〜白薔薇の君〜

拍手連載
テイルズ オブ グレイセス





   「白薔薇の君」
      第5話




『ここが、ラント…』



港に着いて開口一番。
いっちゃ悪いが正直、田舎だな、と私は思った(失礼)

もちろんその感想は心の中にしまい込んでおく。

隣ではアスベルも懐かしそうに港町を眺めていた。
聞けばなんと“七年ぶり”の帰郷なんだとか。家出息子か、と小さく呟けば、偶然聞こえたらしいシェリアに「その通りよ」と追い越し際に言われてしまい、これにはアスベルも苦虫を潰したような顔をする。


んー…、複雑だ。


…そして気まずい。





       *




港を出て、整備された道を歩く一行。港を出る直前、アスベルが気を使って亀車を手配しようと言ったのだが、シェリアの「平気よ」という一言によりその案はバッサリと切り捨てられた。



あれ、2人は幼なじみなんだよね…?


アスベルとシェリアの関係に謎が深まるばかりであった。




無言でただひたすら歩き続けるアレックス達。沈黙は痛いなぁ、なんて考えながら下り坂を歩いていると、アレックスは何かを感じ取った。




『──…?』

「アレックス、どうした?」



歩くのを止め、後ろを振り返るアレックスにアスベルとシェリアもつられて、歩みを止める。



『今、何か気配を感じなかった…?』

「気配?」



そう言ってアスベルは周りを見渡したが、何も感じることはなかった。だが、アレックスには何か気配を感じるのだろうか、ある一点を警戒し、ずっと見つめていた。



『…何か来る──。』

「!」


アレックスの呟きにアスベルは剣の柄に手を伸ばす。



それは突如現れた。
いましがた自分達が下ってきた坂の上から姿を見せたのは、鳥形の大きな魔物だった。



「危ない!!」

『…くっ!!』

「きゃあ!!」



一直線に突っ込んで来た魔物に成す術もなく、持ち前の反射神経で、アスベルは右へ、アレックスはシェリアを抱えて左へと飛び退く。



『イーグル!!』



本で見たことのある魔物だ。

弱点を思い出しつつ、剣を抜くアレックス。


イーグルは空中を旋回しつつ、こちらを伺っている。




『確か斬撃に弱いはず…、アスベル!!』

「あぁ!」



シェリアを後ろに下がらせ、戦闘体制を取るアスベルとアレックスにイーグルは再び突っ込んで来る。




『魔神剣・鋼牙!!』

「雷斬衝!!」



同時に技を決め、あっという間にイーグルを倒した二人。その時、一瞬だったが、アスベルの手が光り輝いていたのを私は見た気がした。



─きっと幻覚とか、見間違いとかそんなものじゃないとその時私は思った。



.
9/36ページ