第13章
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部屋に差し込んだ朝日でアルスラーンは目覚めた。
昨夜は疲れていたのにどうも寝付きが良くなかったみたいだ。ぼぅとする頭で昨日の出来事を思い返す。
確かラジェンドラ殿と同盟を結んで、そして祝宴をしたんだった。それから、疲れたので先に休ませてもらったんだっけ。
「(あぁ、そういえばエレンと話をすると約束をしたのにすっぽかしてしまったな。悪いことしてしまった…。)」
後で謝ろう、などと考えているとこんこんと控えめに扉がノックされ、返事をすると着替えを持った侍女が入室する。着替えと朝の身支度の手伝いにやってきたのだ。
「おはようございます。アルスラーン殿下。」
「あぁ、おはよう。着替えありがとう。」
侍女はしずしずと頭を下げた。
それから殿下の着替えを手伝いながら今日のアルスラーンの予定を伝えた。
「この後朝食をお持ちいたします。午前中はダリューン様と剣の稽古なさると伺っております。後ほどダリューン様がお迎えに上がります。午後はシンドゥラ国の遠征についての最終の軍議を行いたくぜひ殿下にもご出席いただきたいとナルサス様からのご伝言にございます。」
「わかった。ナルサスには軍議に出席する旨を伝えておいてくれ。」
「承知いたしました。」
やることをすべて終えた侍女は退室する。
そのあと朝食を済ませたアルスラーンはダリューンとの稽古の準備をしながら師でもある彼の迎えを待っていた。
数分もしない間にまたこんこんと控えめに扉がノックされる。そのノックの仕方から向こうにいる相手がダリューンだとアルスラーンは思い、案の定当たりだったことについ自分でも笑ってしまった。
「(なぜダリューンだと思ったんだろうな。)」
ふとエクバターナでの懐かしい日々を思い出す。
父や母にあまり相手にされない自分だったがなぜかヴァフリーズやダリューンはよく相手をしてくれたのだ。今もこうして目の前にいるというのにどうしてこうも懐かしく思えるのだろう、とアルスラーンはじっとダリューンを見上げた。
何も言わず見上げてくる主君にダリューンは不思議に思い首を傾けるのだった。
「おはようございます、殿下。」
「あぁ、おはようダリューン。今日も稽古を頼む。」
「はい、剣をお持ちしました。中庭で稽古をいたしましょう。」
わかった、とアルスラーンが頷く。
動きやすい服装に着替え終えて部屋から出ようとした時、さらに扉をノックされ来客を知らせる。
この時間にここを訪れる者に心たりのない二人はお互いの顔を見合わせた。
部屋の主に代わってダリューンが扉を開く。
『あ、ダリューン、様?』
「!お主か、」
「ダリューン、誰が来たのだ?」
ダリューンはアルスラーンに見えるように扉の前からその身体を横にずらして来客が見えるようにした。
『殿下…、』
その人物は数分前、謝罪しなくてはと思っていた相手・エレンだった。
「エレンっ、」
おはようございます、とエレンは軽く頭を下げた。
エレンとまともに言葉を交わしたのはシンドゥラとの戦が始まる前以来になるのでなんだかずいぶん久しぶりな気がした。
『稽古前に申し訳ございません。少しお話をしたくて…、』
「かまわぬ。ダリューン、少し待っててくれるか?」
「承知しました。では私は扉の前でお待ちしております。」
『ダリューン様、』
気を使って退室しようとダリューンをエレンはあの、と小さく声を出した。
振り返るダリューン。
『良ければダリューン様も一緒に…、』
「いや、今話すべきは殿下お一人だ。」
『…。』
ダリューンはエレンの肩にぽんと優しく触れ、微笑んだ。ダリューンやナルサスらに話したことを本当は誰よりもアルスラーン殿下に話したかった。
私が誰であるか。そして私が何をなそうとしているのか。すべてはアルスラーン殿下が居てこその願いであり、彼がいるからこそ今の私がここにいるのだと。
それをダリューンは気づいていたのだ。
だから殿下と二人でちゃんと話すよう促した。
昨晩話してくれた想いすべてをアルスラーンに。
静かに退室したダリューンの背をしばらく見つめていたエレンだったが覚悟を決めた表情でアルスラーン殿下と向き合った。
変わらないその優しい碧い瞳に思わずに涙が込み上げてくる。彼は何も知らない、何の罪もない。ただ王太子に据えられただけの少年。
なのに彼はそこから逃げ出すこともせず、ただその使命を全うしようとしている。
己の、運命を受け止めようとしているのだ。
手のひらをぐっと握りしめ、解いたあとエレンは本当の自分を明かした。
私が先王オスロエス王の娘・アルフィーネ王女であること、そしてその身分を取り戻したいとは思っていないことを。
そのことに対し何故だ?とアルスラーンは問う。
『取り戻したところで王女である私が出来ることは限られております。それに王女だと明かせばパルスの民に余計な混乱を招きましょう。ならば私は騎士として生き少しでも多く、殿下の力になりとうございます。』
「エレン…、」
『勝手を申すことどうかお許しください、アルスラーン殿下。私はエレオノールとしてあなた様の力になりたいのです。』
正直アルスラーンの心中は複雑であった。
エレンが父上の兄・オスロエス叔父上の娘だということはもちろん驚いた。だがその反面、嬉しさもあった。彼女が自分に対し優しくしてくれた理由がわかった気がしたから。
エレンが自分の従姉弟ゆえ。父と母から冷たくあしらわれる日々で彼女は出会った時から優しかった。
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