第14章
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しかし侍女は震える手でおずおずとその手に持つ何かをエレンに差し出した。
差し出されたものが一体何なのか、受け取れずに侍女とそれを交互に見る。
「あ、あの、エレオノール様の遠征のご無事を祈ってお守りを、作りました。う、受け取って、いただけますか…?」
『…。あぁ、お守りね。ありがとう。嬉しい。』
「…っ!」
侍女がわざわざ私のためにお守りを作ってくれたのだと理解するのに時間がかかった。
それは手のひらサイズの小さな巾着のようなお守りだった。
きっと私にいらないと言われるかもしれない可能性を想像していたのだろう。恐る恐る差し出したそれを迷うことなく受け取ってくれたことに侍女は安堵のため息をつく。
「無事のご帰還をお待ちしております、騎士様。」
『えぇ。お守りありがとう。』
侍女は軽く頭を下げ、出立の妨げになると思いすぐにその場から立ち去っていった。
あ、名前聞くの忘れたな。
受け取ったお守りをじっと見てふと思うのだった。
「あなた様に“そのような”ご趣味がお有りだったのは意外でした。」
『…っ!ちょっ!セト!誤解よ!何勝手なこと想像してるのよっ。』
一連の会話をそばで聞いていたセトが爆弾発言。
「普通そういうものは異性同士で贈り合うものではないかと。」
『う゛っ…。しかたないじゃない。せっかく用意してくれたものを受け取らないわけにはいかないでしょう…。』
「変な誤解が生じないと良いですね。」
『…。(こいつ…、マジで真面目なやつ。)』
ふんだりけったりな出来事ではあったが、ほんのちょっぴり彼と距離が縮められた?様な気がしたエレンであった。
パルス歴 三二〇年 年の暮
エレンを含めた王太子アルスラーン一行は王都エクバターナの奪還を前に寄り道という名の初の海外遠征に旅立ったのだった。
* * *
ペシャワール城を出発して数日、アルスラーン・ラジェンドラ両軍は国境に位置するカーヴェリー河を渡河していた。大きな河は大の大人の肩くらいまでの深さがあり、エレンは愛馬ヴァナディールに乗っているためなんとか渡れたが、馬がなければ頭まで浸かるため泳ぐはめになっていただろう。
そもそも私は泳げるのだろうか…?
ふと疑問が湧いた。
先にパルス軍が渡河しきったタイミングで伝令がもたらされる。
前方にガーデーヴィ軍、その数一万五千。
『さっそく来たか。』
「いや、奴らの狙いはパルス軍ではない。」
『ナルサス様?』
まるで予想してたかのよう冷静に判断するナルサス。狙われている方に視線を送る。
『まさか狙いはまだ渡河しきっていないラジェンドラ軍?』
無防備なラジェンドラ軍に突っ込んできたガーデーヴィ軍。勢いそのまま突っ込んきた軍勢の中で突出して兵をなぎ倒していく者がいた。
その剃髪の男を見るやいなや、ラジェンドラの兵士は口々に「プラダーラタだ!」と悲鳴を上げて尻込みする。よほどの強者なのだろう。
するとダリューンが一騎打ちを申し出た。
「お相手つかまつる。」
「何だ。双刀将軍とかいうやつは出てこんのか?貴様、千騎長か?万騎長か?褒賞に値する首でなければ下がっておれ。」
「ご期待に添えず、申し訳ない。今は万騎長でもなんでもない。ただの戦士でござるよ。」
ただ静かにそう答えた。
ガンガンと剣がぶつかり合う音が平野に響き渡る。
激しく打ち合うと、ふと距離を取った二人。
「…。一つ尋ねる。」
そうプラダーラタが口を開いた。
「ペシャワールには双刀将軍キシュワードとバフマンとかいう万騎長がいるそうだな。」
「あぁ。」
「そいつらは“ただの戦士”の貴様より強いのか?」
「俺ごときの経験値ではご両人の足元にも及ばんよ。」
「…そうか。…残念だ。」
そう言いプラダーラタは静かに馬から落ちていく。その身体には致命傷の切り傷がつけられていたのだ。
勝者はダリューン。
その戦いを見ていたエレンは胸の内で息を小さくついたのだった。
『(ご無事で良かった。)』
彼なら負けることは万が一にもありえないと信じてはいたがこうも目の前で戦う場面を見るとドキドキが抑えられない。
「エレン様、敵が来ます。」
『えぇ。』
気を抜いたエレンにそばにいたセトが声をかける。
プラダーラタの敗北を気に、パルス軍とラジェンドラ軍がガーデーヴィ軍に一気に押しかける。
正面でぶつかり合うシンドゥラ軍同士。そのガーデーヴィの軍勢の側面をパルス軍が突っ込む。
すると二つに分断されたガーデーヴィ軍。
「エレン!ガーデーヴィ軍の後方半分は任せたぞ!」
『――!はいっ!セト、ついてきて!』
「はっ。」
エレンにとってここまで規模の戦場は久方ぶりである。まだ敵味方の区別がつく時点でそこまで乱戦状態ではないのだが。
『はぁ!』
ザンッ!とガーデーヴィの兵士を一人二人と沈めていく。ラジェンドラ軍と武装が似ているので間違えて斬ってしまいそうだ。
士気が高いパルス軍にとって決着がつくのに半日もかからなかった。
ダリューンを先頭に本軍に戻ったパルス軍。
そのそばでラジェンドラ王子が意気揚々と彼の帰参を褒め称えたがまるでスルーし、アルスラーン殿下に帰参のご挨拶をしたのだった。
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