【PET!番外編①】迷惑メイドたまき

「あ、瑛知」
「うわっ!?」

 ドアを開けると、環と司狼が早くも厨房から戻ってきていた。

「あ、あれ? 料理作りに行ったんじゃないのか?」
「……椋ちゃんちのシェフに、追い出された……もうすぐご飯出来るって」

 当たり前である。自分の仕事場を荒らされたくないのだ。
 すっかり落ち込んでいた環だが、しばらくしてメイドが夕食の出来上がりを告げに来ると、喜んで食事をする部屋に向かった。

 いつもの大きなテーブルの片側に、瑛知を真ん中にして三人固まって座る。すると、瑛知の横に座った環が、楽しそうにフォークを持った。

「じゃあ、動けない瑛知には俺が食べさせてあげるね」
「いや、動けるって言ってるだろ」
「無理しないでよ、瑛知。司狼は皿持ちね!」
「……あぁ」

 司狼に瑛知の料理の皿を持たせると、甘く煮たニンジンをフォークで取り、瑛知の口の前まで持っていった。

「はい瑛知、あーんして」
「はい、どうも」
「あっ!」

 環は期待に満ちたキラキラした目で瑛知を見たが、瑛知は環の手からフォークを奪ってニンジンを食べた。

「俺は瑛知の看病のために来たのに!」
「だから動けるって言ってるだろ!自分で食べるから良いっつの!それともお前、そんなに俺に食わせたいのかよ!?」
「な……お、俺は別に!こっ……こんなのやりたくないけど、瑛知がやってほしそうに見るからだからね!」
「いやいや見てないから!どんな甘えたがりだ俺は……」

 環が瑛知のフォークを奪ってサイコロステーキを取るが、また瑛知にフォークを奪われる。
 環と瑛知が、ステーキを刺したままのフォークの奪い合いをしているすぐとなりから、利き手で瑛知の皿を持ったままの司狼の小さな空腹の音が聞こえた。

「あっ、先輩ごめん……はい。環の言うこと無視していいから」
「あーーっっ!?」

 フォークを奪った瑛知が、何気なくそのまま司狼の口にステーキを運ぶと、司狼もそのままステーキを食べた。

「えっ……瑛知、俺にされるのはイヤだって言ったくせに……!司狼とならやれるんだ……不潔……っ」
「妙な言い方するな!お前がシロ先輩に持たせるからだろ!? あれじゃ先輩、食べられなくて可哀相だろ!」

 そう言いながら、またフォークで料理の奪い合いをはじめる。司狼も自分の皿の料理をゆっくりと食べはじめた。

 瑛知と環は喧嘩をしつつも、なんとか食事は終わる。三人一緒に椋の部屋に戻るため、長い廊下を歩いていると、環が楽しそうに次の看護プランを話し出した。


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