建てちゃうなんて…夏休みに帰ってきた時はまだ建ててなかったのに」
「宇賀谷家に居候増えたからな…。俺たちは別に構わなかったんだが…」
大学を無事卒業して村に帰ってきた珠紀たちは宇賀谷家の隣に出来た邸宅をみて驚きで言葉も出なかったほどだ。二人とも玄関を出て自分たちの住まいを眺めた。
「建築費用諸々は言蔵家が負担してくれてなんだか申し訳ないよ…、少しずつ払うよて美鶴ちゃんに言っても断られたし」
「美鶴がいいて言うんだからいいんじゃないか、俺たちも有り難いし。あいつスゴく喜んでたしな。それより珠紀。片付けが思いの外早く終わったからちょっと息抜きにこの辺散歩しないか?」
「うん、そうだね!村に帰ってきてすぐ結婚式挙げてずっと忙しかったからちょっと二人で散歩したいな」
「よし!じゃあちょっとブラブラするか!」
拓磨と珠紀は手を繋ぎ、一緒に外に出た。
―――――――――――――――――――――――
商店街をブラブラしながら辺りを見渡す二人。
「相変わらずこの村は変わらないな。デカイ建物くらいできてるかと思ったが」
「そこがいいんじゃない?少し離れていても変わらなくて安心したよ。あ、でも商店街のパン屋さんは新装開店してたね」
「改装工事してたもんな。真弘先輩焼きそばパンの新作が出た!て喜んでたな」
「そういえば真弘先輩てたしか今…このエンジン音は!」
拓磨と珠紀の元に軽快なエンジン音を吹かせて一台のバイクが止まった。バイクの人物は黒のライダースーツを着てフルフェイスのヘルメットを被っている。
「おー!お前ら!引っ越しの片付け終わったのか?」
真弘だった。ヘルメットを脱ぎバイクを降りる。後ろには同じヘルメットを被った祐一を乗せている。
「はい!片付けが早く終わったので少しこの辺を回ろうかと。真弘先輩はバイクの試運転ですか?」
「おう!向こうでもある程度乗ってたんだがアメリカに行くためにももう少し慣らしとこうと思ってな。」
真弘は大学在学中に免許を取りバイトで少しずつためたお金でバイクも購入した。今はバイクでアメリカ横断の夢のために村中をバイクで試運転していた。
「それで祐一を乗せて走らせたんだが…祐一、乗り心地はどうだ?…祐一?」
真弘に声をかけられても返事をしない祐一。どうやら寝ているようだった。
「すぅ…すぅ…」
「ハハハ…相変わらずですね…」
「よく走ってるバイクの上で寝れますね。ある意味尊敬するっす」
「オイコラ!祐一!バイクで寝るな!!!!早く起きろ!!」
「ん…?ああ…拓磨に珠紀か。引っ越しの片付けは終わったのか?」
「その話は終わったんだっつーの!!!乗り心地ちはどうだったか聞いてんだよ!!!!」
「…よかったんじゃないか?よく眠れたし」
「…お前最初から寝てたな…はぁ〜こんなことなら乗せるんじゃなかったぜ」
「お前が乗れと言ったじゃないか」
「お前しか空いてる奴いなかったんだよ!みんな忙しいて断られるし!」
「ま、まあまあ。祐一先輩が眠れるくらい気持ちよかったということで…そういえば真弘先輩アメリカ行きの許可取れましたか?」
怒りが収まらない真弘を宥めつつ珠紀は真弘のアメリカ行きの件を尋ねた。
「いや…それがまだなんだよ。ただでさえ誓約書とか身分証明書くだけで何十枚も書類書くのめんどくせぇのによ。パスポートの申請も時間かかってるしな」
「仕方ないだろう。俺達は未だに監視されてる身だ。国を出るだけでも色々と大変なんだろう。そもそもパスポートの申請はもっと早くすればよかっただろ」
バイクに乗ったまま、祐一が茶々を入れる。
「う、うるせぇ!卒論仕上げるのに時間かかったんだよ!」
「真弘先輩、何回もやり直しさせられてましたね…」
「もう少しで留年する所だったんすよ。大蛇さんや祐一先輩に電話でアドバイスもらいながらやっと仕上がったんですから。俺達も大方手伝ったんで感謝してほしいくらいっす」
「だぁ~!わーたから!大体お前らにメシ奢ったからそれでいいだろ!…ったく興が冷めちまったぜ…気分転換のためにまた村を一周するか!」
「そうか。頑張れ」
「オメーも行くんだよ!こうなったらとことん付き合ってもらうからな!じゃあな!珠紀!拓磨!」
「気を付けてくださいね」
後ろに祐一を乗せたままバイクにエンジンを掛け、颯爽と去っていた。
「大学卒業しても騒がしい人だな…」
「いつもの真弘先輩でよかったんじゃない?アメリカ行きの目処も立ちそうだし」
「そうだな…次は公園の方に行ってみないか?」
「うん!」
また二人は公園に向けて歩き出していった。
――――――――――――――――――――――――
「おや、二人ともお出かけですか?」
「あ!卓さん!遼!」
公園に行く道中、拓磨と珠紀は卓と遼に会った。
「ええ。少しこの辺りを散歩しようと…卓さんこそ遼とどこかに?」
「ええ。実は狗谷君にお食事に誘われまして」
「ええ!!遼に!」
「そんなに驚くことないだろ。…大蛇には世話になったからな。大学に行ってる間母さんの面倒みてもらったし、大学進学の手続きも大蛇がしてくれたからな。母さんの体調も大分良くなったしせめて日頃の感謝を伝えようと…」
「私は気にしなくても良いと言ったのですが…」
照れくさそうにゴニョゴニョと話す遼に拓磨が口を挟んだ。
「お前意外と義理堅いんだな。見直したよ」
「フン、オメーに見直される筋合いはねぇ」
なんだと!と遼に突っかかりそうな拓磨を珠紀は抑えた。
「もう拓磨!すみません…あっそうだ!卓さん。この前家具一式プレゼントしてくれてありがとうございます!おかげで助かりました」
「いえいえ喜んでいただきこちらも嬉しいです。あの家具、株主優待でいただいた物ですから自由に使ってもらっても大丈夫ですよ。有名ブランド品なのできっと気に入ってもらえると思いますよ」
にこやかにサラッとスゴい事を言う卓。その様子に珠紀は「そ、そうですか」と言葉を返すしかなかった。
「オイ、大蛇さっさと行くぞ。母さんが待ってる」
「そうですね。では我々はここで失礼します」
「はい!卓さんたちも楽しんでください!」
卓たちと別れ公園に着いた二人はベンチに座り一息ついた。公園には村の子供たちが楽しく遊んでいる。
「卓さんと遼仲良いと思ってたけど一緒に食事までしてるなんて…」
「アイツ大蛇さんには頭上がらないみたいだからな。俺達もだけど大蛇さんにはやっぱり逆らえないんだよな…」
「卓さんはよくみんなまとめてるよ…それにしても遼が食事に誘うなんて遼も変わったんだな…」
「そうだな…」
それを変えたのは珠紀、お前だと心の中で囁く。お前のおかげで俺達はここにいる-----
そんな事を考えて拓磨がついニヤけてしまった。珠紀が不思議そうに尋ねる。
「な、なに拓磨笑ってるの?私おかしな事言った?」
「いや、何も…。…お、そろそろ時間だし帰るか」
「そうだね!家に帰ろっか!」
二人はまた手を繋いで公園を出た。
------------------------------------------------------------
「あ、珠紀先輩!拓磨先輩も!」
「珠紀様、引っ越しの片付けは済んだのですか?」
「うん!息抜きに散歩して今帰る所だよ。慎司君達は二人で買い物?」
家路につく途中の畔道で慎司と美鶴に会った。二人とも両手いっぱいに買い物袋を持っていた。
「はい、僕もう大学に帰らないといけませんから少し必要な物を買い出しに。向こうでも買えますけど出来るだけここで買い物をすましておこうかと」
「そっか…。慎司君明日には帰らないといけないんだね…。ありがとう、私たちの為に…」
本来なら慎司はこの時期には大学の寮にいないといけないのだが珠紀達の結婚式に出席する為に典薬寮から短期休暇の許可を得ていた。明日にはもう帰らないといけないという。
「とんでもない!珠紀先輩の結婚式に出席できて僕も嬉しいですよ。珠紀先輩の晴れ姿とても綺麗でした。拓磨先輩には勿体ないくらい!」
「オイ慎司?それはどういう意味だ?」
「いや…その〜アハハ…」
慎司が誤魔化すように乾いた笑いを浮かべる中、珠紀は美鶴に問いかける。
「でも慎司君の買い物にしては荷物が多いような…」
「ええ、実は慎司君…いえ兄さんが向こうに帰る前に言蔵家で宴をしようかと」
「へえ!そうなんだ!」
「宴といってもそんな大層なものじゃないですが…犬戒家…僕の両親も招いてするということなのでこうやって美鶴ちゃんと一緒に準備を兼ねて買い物に」
「すみません…珠紀様。こういう事情で今日お暇をいただいて…引っ越しの片付けもお手伝い出来ず申し訳ありません」
「そんな!家族の事情なら仕方ないよ!神社や家の事は私に任せて兄妹水入らずで楽しんでよ!」
その言葉が嬉しかったのかにっこりと微笑む美鶴。
「ありがとうございます。珠紀様」
「美鶴ちゃん、そろそろ行こうか。日が暮れる前に食事の準備をしないと。」
「そうですね。すみません…珠紀様。私達はここで失礼します。また明日ご自宅におうかがいしますね」
「拓磨先輩もまた。結婚祝いの品はまた贈りますね」
二人とも軽く会釈して一緒に去っていった。珠紀は二人の後ろ姿が楽しそうに笑っているように見えた。
「慎司君、言蔵家とのわだかまりも解けてきたみたいでよかった…」
「ああ。…あの二人はずっと村の因習に囚われたからな。幸せになってもらいたいよ」
「他の守護者のみんなも将来や目標のために新しい一歩を踏み出してるね。私も頑張らないと…」
珠紀が振り返ろうとしたら突然後ろから抱きしめられた。
「拓磨?どうしたの?」
「あまり頑張りすぎるなよ。お前の目標は俺の目標でもある。ちゃんと頼ってくれ」
「うん、分かってる。無理はしないから」
「そうか…。なあ珠紀。俺はちゃんとあの時の誓い守れてるか?」
「もちろん。今まで私の側にいてずっと守ってくれたじゃない。そしてこれからだって…そうでしょう?」 「ああそうだな…珠紀。俺はお前を愛してる。これからもずっとお前とその未来も守っていきたい」
そういって微笑むと珠紀の口元に唇を落とす。珠紀も同じく拓磨の口元に熱い口づけを交わす。夕暮れの畦道にできた2つの影が一つに重なった。
珠紀と拓磨は「季封村を人とカミが共存できる村にする」その目標のために二人は共に歩み続ける。
二人の道はまだこれから-------------
「これでよし!」
と意気込んでつけたプレートには
『鬼崎 拓磨
珠紀』
と夫婦の名が記載されており分かっていても珠紀はついニヤけてしまう。
(私拓磨と結婚したんだな…。いつかこの下に私たちの子供の名前も…って私ったら何考えてるの!)
一人で妄想して顔を赤くしている珠紀に拓磨が玄関から声をかけた。
「珠紀こっちは終わったぞ。そっちの方は…なに顔赤くしてんだ?」
「べっ別になんでもない!こ、こっちももう終わるよ」
「そうか?だがまあしかし驚いたよな、まさか俺たちが住む家がもう建てられてるなんて」
「ほんとだよ、美鶴ちゃん前に『お二人がゆっくり出来る住まいを作らないといけませんね』とは言ってたけど家を建てちゃうなんて…夏休みに帰ってきた時はまだ建ててなかったのに」
「宇賀谷家に居候増えたからな…。俺たちは別に構わなかったんだが…」
大学を無事卒業して村に帰ってきた珠紀たちは宇賀谷家の隣に出来た邸宅をみて驚きで言葉も出なかったほどだ。二人とも玄関を出て自分たちの住まいを眺めた。
「建築費用諸々は言蔵家が負担してくれてなんだか申し訳ないよ…、少しずつ払うよて美鶴ちゃんに言っても断られたし」
「美鶴がいいて言うんだからいいんじゃないか、俺たちも有り難いし。あいつスゴく喜んでたしな。それより珠紀。片付けが思いの外早く終わったからちょっと息抜きにこの辺散歩しないか?」
「うん、そうだね!村に帰ってきてすぐ結婚式挙げてずっと忙しかったからちょっと二人で散歩したいな」
「よし!じゃあちょっとブラブラするか!」
拓磨と珠紀は手を繋ぎ、一緒に外に出た。
―――――――――――――――――――――――
商店街をブラブラしながら辺りを見渡す二人。
「相変わらずこの村は変わらないな。デカイ建物くらいできてるかと思ったが」
「そこがいいんじゃない?少し離れていても変わらなくて安心したよ。あ、でも商店街のパン屋さんは新装開店してたね」
「改装工事してたもんな。真弘先輩焼きそばパンの新作が出た!て喜んでたな」
「そういえば真弘先輩てたしか今…このエンジン音は!」
拓磨と珠紀の元に軽快なエンジン音を吹かせて一台のバイクが止まった。バイクの人物は黒のライダースーツを着てフルフェイスのヘルメットを被っている。
「おー!お前ら!引っ越しの片付け終わったのか?」
真弘だった。ヘルメットを脱ぎバイクを降りる。後ろには同じヘルメットを被った祐一を乗せている。
「はい!片付けが早く終わったので少しこの辺を回ろうかと。真弘先輩はバイクの試運転ですか?」
「おう!向こうでもある程度乗ってたんだがアメリカに行くためにももう少し慣らしとこうと思ってな。」
真弘は大学在学中に免許を取りバイトで少しずつためたお金でバイクも購入した。今はバイクでアメリカ横断の夢のために村中をバイクで試運転していた。
「それで祐一を乗せて走らせたんだが…祐一、乗り心地はどうだ?…祐一?」
真弘に声をかけられても返事をしない祐一。どうやら寝ているようだった。
「すぅ…すぅ…」
「ハハハ…相変わらずですね…」
「よく走ってるバイクの上で寝れますね。ある意味尊敬するっす」
「オイコラ!祐一!バイクで寝るな!!!!早く起きろ!!」
「ん…?ああ…拓磨に珠紀か。引っ越しの片付けは終わったのか?」
「その話は終わったんだっつーの!!!乗り心地ちはどうだったか聞いてんだよ!!!!」
「…よかったんじゃないか?よく眠れたし」
「…お前最初から寝てたな…はぁ〜こんなことなら乗せるんじゃなかったぜ」
「お前が乗れと言ったじゃないか」
「お前しか空いてる奴いなかったんだよ!みんな忙しいて断られるし!」
「ま、まあまあ。祐一先輩が眠れるくらい気持ちよかったということで…そういえば真弘先輩アメリカ行きの許可取れましたか?」
怒りが収まらない真弘を宥めつつ珠紀は真弘のアメリカ行きの件を尋ねた。
「いや…それがまだなんだよ。ただでさえ誓約書とか身分証明書くだけで何十枚も書類書くのめんどくせぇのによ。パスポートの申請も時間かかってるしな」
「仕方ないだろう。俺達は未だに監視されてる身だ。国を出るだけでも色々と大変なんだろう。そもそもパスポートの申請はもっと早くすればよかっただろ」
バイクに乗ったまま、祐一が茶々を入れる。
「う、うるせぇ!卒論仕上げるのに時間かかったんだよ!」
「真弘先輩、何回もやり直しさせられてましたね…」
「もう少しで留年する所だったんすよ。大蛇さんや祐一先輩に電話でアドバイスもらいながらやっと仕上がったんですから。俺達も大方手伝ったんで感謝してほしいくらいっす」
「だぁ~!わーたから!大体お前らにメシ奢ったからそれでいいだろ!…ったく興が冷めちまったぜ…気分転換のためにまた村を一周するか!」
「そうか。頑張れ」
「オメーも行くんだよ!こうなったらとことん付き合ってもらうからな!じゃあな!珠紀!拓磨!」
「気を付けてくださいね」
後ろに祐一を乗せたままバイクにエンジンを掛け、颯爽と去っていた。
「大学卒業しても騒がしい人だな…」
「いつもの真弘先輩でよかったんじゃない?アメリカ行きの目処も立ちそうだし」
「そうだな…次は公園の方に行ってみないか?」
「うん!」
また二人は公園に向けて歩き出していった。
――――――――――――――――――――――――
「おや、二人ともお出かけですか?」
「あ!卓さん!遼!」
公園に行く道中、拓磨と珠紀は卓と遼に会った。
「ええ。少しこの辺りを散歩しようと…卓さんこそ遼とどこかに?」
「ええ。実は狗谷君にお食事に誘われまして」
「ええ!!遼に!」
「そんなに驚くことないだろ。…大蛇には世話になったからな。大学に行ってる間母さんの面倒みてもらったし、大学進学の手続きも大蛇がしてくれたからな。母さんの体調も大分良くなったしせめて日頃の感謝を伝えようと…」
「私は気にしなくても良いと言ったのですが…」
照れくさそうにゴニョゴニョと話す遼に拓磨が口を挟んだ。
「お前意外と義理堅いんだな。見直したよ」
「フン、オメーに見直される筋合いはねぇ」
なんだと!と遼に突っかかりそうな拓磨を珠紀は抑えた。
「もう拓磨!すみません…あっそうだ!卓さん。この前家具一式プレゼントしてくれてありがとうございます!おかげで助かりました」
「いえいえ喜んでいただきこちらも嬉しいです。あの家具、株主優待でいただいた物ですから自由に使ってもらっても大丈夫ですよ。有名ブランド品なのできっと気に入ってもらえると思いますよ」
にこやかにサラッとスゴい事を言う卓。その様子に珠紀は「そ、そうですか」と言葉を返すしかなかった。
「オイ、大蛇さっさと行くぞ。母さんが待ってる」
「そうですね。では我々はここで失礼します」
「はい!卓さんたちも楽しんでください!」
卓たちと別れ公園に着いた二人はベンチに座り一息ついた。公園には村の子供たちが楽しく遊んでいる。
「卓さんと遼仲良いと思ってたけど一緒に食事までしてるなんて…」
「アイツ大蛇さんには頭上がらないみたいだからな。俺達もだけど大蛇さんにはやっぱり逆らえないんだよな…」
「卓さんはよくみんなまとめてるよ…それにしても遼が食事に誘うなんて遼も変わったんだな…」
「そうだな…」
それを変えたのは珠紀、お前だと心の中で囁く。お前のおかげで俺達はここにいる-----
そんな事を考えて拓磨がついニヤけてしまった。珠紀が不思議そうに尋ねる。
「な、なに拓磨笑ってるの?私おかしな事言った?」
「いや、何も…。…お、そろそろ時間だし帰るか」
「そうだね!家に帰ろっか!」
二人はまた手を繋いで公園を出た。
------------------------------------------------------------
「あ、珠紀先輩!拓磨先輩も!」
「珠紀様、引っ越しの片付けは済んだのですか?」
「うん!息抜きに散歩して今帰る所だよ。慎司君達は二人で買い物?」
家路につく途中の畔道で慎司と美鶴に会った。二人とも両手いっぱいに買い物袋を持っていた。
「はい、僕もう大学に帰らないといけませんから少し必要な物を買い出しに。向こうでも買えますけど出来るだけここで買い物をすましておこうかと」
「そっか…。慎司君明日には帰らないといけないんだね…。ありがとう、私たちの為に…」
本来なら慎司はこの時期には大学の寮にいないといけないのだが珠紀達の結婚式に出席する為に典薬寮から短期休暇の許可を得ていた。明日にはもう帰らないといけないという。
「とんでもない!珠紀先輩の結婚式に出席できて僕も嬉しいですよ。珠紀先輩の晴れ姿とても綺麗でした。拓磨先輩には勿体ないくらい!」
「オイ慎司?それはどういう意味だ?」
「いや…その〜アハハ…」
慎司が誤魔化すように乾いた笑いを浮かべる中、珠紀は美鶴に問いかける。
「でも慎司君の買い物にしては荷物が多いような…」
「ええ、実は慎司君…いえ兄さんが向こうに帰る前に言蔵家で宴をしようかと」
「へえ!そうなんだ!」
「宴といってもそんな大層なものじゃないですが…犬戒家…僕の両親も招いてするということなのでこうやって美鶴ちゃんと一緒に準備を兼ねて買い物に」
「すみません…珠紀様。こういう事情で今日お暇をいただいて…引っ越しの片付けもお手伝い出来ず申し訳ありません」
「そんな!家族の事情なら仕方ないよ!神社や家の事は私に任せて兄妹水入らずで楽しんでよ!」
その言葉が嬉しかったのかにっこりと微笑む美鶴。
「ありがとうございます。珠紀様」
「美鶴ちゃん、そろそろ行こうか。日が暮れる前に食事の準備をしないと。」
「そうですね。すみません…珠紀様。私達はここで失礼します。また明日ご自宅におうかがいしますね」
「拓磨先輩もまた。結婚祝いの品はまた贈りますね」
二人とも軽く会釈して一緒に去っていった。珠紀は二人の後ろ姿が楽しそうに笑っているように見えた。
「慎司君、言蔵家とのわだかまりも解けてきたみたいでよかった…」
「ああ。…あの二人はずっと村の因習に囚われたからな。幸せになってもらいたいよ」
「他の守護者のみんなも将来や目標のために新しい一歩を踏み出してるね。私も頑張らないと…」
珠紀が振り返ろうとしたら突然後ろから抱きしめられた。
「拓磨?どうしたの?」
「あまり頑張りすぎるなよ。お前の目標は俺の目標でもある。ちゃんと頼ってくれ」
「うん、分かってる。無理はしないから」
「そうか…。なあ珠紀。俺はちゃんとあの時の誓い守れてるか?」
「もちろん。今まで私の側にいてずっと守ってくれたじゃない。そしてこれからだって…そうでしょう?」 「ああそうだな…珠紀。俺はお前を愛してる。これからもずっとお前とその未来も守っていきたい」
そういって微笑むと珠紀の口元に唇を落とす。珠紀も同じく拓磨の口元に熱い口づけを交わす。夕暮れの畦道にできた2つの影が一つに重なった。
珠紀と拓磨は「季封村を人とカミが共存できる村にする」その目標のために二人は共に歩み続ける。
二人の道はまだこれから-------------
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