〜白薔薇の君〜
拍手連載
テイルズ・オブ・グレイセス
「白薔薇の君」
第11話
一夜明けて朝──
ラント家の客室で一泊お世話になったアレックスは、まだ陽も登らない朝、一階の踊場でアスベルを見つけた。
壁に飾られたラント一家であろう絵画を懐かしそうに見つめる後ろ姿からは、どこか清々しいものをアレックスは感じた。
『……。』
アスベルの事だ。
後ろにアレックスがいることなど、とうに気づいているだろう。
そう思ってアレックスは静かにアスベルの隣に立ち、“おはよう”も言わず一緒に絵画を眺めた。
静かに流れる沈黙が不思議と心地良い。
「アレックス、」
『?』
ふと、アスベルが沈黙を破った。
「おれ、騎士学校やめるよ」
『…そう。』
アスベルの口から出た言葉は、アレックスの中では予想の範囲内だった。むしろ、いつ言うのか待っていたくらいだ。
アレックスの素っ気ない態度にアスベルは苦笑い。
「驚かないんだな」
『驚いてほしかった?』
「いや。そういうわけではないんだが…、」
ただ…、とそこで言葉に詰まってしまう。
すると今度はアレックスが沈黙を破った。
『みんな、待ってたんだよ…。アスベルがそう言うのを。』
「アレックス…」
『私だって…』
そう言ってアレックスは再び絵を見上げた。
『いつの時の絵?』
「え?あぁ、おれが9歳の時のだ」
突然変わった話であったが、アレックスと同じように見上げて、微笑んだ。
切り取られた時の描かれた一枚。
優しく微笑むケリー、
不器用に笑うアスベルと、恥ずかしそうにはにかむ水色の髪の男の子。
そして…、
『アストン様……』
無愛想に、家族を守るように立つアストンの姿。
その絵にアスベルも目を細めた。
「バカだよな、おれ。やるべき事なんて、最初から決まっていたはずだったのに…」
自分しか出来る人はいないのに…。これではまるで、それから逃れるために騎士学校に入ったように思えてならない。
『…知らずにバカをやって、後になって気づいて後悔する。少なくとも、それが人だよ。』
「……。」
『気づいた後、同じことを繰り返さないように、同じバカをしないようにと、悩んで…苦しんで、そうやって人は生きてきたのでしょう…?』
─長い時代(とき)の中をずっと…。
『私もアスベルも、その長い時の中の1人。過去はもう変えられない。でも未来は変えられる。私達の手で。』
「未来は変えられる…」
『そういう事、でしょう?』
にっこりと笑うアレックス。いま思えば、彼女の笑顔を見たのはこれが初めてだったのかもしれないと、後にアスベルは思うのだった。
「そう、だよな…。」
未来は変えられる。
過去を悔やむ暇があるのなら、少しでも前に進まなくては──。
だが過去を蔑ろにするわけではないのだ。その過去を背負って今を生きる。それが、自分達だ。
「おれ、頑張るよ」
『うん。』
「アレックスに笑われないように」
『…笑った覚えはないけど、』
「ははっ、情けない所を見せないように、かな?」
『うん。信じてるよ。……、…という訳で、早速仕事ね!』
「─は?」
くるりと振り返ったアレックス。ニヤリと笑うその顔にアスベルは至極嫌な予感を感じたのだった。
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テイルズ・オブ・グレイセス
「白薔薇の君」
第11話
一夜明けて朝──
ラント家の客室で一泊お世話になったアレックスは、まだ陽も登らない朝、一階の踊場でアスベルを見つけた。
壁に飾られたラント一家であろう絵画を懐かしそうに見つめる後ろ姿からは、どこか清々しいものをアレックスは感じた。
『……。』
アスベルの事だ。
後ろにアレックスがいることなど、とうに気づいているだろう。
そう思ってアレックスは静かにアスベルの隣に立ち、“おはよう”も言わず一緒に絵画を眺めた。
静かに流れる沈黙が不思議と心地良い。
「アレックス、」
『?』
ふと、アスベルが沈黙を破った。
「おれ、騎士学校やめるよ」
『…そう。』
アスベルの口から出た言葉は、アレックスの中では予想の範囲内だった。むしろ、いつ言うのか待っていたくらいだ。
アレックスの素っ気ない態度にアスベルは苦笑い。
「驚かないんだな」
『驚いてほしかった?』
「いや。そういうわけではないんだが…、」
ただ…、とそこで言葉に詰まってしまう。
すると今度はアレックスが沈黙を破った。
『みんな、待ってたんだよ…。アスベルがそう言うのを。』
「アレックス…」
『私だって…』
そう言ってアレックスは再び絵を見上げた。
『いつの時の絵?』
「え?あぁ、おれが9歳の時のだ」
突然変わった話であったが、アレックスと同じように見上げて、微笑んだ。
切り取られた時の描かれた一枚。
優しく微笑むケリー、
不器用に笑うアスベルと、恥ずかしそうにはにかむ水色の髪の男の子。
そして…、
『アストン様……』
無愛想に、家族を守るように立つアストンの姿。
その絵にアスベルも目を細めた。
「バカだよな、おれ。やるべき事なんて、最初から決まっていたはずだったのに…」
自分しか出来る人はいないのに…。これではまるで、それから逃れるために騎士学校に入ったように思えてならない。
『…知らずにバカをやって、後になって気づいて後悔する。少なくとも、それが人だよ。』
「……。」
『気づいた後、同じことを繰り返さないように、同じバカをしないようにと、悩んで…苦しんで、そうやって人は生きてきたのでしょう…?』
─長い時代(とき)の中をずっと…。
『私もアスベルも、その長い時の中の1人。過去はもう変えられない。でも未来は変えられる。私達の手で。』
「未来は変えられる…」
『そういう事、でしょう?』
にっこりと笑うアレックス。いま思えば、彼女の笑顔を見たのはこれが初めてだったのかもしれないと、後にアスベルは思うのだった。
「そう、だよな…。」
未来は変えられる。
過去を悔やむ暇があるのなら、少しでも前に進まなくては──。
だが過去を蔑ろにするわけではないのだ。その過去を背負って今を生きる。それが、自分達だ。
「おれ、頑張るよ」
『うん。』
「アレックスに笑われないように」
『…笑った覚えはないけど、』
「ははっ、情けない所を見せないように、かな?」
『うん。信じてるよ。……、…という訳で、早速仕事ね!』
「─は?」
くるりと振り返ったアレックス。ニヤリと笑うその顔にアスベルは至極嫌な予感を感じたのだった。
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