第14章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「面白みのない戦でござる。」
『ダリューン様、』
「ただっ広い平地でぶつかり合っただけの単純に力が力を制す戦だった。これでは殿下やエレンが戦術を学ぶ余地がない。」
『私…?』
まさか殿下だけではなく、自分の名前も彼の口から上がってくるとは思わなかった。
その彼の愚痴に旧友がなだめる。
「なに。すぐに面白くなろうよ。まだ敵は戦象部隊も出してきておらぬのだからな。」
「…。」
ふとダリューンの記憶に先程戦ったプラダーラタの最後の言葉が思い出される。
あの、化け物を出さねば勝てんな…。
「(あれは戦象部隊のことか…、)」
彼の疑問は解けぬまま、エラムが補給の食事を届けてくれたので一時休息をとることになった。
「時にラジェンドラ殿下。この辺に清らかな泉はありませんかな?」
唐突にナルサスがそう尋ねる。
「泉?どうだったかな…?兵馬の飲用か?」
その問いにナルサスは否と答える。
「年が明けますのでパルス式の新年の儀を行わねばなりません。」
『あ、そうか。もうそんな年の暮なのですね。』
エレンはその儀をいつも王都エクバターナで見ていた。だが今は遥か遠い異国の地。そう考えるとずいぶん遠くまで来たものだと感慨深い。
「アルスラーン殿下がおられますので。」
「あぁ、そうか。父上の行方がわからぬ今、パルスの行事は私が行わねばならないのか。」
パルス式の新年の儀。
それは新しい年の最初の太陽が昇る前に武装して泉に赴き、かぶとを脱いでその中に水を湛え、陣営に戻り将兵の代表から国王の血を象徴する葡萄酒を一杯献上され、かぶとに湛えた水にそれを注ぐ。
それを私達は生命の水(キズイル)と呼ぶ。
その生命の水と呼ばれるものを、
三分の一は天に向かって、天上の神々に捧げ
三分の一は大地に注ぎ、大地の恵みに感謝を
そして最後の三分の一は国王が飲み干すというものである。
そういうことならとラジェンドラ殿下は糧食の配布を行っていたある男を使命する。
「おいお前。アルスラーン殿下を案内してさしあげろ。」
「はっ。」
若そうな男だった。
突然の指名にもうろたえることなく返事をしたシンドゥラの男。
細身ではあるが服の上からも鍛えられた身体をしているのが容易にわかった。
「泉の場所を確認しておきたい。」
「わかりました。こちらへ。」
男が頷くとアルスラーン殿下を泉へと誘導する。
草葉を掻き分け、岩壁に挟まれた道を通り抜けると次第に小川を遡上する道に出る。
道中をダリューンとファランギースが護衛に付いた。
道案内をするシンドゥラの男をじっと観察する。
その身のこなしや、立ち振舞は彼がかなりの手練だと見て取れた。
無事泉の水を手に入れるとその翌日、日が登りきる前に新年の儀が執り行われた。
「アルスラーン!」
「アルスラーン!」
「天上に輝く星!」 「神々の寵児よ!」
「御身の智と力によりて、国と民に平安をもたらさんことを!」
パルス歴三二一年の新年はシンドゥラ国 西北の曠野で明けた。
この年 九月
アルスラーンは十五歳になるはずである。
九月まで…生命があれば―――。
第14章・完 2025/09/05