第16章
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二月十日 決戦の時
ウライユール北部
チャンディガルの野
ラジェンドラ軍 五万
ガーデーヴィ軍 十三万
シンドゥラの戦いの習慣では
正面から敵と対面した時
それぞれの軍の総帥が自分の正しさを大声で主張する
戦いはまず舌戦から始まるのである
* * *
そのころパルス軍はというと。
ラジェンドラとガーデーヴィが決戦を繰り広げる数刻前。
エレンはキシュワード様より届いた荷を解く。
『あ――。』
それは以前勝負に勝った褒美に新しい甲冑が欲しいと望んだ彼女に用意してくれたものだった。
遠征までに間に合わなかったが、完成次第送り届けるとキシュワード様は言ってくれた。
シルバーの胸当てと腰当て。
手甲と脛当て。おまけに中に着用する服まで一緒に用意されている。
紺色の生地の服の上から銀色の武具を身につける。
腰回りはスカートのような足首まである生地がひらりと動き。
その切れ目から右足が覗く。
前より鎧で覆われる部分が減ったが、かなり動きやすい。
添えられていた手紙には、防御性能より機動性を重視した、と一筆。
“ダリューンのような防具より、お主に見合ったものを作らせたつもりだ。殿下のために役立ててくれ。”
そこには甲冑の他に剣も収められていた。
すらっと輝く剣先をじっと見つめる。明らかに私が使うために拵えてくれたものだとわかる。
パルス兵に支給されるものより遥かに軽く、洗練された刃。
カチンと鞘に収めると、腰に装備しエレンは出撃するため愛馬の下へと向かう。
部屋の外で待機していたセトが現れたエレンの姿にすこしだけ目を見開いて見ていた。
「ずいぶん印象がかわりました。」
『そう?似合う?』
「…。」
『なにか言ってよ。』
そういうことは言い慣れていないようだ。
彼の性格上、衣装の変化に気づいてくれただけ良いことにしよう。
少数のパルス兵を残してアルスラーン殿下率いる本隊は夜陰に乗じてグジャラート城を後にする。
シンドゥラの山間の道を気づかれないように通り抜ける。
現在、グジャラート城には城を奪還すまいとウライユールからガーデーヴィ軍が二万の軍勢を引き連れ睨みを効かせている。
いちいち相手にしていられない、とナルサスの策を講じた。
夜通し、行軍し日が登りきると眼前のチャンディガルの野でラジェンドラとガーデーヴィが今まさに激闘を繰り広げていた。
パルス軍はそのガーデーヴィ軍の側面に突っ込んでいく。
その隊列にはエレンも加わっていた。
まさかの登場にガーデーヴィだけでなくラジェンドラでさえ驚きを隠せない。
「…バカな…、パルス軍!」
「ガーデーヴィ殿下の本陣が崩される!象を戻せ!」
混乱するガーデーヴィ軍。
ラジェンドラはアルスラーン殿下の下へ駆け寄った。
「アルスラーン殿!我が盟友!いったいどうやってここまで来られた!?グジャラートのパルス軍には二万のガーデーヴィ軍が睨みを効かせていたはず!」
「ちょっと飛んで参りました!」
「飛んで…って…、」
とんちんかんなことを言う幼い盟友にラジェンドラも言葉が出ない。
しかしその頼もしさはいったいどこから溢れ出てくるのだろう。
「もう少し早く参上するつもりでしたが遅くなって申し訳ありません。全軍突撃ー!」
おぉー!という雄叫びとともに駆け抜けるパルス兵。
その間ラジェンドラはナルサスからどうやってここまで来たかを聞いた。
パルス軍の勢いは止まらない。
ガーデーヴィの騎兵、歩兵部隊をどんどん押していく。
「側面崩されます!」
「殿下ご指示を!」
「指示するまでもなかろう!戦象部隊だ!えぇい役に立たん奴らめ…!象だ!象に決まっている!」
戦況が不利な方へと傾いていく様にガーデーヴィは苛立ちを隠せない。とにかく戦象部隊を出せとそればかり。
しかし戦象部隊が前に出だ途端、安心したの束の間象たちの様子がおかしい。敵だけでなく味方も見境なく蹴散らしていく。
どうやら操っている者のせいではなさそうだ。
それを遠くから見ていたエレンも象の異変に気づく。
『なにか様子がおかしいわね。』
「ダメだ!抑えきれん!えぇい…このままパルス軍に突っ込むぞ!」
「銀の鎧を着た女が指揮している!あれが主力部隊だ!」
『(来た…。)』
「潰せー!」
象の大きさに尻込みするパルス兵。
もちろんまともにやりあう気はさらさらない。
パルス軍の旗を振りかざし、エレンは声を張り上げた。
『退けぇ!後退する!慌てるな!』
戦象部隊を引き付けながら後退する。
踏み潰せと叫ぶガーデーヴィ軍。
『まだだ!まだ引き付けて!』
後退するポイントである茂みの手前まで象を引き付ける。
もう少しのところでエレンは後方に続く部隊に合図を送った。
それを見た騎兵たちは一斉に左右に別れ目の前が突然視界が拓ける。
するとその先で待ち構えていたのは、
「放てー!!」
巨大な槍の砲台だ。
ナルサスの指揮のもと、槍は象へと命中する。
遠くからでもよく見えたのか「なんだあれは!?」とガーデーヴィも驚く。
悲鳴と象の鳴き声が野に響き渡る。
発射されてまもなく次の矢が装填される。
しかもこの槍、ただの槍ではない。
象にも効くように改良された毒を仕込んだ槍。人間が少しかすっただけで即効性は言うまでもない。
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