第3章
夢小説設定
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エクバターナの夜空に無数の光が灯る。
それば火矢であると気づくのに時間がかかった。
昼間しか攻撃をしてこず、日暮れには退却するルシタニアがまさか夜に攻撃を仕掛けてこようとは思ってもみなかったからだ。
いや、もしかしたらこれも作戦の内かもしれない。
此度の戦。どうやらルシタニア勢に頭を使う者いるようだ。毎回突っ込んでくることしか脳のない軍だったのに。
ひと際激しい攻防に手を焼くパルス軍。
次々と飛び交う凶報にサームもてんてこ舞いだった。
しかしさらなる凶報が彼に届けられる。
というより、その惨状を見て言葉を失った。
王宮から火の手が上がったのだ。それもかなり激しく。
城には王妃様、そして娘のエレンもいる。
その娘は火が苦手なのだ。
松明程度ならまだ耐えられる。だがしかし今目の前で激しく燃える城に果たして無事でいられるだろうか。
焚火や暖炉の火さえ怖がる娘だ。
サームは心配でならなかった。
「ここは任せる!」
部下にそう言い残し、サームは馬に跨った。
目指すは王宮だ。
「無事でいてくれよっ。」
しかし時すでに遅し。
王宮内はルシタニア兵で溢れかえっていた。
「こいつらどこから!?」
『かまうな!火を消せ!ルシタニアを打ち取れ!怯むなー!』
「「おぉー!!」」
兵士の士気を上げようと喝を飛ばすエレオノール。
しかしその心中穏やかではない。これだけの火の手。手が震えて仕方ない。嫌な汗が首筋を伝う。
『(これではまるで十六年前と同じ…っ、)』
脳裏に浮かぶ過去の記憶。
恐怖の象徴ともいえる己の過去。
どこからともなく湧いてくるルシタニア兵。
いったいどこから、と考える暇もなく次々に切り捨てていくエレオノール。しかし周りはそうもいかない。どんどん倒れていくパルス兵に思わず目を背けたくなる。
王宮内のルシタニア兵を打ち取りながら駆けていると、ガンガンと剣が激しくぶつかり合う音がした。
聞いただけでわかる。強者同士が戦っている時の音だ。万騎長同士が稽古をしている時よく聞いた音。
通路の角を曲がった先で戦っていたのは。
『父上!…と、カーラーン、様?』
まさか本当に万騎長同士戦っていようとは夢にも思わなかった。
『どういうことですかっ、カーラーン様!』
「エレンかっ」
「カーラーンよ、寝返った話は本当だったのかっ!なぜ国を売った!」
「故あってのことよ。お主にはわからぬ!」
「あぁ。当たり前だ!わかるものか!」
『父上!…くっ、そこをどけ!』
ぶつかり合う二人の元へ行きたいのにルシタニア兵がそれを邪魔する。切っても切っても全く先へ進めない。
「降伏せよ。サーム、エレンも。イアルダボート教に改宗すれば地位も命も保障してやる。」
「犬が人間の地位を云々するなど、片腹痛いっ。」
「待てサーム!」
「ゆくぞエレン!」
『父上!』
こちらに駆けてくるサームに不思議と安堵の気持ちが沸く。早く王妃様をお助けせねば。そう思っていた。
その時だった。
『え…、』
目前にいたサームの身体を槍の切っ先が貫いたのだ。
やけにその瞬間だけ時間が止まったかのように見えた。
「な、に、もの…、」
「…。」
槍を投げたのは銀仮面で顔を隠した男だった。
ルシタニアとはまるで雰囲気が違う。
崩れ行く父の背中にトドメとばかりにルシタニア兵が斬りつける。
『ちち、うえ…?』
倒れ伏した父の姿に呆然と立ち尽くすエレン。
なぜ父上は倒れているの?
さっきまでそこで戦っておられたのに。
そっと手を伸ばすエレオノール。その背後をルシタニア兵が襲いかかる。
しかし聞こえたのはエレオノールの悲鳴ではなくルシタニア兵だった。
襲い掛かる敵に剣を一閃。三人を同時に打ち取る。
『よくも…、よくも、父上を…っ』
「待て、エレン。剣を納め降伏するのだ!」
『黙れー!!』
カーラーンの制止も空しく、立ちはだかるルシタニア兵を次々と倒し父の仇である銀仮面の男の元へ襲い掛かるエレオノール。
『うわぁああ!!』
「―!!」
ガキィン!!と渾身の一撃を難なく受け止められる。
しかし娘の鋭い眼光とビリビリと感じる気迫に銀仮面はほう…、声をこぼす。
このときはまさか目の前にいる銀仮面の男が自分に縁あるものだとは知る由もなかった。ただ父を討たれた悲しみに激情し無我夢中で銀仮面に襲い掛かる。
受け止められた一撃を跳ね返すように押し戻されたエレオノール。するとその一瞬のすきを狙ってルシタニア兵が剣を振るう。
刹那、背中に熱と衝撃が走った。
あぁ、斬られたのだと理解するのにすこし時間がかかった。
斬られた勢いのまま床に倒れるエレオノール。
カラン…と剣が床に転がった。
パルス兵を打ち取ったことに喜ぶルシタニア兵。
背中を斬られたエレオノールだったが、その衝撃と痛みにむしろ逆に冷静さを取り戻した。
ぐっと力を込めて起き上がったエレオノールにルシタニア兵は驚愕する。
『ふふ…。』
思わず声が零れる。
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