第18話
夢小説設定
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意識が無くなる直前の記憶を辿った。
目を閉じる前、光が見えたような気がした。
『本当に…よかった…。』
両手を握りしめ祈るように神に感謝した。
神様、私の自分勝手なお願いを聞いてくださりありがとうございます。
心のなかで切実に祈った。
これで私の心は救われた。
バフマン様の時のような思いをしなくて済んだのだから。
『あの、ラジェンドラ王子とガーデーヴィ王子はどうなりましたか?』
「うむ。カリカーラ王は神前決闘のあと数時間後に亡くなられたゆえ、結果的にラジェンドラ殿が国王の座についた。罪人であるガーデーヴィ王子は逃走したが妻であるサリーマ殿の手で捕まったのち、処刑され今頃は王宮の城門の横手に首が晒されておるだろう。」
『そうですか…。ラジェンドラ殿に王位を継がせることに加担した側ですが、なんとも後味が悪い結果ですね。』
「一国の王子として生まれた身がまこと無惨な最後といえよう。」
『私達も決して他人事とは言えませんね。』
ナルサスが難しい顔をして頷く。
「そうだ。これはシンドゥラの情勢の話だが、我らも他人事ではない。アルスラーン殿下とヒルメス殿下。今回の結果が最悪の場合どちらかに訪れないとも言えぬ。」
この先、ルシタニアとの戦いでエクバターナの城門で首を晒されるのははたしてアルスラーン殿下か、ヒルメス殿下か。
あるいは…。
「エレン。」
『は、はいっ。』
つい一人考え込んでしまい、名を呼ばれたことに驚く。
「とにかく、今お主に必要なのは休息だ。これからのことはその後で考えるとしよう。軍のことはこちらに任せてゆっくり休むといい。」
『はい。ありがとうございます。』
ナルサスの提案に素直に受け入れ、有り難く休ませてもらおう。
長居をしてはいけないとナルサス、ダリューン、ギーヴは退室する。
『あの、ダリューン様…、』
「?、どうした?」
『えーっと…、その…、』
口ごもる彼女の様子をナルサスは悟ったのかふっと笑みを零すと、気を利かせて不思議そうにするギーヴを連れて退室する。
残されたダリューンは自分に用がありそうな彼女の傍へもう一度寄り、椅子に腰掛ける。
その距離感が絶妙に遠くてやるせない。
本当はもっと近くにいて欲しいとこの時なぜが欲が出た。
『あの…、もっと、近くで、話したい、です…。』
「――!」
虫の鳴き声かのような小さな声で言われ、はたして許されるのかと自問自答しながらもダリューンはエレンの要望に答えたいと思い、椅子から立ち上がりベッドの端へ腰掛けた。
手を伸ばせば届きそうな距離感に頭がパニックになりそうなのを押し込めて答えてくれたダリューンに嬉しそうに笑って見せた。
ダリューンとはエクバターナにいた頃は王宮で見かけるとよく互いに話しかけていた。その二人の時間がエレンにとってかけがえのないもの。
それがアトロパテネ開戦後は目まぐるしく動く戦況に振り回され、ようやく再会出来た彼ともそんな時間はなく。
どこか寂しさも感じていた。
ダリューン様もそう思ってくださっているだろうか、などと淡い期待が湧き出てくる。
かなり疲れているのか、思考が覚束ない頭で無意識にダリューンの左の額にそっと触れる。
そこはバハードゥルとの戦いで傷を負ったであろう場所。
突然の彼女の行動にどきっとしながらもダリューンは大人しくそれを受け入れた。
『傷跡にならなくて、良かったです。』
「俺は男だ。傷跡のひとつやふたつどうってことない。」
『精悍なお顔に傷が付いてしまっては、せっかくの男前が台無しですよ?』
「そうか?エレンからみた俺は“男前”なのだな。」
くすくすと笑う。
いったい自分はなにを口走っているのやら。
あとできっと悶絶するに違いないと後悔しながらも、彼と過ごす時間が惜しくて目が離せない。
『そうですね。ナルサス様に初めてお会いした時、“男前”の友人は“男前”なんだな、って思ってました。』
「類は友を呼ぶ、というやつか。」
否定しないことろがまさに彼らしい。
『あの時はありがとうございました。支えてくれて。とても安心しました。』
ダリューンはエレンの頭にそっと手を乗せる。
ぽんと優しく撫でる手はとても戦場に立つ者の手とは想像つかないほど優しかった。
最近よくこれをされる。以前は彼が私に触れることなどなかったのに。
「エレンがやろうとしたことを理解した瞬間なぜかそうした。…だがあそこまで無茶をするとは思ってもみなかったぞ。」
『いてて。』
頭に乗せていた手がゆっくりと頬に降り、触れられた手にどきっとしたが次の瞬間、頬をむにっとつねられる。
予想以上に柔らかいという感想は彼の胸の内にそっと仕舞われた。
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