〜白薔薇の君〜

拍手連載
テイルズ オブ グレイセス





   「白薔薇の君」
     第14話







「くそ、見失ったか」

「足の速いヤツらだ。他を探すぞ」

「おう」











『……。』

「……。」

「…ア──むぐっ」

『しー…。』



アスベル、と言いそうになったソフィの口をアレックスは慌てて塞ぐ。

かれこれ、この民家で10分は身を潜めている私たち。



『もう、大丈夫かな…』

「…あぁ。そうみたいだな」


ソフィの口を放してやりアレックスは勝手に人ん家のテーブルのイスに腰掛けた。



『はぁ。なんでこんなに追い掛けまわされなきゃならないんだか…』

「助かったよ。ありがとうアレックス」

『いいよ』


と、言ったアレックスの顔は酷く疲れているようだった。

そんな彼女にソフィが寄る。



「アスベルの言った通り、また会えたねアレックス」

『ん?…あ、』


嬉しそうに笑うソフィにアレックスとアスベルは苦笑いをした。

ラントを出るとき、確かにアスベルもアレックスも「またすぐに会えるよ」、と言ったのだ。
少女はしっかりとその言葉を覚えていて。



だが言った本人ら、こんなにも早く再開出来るとは思っていなかったのだ。

確たる証拠もないのに、子供相手だからと、軽い気持ちで言ってしまったから、罪悪感がハンパない。




『ね、ね!言ったでしょ?』

「あ、あぁ!」



気まずい二人。動揺しまくっているのが目に見える。
それを余所にソフィは満面の笑み。しばらく乾いた笑みの時間が流れた。




動揺した心を落ち着かせて、話題を変える。




『で、なんでここにいるのよ』

「あ、いや、それは…」


と、アレックスが予想してた通り、アスベルはうろたえた様子を見せる。

…やっぱり訳ありか。




『ま、いいか。』

「え…」


意外にもあっさりと引いたアレックス。アスベルはもっと追求されるかと思っていたため、これには驚きである。

こういうさっぱりした性格もまた彼女のいい所の一つなのだろう。…本人、ただ興味が無いだけなのだが…。

そのさり気ない気遣いが今のアスベルにはありがたかった。



「それより、ここ人の家だぞ?」


気になってアスベルは訪ねたが、至ってアレックスはしれっとした態度でくつろいでいる。



『今は空き家だからいいの!』


…だ、そうだ。

「王都は自分の庭!」が口癖のアレックス(城以外は)。
彼女の情報だと、この民家の主は一月前にグレルサイドという王都から南に位置する湖畔の街へ引っ越したんだという。



『それで、アスベルとソフィはこれからどうするの?どこか行き先でもあるの?』

「あぁ。実はリチャードに会いに城へ行きたいんだ。」






 ・・・・、








『はぁあ!!?行って会えるような人じゃないでしょ!!バカじゃない!?しかも呼び捨てだし!!』

「ア、アレックス;」



バンッ!、とテーブルを叩く。
いきなり眼前に迫るアレックスにアスベルもたじたじだ。

そんなにマズいことを言ってしまったのだろうか…、とアスベルは思い考える。



『だいたい何しによ!!?あの人──むぐっ!?』

「しー…」

『……。』



アレックスがソフィにしたことを、今度はアスベルがアレックスにした。

はっ!と我に返ったアレックスは静かに頷く。




『ご、ごめん…』

「いいんだ。気にするな」


落ち着きを取り戻したアレックスは再びストンとイスに腰掛ける。

それに習い、アスベルも対面側のイスに座る。




「アレックスは“あの噂”を知ってるか?」

『“噂”?』


突拍子もない話にアレックスは眉を寄せる。





遡ること──
アレックスがバロニアに着き、数刻遅れてアスベルとソフィも港に到着した時、彼らを追う2人の兵士が信じられない事を言い放ったのだ。






『な、なんて…?』

「……。

 リチャードが、死んだ…と、」




一瞬で私の思考は凍てついた。

帰ってきて感じた違和感の原因はこれだったのだ。だから、街の雰囲気がおかしな程に沈んでいて、兵士達も慌ただしく駆け回っていたんだ。

リチャード様がいらっしゃる城で何か事件が起きたのだ。




(リチャード様が死んだ…?

…そんな、…有り得ない。)





『そんな、バカな…。…!、なら、陛下は!?無事なの!?』

「…わからない。」


と、アスベルは悔しそうに首を振る。
共に王家を守る志を持つ者同士、今の状況は苦汁を飲む思いだ。



「ただ、奴らは“リチャード王子は死んだ”と、」

『…そう。』


一気に場の空気が重くなった。ソフィは一人、理解出来ずただ首を傾げるだけ。




「でもっ、まだ本当かどうかはわからない。もしかしたら無事かもしれない」

『アスベル…』

「そう信じてる。リチャードはきっと生きていると」




彼は何故そんなに前向きなのだろう。…、否、そうでなきゃ、何かに押しつぶされそうになるのだ、きっと。

だが、そんなアスベルの姿勢に少なからずアレックスも励まされた気がした。

少しだけ緊張がほぐれ笑みが零れる。



『すごいね、アスベルは』

「え?」



小さく呟いた声はアスベルにはちゃんと届かなかったが、それでいい。



「今、なんて?」

『なんでもない!』

「?、そう、か」


アスベルはいまいち納得出来ず首を傾げる。



『なら、なおさらどうするの?まさか、堂々と城へ行くつもりじゃ…』

「そんな事しないよ」


シンプルなのは好きだが、今回は状況が状況なだけにそうもいかない。

これにはアスベルも苦笑い。だが彼にはちゃんと考えがあるんだそうで。


「正面から行くのは危険すぎる。そこで、聖堂へ向かいたいんだ」

『聖堂?なんで』

「昔、リチャードが教えてくれたんだ。聖堂には城に繋がる隠し通路がある。実際使った事もあるし、あそこなら誰も知らないから安全だ。」


聖堂に隠し通路。
まさかこの時を予想して造ったのなら、当時の王都建設者はただ者ではないだろうな。

予想外な発案にアレックスも呆然。まさかそんな手があったとは。




そもそも、何故リチャードに会いたいのか訪ねると、「ソフィを預けたい」、だそうなのだ。

こうして自分の側にいることで、危険にさらしてしまった以上、負い目を感じ、リチャードを頼ろうとしたという。

ソフィ本人その事に納得しているかは、わからないが。



『そういうことなら仕方ない、か』



だったら一丁、友達の為に一肌脱いでやりますか!




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