〜白薔薇の君〜

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テイルズ オブ グレイセス





   「白薔薇の君」
      第4話








『はぁ…』



ついため息が零れる
後ろでアスベルが苦笑いしていた。



今、アスベルとシェリア、そしてアレックスはバロニア発ラント行きの定期船を港で待っていた。


だが何故アレックスまでもが彼らと共にいるかというと…、







「アレックス。すまんがお前もアスベルと共にラントへ向かってくれ」





…というマリク教官の一言からである。
その時のアレックスは今までにないくらい声が裏がえってしまったとか。




「なんか、ほんとゴメン。巻き込んで」

『いいよ別に。実地任務なんだし』



講習も公欠扱いってマリク教官も言っていたし。安心安心。


するとアスベルが突然くるりと振り返った。





「そういえば名前…」

『あ、』



言われて思い出した。
自己紹介がまだだったのだ。…お互い同期生なんだし、名前くらい知らないこともなかったのだが。




『アレックスよ。アレックス・フェルディナンド』

「アスベル・ラントだ。しばらくの間だが、よろしく頼む」

『よろしく。』



ここだけの話、実は私アスベルより年下なんだよね。かと言って今更敬語使う気もさらさら無いけど。



その後、到着した船に3人は乗り込んだ。




──…、




『誰もいないし…』




手洗いに行っていた私があてがわれた船室へ戻るとそこはもぬけの殻だった。…さてはあの2人、私に隠れて逢い引きをしているんじゃ…、…などという、やましい考えは甲板で見つけた2人の間に漂う雰囲気で一気にすっ飛んでいった。




「…病気、治ってよかったな」

「…えぇ、まぁ」





あれ…2人は幼なじみのはずだよね。




『……、』



…めちゃくちゃ気まずそう。これはこれでそっとしといたほうがいいだろうか。


そんな事に頭を悩ませていると、話が終わったのかアスベルがこちらへの方へ歩いてくる。


…何故か私はヤバいと感じ取ってしまい、あたふたしてしまった。





─ゴツッ




「……、」


『……、』



飛んで火に入る夏の虫。ふとそんな言葉が脳裏に浮かんできた。

いや、別に盗み聞きをしていた訳では…、否、会話の5割ほど聞いてしまったので、それも言い方によるが。




『いや、その、…2人が居なかったから、探してた…わけでもないんだけど…いや、だから…』



一度パニックに陥るとなかなか落ち着けない所が私の悪い癖だ。



何も言葉を発さない本人の様子を伺おうと、顔をあげると…



「……っ」



……。
笑っていた。



『な!そこは笑う所じゃないでしょ!』

「ご、ごめんっ、つい」


つい、じゃないだろう!!

さっきまで顔色が百面相をしていた私だが、これには頬を真っ赤にさせた。

一体どこに笑う要素があったというのだ、失礼な。



『もう、知らない!』

「あ、本当にごめんって」



悔しまぎれ、足音を強かに鳴らせ、船内の板張りの通路をドスドスと歩いて去る私。それを追うアスベル。



旅先に不安を感じた一時であった。



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