〜白薔薇の君〜
ガタガタと大地が揺れる。その振動を発生させているそれが、すぐ目の前まで迫った所でアスベルが合図を発した。
「来たか!二人とも、花畑まで走るぞ!」
はい!という返事と共にアレックス達は全力で駆け出した。
先程通ってきた道をひたすら逆戻り。
『速いっ…、…追いつかれる!!』
「あと少しだ!」
兵器とアレックス達との間は、もう5mもなかった。予想外に速かった兵器はその武器でしっかりとアレックス達を捉える。
「アレックス、あそこの脇道へ反れるんだ!花畑はその先だ!」
『わかった!』
地図を表記してある看板の裏に、あまり目立たない脇道が見えた。来るときは気づかなかったが、どうやらこの道が裏山への入り口のようだ。
その先は、曇り空も相成って薄暗く不気味な雰囲気を漂わせていた。
木々を縫うように走り抜け、開けた先に目指す花畑のある崖にたどり着く。
『くっ…!』
ドリルのような装備の攻撃を間一髪で横へ飛び、その勢いで崖に落ちそうな兵器にトドメの輝術を発動する。
『ファイヤーボール!!!』
後ろから押された兵器はバランスを崩し、真っ逆さまに落ち、海に消えていった。
だが、まだまだ安心は出来なかった。
『─これは…、…まずいっ!』
「しまった、かこまれた…っ」
兵器は1つではなかったのだ。気づけばアレックス達は追い込まれ、逃げ場を失ってしまったのである。
絶体絶命。
放たれた砲撃に、アレックス達はさらに崖っぷちへと追いやられる。
…どうしよう…、
どうすればいい…?
どうしたらいい…──?
『誰か…助けて…──』
(───…ード様…─、)
──その時だった…──
アスベルの、諦めたくないという強い想いが奇跡を起こした。
突如、淡く薄桃色に輝きだしたアスベルとシェリアの体。
それに共鳴するかのようにアレックスの目の前の空間に二人と同じ光が溢れ出す。
『な、…何っ!?』
…一体何なの!!?
軽くパニック状態なアレックスを余所に、光は徐々に人の姿を型どり始める。
地に着きそうな程長く、しなやかな髪。2つに結われた薄紫色のそれの持ち主は意外にも幼くて。
「まさか…、…フィ…?」
『──…?』
側でアスベルが小さく呟く。誰かの名前を呼んだようだが、私には聞き取れなかった。
それは七年間、一度たりとも忘れることのなかった姿であった…──。
──おかえり、ソフィ…──。
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