第13章
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『アルスラーン殿下にお会いした時、思ったんです。…殿下なら私の言葉を聞いてくださるのではないか、と。』
「エレン…、」
『だから騎士となってあなた様のお力になろうと決めたのです。いずれ王位を継がれた時、私の申し上げることを少しは聞いていただけるのはないかと…。でも殿下はご自身の意思で奴隷解放を望んでくださった。それが本当に嬉しかった…。』
「私も嬉しかった。お主が私の前でそう言ってくれたこと。同じ考えを持つ者がいるということ。ダリューンやナルサスは賛成してくれたが、エレンは私と同じように奴隷の解放をしたいと自ら望んでくれているのだと。」
私と殿下は同じだ。
途端、胸の奥から何かが込み上げてきて喉までくるような感覚がした。何と言えばいいのだろう。
無性に剣を振りたいような、城壁から思いっきり叫びたいような。
私はひとつの覚悟を決めた。
『殿下。』
「ん?」
『私、決めました。』
何を?アルスラーンは首を傾げた。
さらりと銀髪が揺れる。
『私万騎長を目指します。』
「え…っ!?エレン…!?それは…っ」
アルスラーンは目をぱちくりと瞬かせる。
そして一歩足を引いて身体を反らす。これにはアルスラーンも驚きを隠せなかった。
女性でその地位についた者は未だかつてないからだ。そしてそれがどれほど困難な事かも知っている。
『所詮私は"万騎長サームの娘”という名でしかありません。なのに殿下のお側にいる理由がいつまでも"友人”では格好がつかないでしょう?ダリューン様やキシュワード様、ナルサス様のように堂々と殿下のお側にいられるよう力をつけて参ります!約束です。』
「エレン、」
『有事の際、殿下の御身を守ることは出来ても殿下が奴隷を解放したいと発言された時私はその言葉にお力添えすることが出来ません。今の私には地位も権力も無いからです。ですから私は殿下を一番近くでお守りし、支えられる場所を手に入れます。』
じっとエレンの目を見つめた。その瞳にエレンの意思の強さを感じ、本気なのだと思い知る。
それにそう遠くない先でこのペシャワール城から殿下は王都エクバターナを奪還すべく挙兵し出陣するだろう。そうなれば陛下に代わって殿下が陣頭に立って指揮を取ることになる。どのくらい兵が集まるかは未知数だがナルサス様の知略によれば今のペシャワール城にいる兵力を上回ることは容易に想像がつく。
兵も増えれば問題ごとも必ず出てくるだろう。
何の地位も力もない小娘の私が殿下のお側をうろついては不満を持つ者も出てくるはずだ。
『誰からも文句を言わせない地位を手にし、堂々と殿下のお側にいられるよう力を手に入れます。少しお時間がかかるかもしれませんが待っていてください。』
「…わかった。お主を信じよう。だがあまり無茶はしないでくれ。私のせいでお主が怪我をするのはやっぱり嫌だから。」
落とした視線の先はエレンの両手。
前回会った時にはなかった傷だ。それは彼女が心配すると隠していたから。包帯で巻かれた手のひらは彼女がまた無茶をして怪我を負ったのだとわかる。
案の定心配そうな目で見つめられ、あわあわと大したことではないと必死に言い訳を話すエレン。
『長々と話してしまい申し訳ございません殿下。これから稽古に向かわれるのですよね?』
「あぁ。かまわんよ。私の方こそ話をすると約束していたのにすっかり遅くなってしまいすまない。」
『いいえ。お話出来て良かったです。なんというか…、覚悟が決まったと言うか、気が引き締まったといいいましょうか…。』
「そうだな…。私もダリューンやナルサスに教えを請いもっと精進せねばならぬ。」
殿下の真面目さにふふ、とエレンは笑みをこぼした。
『一緒に頑張りましょう。』
エレンは殿下の部屋の扉を開いた。
その先では気まずそうに立ち尽くす男二人。
ダリューンとキシュワードだ。
ダリューンはともかく殿下に用事があって来たキシュワードは部屋の中での会話が時々聞こえて来るのにその場からつい離れる事を忘れて聞き入ってしまったのである。
気まずさに言葉を発せないでいた二人はエレンは軽くお辞儀をして、交互に二人と目を合わせて、こう言った。
『一応お二人にご報告いたしますね。ナルサス様の提案を受けることにしました。』
「…エレン。」
『ナルサス様は私の身を案じてのことのように仰っておられましたが私は私の目的のために。万騎長を目指すつもりです。ですのでダリューン様、キシュワード様ご指導のほどよろしくお願い致します。』
ダリューンが彼女の名を紡ぐ。
息もするもの忘れてしまいそうなほど、彼女の意思の強い瞳に引き込まれる。
それを見るとどうも身体の底からなにやらうずうずとしたものが込み上げてくるではないか。
彼女の選んだ道がいかに困難なものかを二人は身を持って経験している。はたしてエレンがどこまでそれに耐えられるか。…しかしその反面、見たいとも思ってしまう。
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