第16章
夢小説設定
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『初めて見ました。』
「“戟”?」
聞き慣れぬ言葉に殿下はダリューンを見る。
「絹の国(セリカ)で使われている武器です。“戟”にもいろいろありまして、これは【方天戟】というやつですな。」
突く
斬る
薙ぎ払う
さらに馬や象に乗っている者を引っ掛けて落とす事もできる武器だと。
『まさに次の戦にもってこいの代物ですね。さすがキシュワード様。シンドゥラ国のことよくご存知で。戦象部隊のことを考えての手配なのでしょう。』
ただし、これを扱えるのは体の大きいダリューンに限定されるだろう。
私なんかが扱えるものではない。
「そういえばダリューンの槍にも房が付いていたな。」
方天戟の先に飾られる房。
それはダリューンが愛用する槍にも付いていたことを殿下は思い出す。
目の付け所が嬉しかったのか、ダリューンは顔を輝かせる。
「絹の国の武器によく付いている物です。格好いいので真似をしました!」
あまりの熱弁に圧倒され、へぇ…。とだけ返すアルスラーン。
「ダリューン様は絹の国に行ったことがあるのでしたよね。」
『――っ。』
エラムの言葉にエレンがぴくりと反応する。
それに気づかれることはなく、「国の使者団の護衛でな。」と返事をするダリューン。
「今度お話を聞かせていただいてもよろしいですか?異国のことを知りたいのです。」
「あぁ、いいぞ。」
楽しそうに話す男三人から離れて歩くエレンに誰も気づかない。
ダリューンが楽しそうに絹の国の話をしているを見てるだけで心臓がぎゅっとして痛い。
あのときもそうだった。ダリューン様の絹の国での浮名。それがエレンの耳にも届いたとき、あまりの辛さに食事も喉を通らなかった思い出がある。
あれから随分経つのに未だに辛いのだな…、と自覚する。
「せっかくの友好国なのだからルシタニアからパルスを取り戻し、落ち着いたらまた使者を送りたいものだ。その時に同行してはどうだ?」
殿下からの提案にエラムは嬉しそうにする。
エラムの“夢”を殿下は知っているのだ。
「ダリューンにはまた護衛で行ってもらおうかな。」
「是非に!…かの国にまた、行くことが叶いますよう…。エレン、」
『え?』
不意に名を呼ばれたので心臓がどきっとした。
「そのときはお主も一緒に行くか?」
『あ、申し訳ございません。どちらに行かれるのですか?』
「聞いてなかったのか。ルシタニアからパルスを取り戻した後、また殿下が絹の国へ使者団を送られる。その際にエラムと俺と一緒にどうだ?」
『セ、絹の国に…、』
心境は複雑だった。
使者団と一緒に行こう、と彼は誘ってくれている。
一緒に居られるのなら気持ちは行きたい。どこだろうと。だが絹の国となると…。
浮名のお相手がいる…。
『そうですね…、考えておきましょう。』
それだけ返した。
その返事を聞いたダリューンは少しだけ表情に悲しさを滲ませたのだった。
彼女が曖昧な返事をしたのは絹の国だったからなのだが、ダリューンは違う意味ではぐらかされたと思った。
エレンに将来の話をするたび彼女はただ少しだけ寂しそうに笑うのだ。
否定も、肯定もせず。
まるでパルスの未来に自分はいない、と告げているかのようで。
エレンとダリューン。
どちらも胸にもやもやしたものを抱えたまま、夜が明けたのだった――。
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