第13章
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『私は身勝手な人間です。』
「…。」
『王女の身分に戻りたくない、奴隷を解放したいけれど自分一人ではどうすることもできないから殿下に押し付けている…。』
すべて自分の無力さ故だ。
アルスラーンはまっすぐにエレンを見つめた。
何も言葉を発さない彼。きっと身勝手な私に失望したことだろう。
王家の血を引いているくせに王族に戻りたくないと駄々をこね、奴隷を解放したいといいながら自分ではなにもできないから自身より幼い彼に押し付けようとしているのだから。
『(失望、されたよね…、)』
「私にはエレンがどうして自分を身勝手というのかわからないよ。」
ぱっと顔を上げる。
アルスラーンは本当に困惑したような、エレンが言った言葉を理解出来ないというような表情をしていたのだ。
『で、殿下…?』
「お主は自分のことを身勝手というがそれで誰かが損をするだろうか?」
『ぁ…、いえ…、』
「結局はみなを助けるためであろう?その為に利用されるのであれば私はなんとも思わぬ。それのどこがいけないのか、私には理解出来ぬよ。」
なんだか殿下がナルサス様に見えてきた。
彼と過ごすことでナルサス様の知恵をアルスラーン殿下がみるみる吸収し、語る言葉がだんだんナルサス様のように思えてくる。
ドクンと心臓が鳴る。
この幼い主が語った言葉にどうして泣きそうになっているのだろうか。
『…それは、そうかもしれませんが…、』
ようやく絞り出した言葉。
アルスラーンからの予想外の慰めに戸惑ってしまった。
ふっと優しく微笑む殿下。
「私がそなたを失望する日など来るはずもない。…父上と母上の本当の子では無いかもしれない私をそなたが失望しないのと同じように…。」
『―!?それは、絶対にありえません!』
否定するエレンのあまりの気迫にアルスラーンは少し引いた。そのことにすみませんと言って慌ててしゅんと小さくなる。
「エレン…もしお主が自分のことを身勝手だといって苦しむのならそれは最も人の為になる身勝手…と呼ぶことにしよう。それならどうかな?」
『人の為になる身勝手…』
そんな風に考えられるなんて。
さすがアルスラーン殿下…いやお優しい殿下だからこそ思いついた言葉かもしれない。
少しだけ口元を緩めて、エレンは笑った。
めったに見せない…けれど何度か見たことのあるその笑顔にアルスラーンは胸が温まる。
優しく包み込むように、愛おしむように。
あまり記憶にないのだが唯一その笑みを向けられた記憶が風邪を引いた時だったのを覚えている。
あのときは確かエレンが護衛と称してアルスラーンの寝所にずっといたのだ。
顔を真っ赤にさせて苦しそうにする殿下にずっと寄り添って看病してくれたのを覚えている。
父も母も心配する素振りも顔を見せにくる様子もなく心細かった。けれどエレンは帰ることなく一晩ずっと側にいて大丈夫だと言いその笑顔をみせてくれた。
…結果翌日には回復したが今度はエレンが殿下の風邪を貰い寝込んでしまった。
「エレンは…、」
『はい?』
「私のことをどう思う…?」
『…。』
「あ…!変な意味で言ったのではなくて!そ、その…!」
話の反れた内容にきょとんとするエレンにわたわたと慌てた様子のアルスラーン。
あ、自爆しちゃったのかな?
ついさっきまで私のこと身勝手なんかじゃないって慰めてくれていたのに。急に子供っぽくなった彼にエレンは口元に手を当ててくすっと笑う。
うつむく彼の右手をとって両手で握りしめた。
影を落とした碧い瞳が上を向く。
『私にとって殿下はかけがえのない御方です。大切で、何よりも大事で…愛おしい御方です。』
それは血の繋がりがあるないに関係なく。
自分にとって殿下が唯一無二の従姉弟という名の姉弟であるということも多少はあると思う。
しかしなによりそう思わせるのは殿下が殿下であるから。
アルスラーンという人物だからだと、今のエレンにははっきりと言えるのだ。
「…エレン。」
『これではご不満ですか?』
不満なはずがない。からかった口調で言ったエレンにアルスラーンはわたわたと慌てた様子で不満を否定する。
『きっと…、ダリューン様もナルサス様もほかの皆もそう想っているはずです。あなたが王太子殿下だからではなく、アルスラーン殿下だから…みな、殿下のことが大好きなんです。』
「――…っ、」
どくんと心臓が喜びを表すように小さく跳ねた。
『不安なときはいつでも仰ってください。何度でもあなたが正しいと、説いて差し上げます。このパルスの次期国王にふさわしいのはあなた様です、と不安を取り除いて差し上げましょう。もっと私達を頼ってください、信じてください。殿下からの信頼が私達にとって何よりも嬉しいことですから。』
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